野外研修④
「でも。ゆうちゃん達心配だよね。」
私たちのテントの方へ戻りながら、よーちゃんと海にそう言ったの。
だって暴力振るう人たちだし⋯⋯。
「大丈夫だよ。向こうはさ、魚とか木の実とかあんなに取れないと思うよ? いくら取りやすくしてても、取り方を知らないとね。Aクラスの人は釣りとかできなさそうだし。」
「まぁなぁ。くるみ割りとか、釣り方知らないと思うぞ。」
確かに。
よーちゃんと海の言葉で少しホッとした。
テントに戻ると、Aクラスの3人はテントの前で座っていた。
「お米炊けましたか?」
海がそう言って近づくと、でんでんとくるみ割りは黙ってこっちを見た。
ん?
ちょっとぉーやってないの?!
「あー、炊き方知らない? まぁ、知らなさそうだよな。水、タンクに汲みました?」
海がそう言うと、支給された大きなタンクがあるんだけど、見ると半分くらいしか汲んでなかったのね。
「あー。満タンに入れてこないと駄目ですね。水は結構使うから。
夜汲みに行くの嫌だし⋯⋯。
じゃあ汲み直してくるよ。海、一緒に行こう。まなみも一緒に⋯⋯」
よーちゃんがこっちを見る。
あと、お米を炊かないとだよね?
「えっと、お米洗ってないかな? あーじゃあ私洗ってくるよ。」
私達3人はそう言って、水辺へ向かう。
ここの水は飲める水ってしおりに書いてあったから、そこで汲むの。
「ほらね。なーんにもできないでしょ? そんなもんだよ、Aクラス。」
よーちゃんが苦笑しながらタンクにお水を汲む。
私はその横でお米を洗う。
「何もしないで座ってるとはねぇ。後片付けくらい最後させねーと。まったくよぉ。結局キャンプなんか、AクラスもEクラスも関係ないな!」
海も呆れた感じ。
ほんとにそう。
お米くらい炊いといてほしいよねぇ。
お米炊くくらい、誰でもできると思ってたよ。
テントのとこへ戻ると。
「じゃ、お米炊いてください。」
私は念のため炊けるかなー?と思って聞いてみた。
3人は黙ってる。
ほんっとに炊けないんだ!
「炊けないかぁ。じゃ、私やりますね!
⋯⋯くるみ割りさんは火が出せますよね?
お願いしますね。」
私が言うと、くるみ割りは火をつけてくれた。
やっぱ、火の能力たいしたもんだ!
キャンプにはさ、言っちゃ悪いけどでんでんは大して役に立たなそう。
火があるし。電気いらない。
あ! テントの中、電気つけてもらえばいいね!
私は米を炊き、よーちゃんと海とお魚を串に刺して、その火の周りに並べて焼く。
木の実はさっき洗ってきたから、食べやすい大きさに切る。
「さーてー。いい感じだね。食べようー!」
私はお皿をみんなに配って、それからご飯をよそったお椀を配る。
「お魚は焼きたてだから、ヤケドしないように。」
よーちゃんがそう言ってお魚をとって、みんなのお皿においてあげた。
「いただきまーす。うん。お魚よく焼けてるよ! お米もおこげがいい感じだね!」
でんでんたちも一口食べて。
「あ。うまい。」
そりゃそうだよ!当たり前!
お魚も新鮮だったし。
「たくさん釣れたからたくさん食べてね!」
素直にありがとうって言えればもっといいのにね。
なんとなく無言でご飯を食べて。
洗い物とか後片付けも大してできないAクラスの人達だったんだよね⋯⋯。
も〜。足手まといだなあ、まったく!
片付けを終えて。
わたしはよーちゃんと海と綺麗な水のとこで、顔洗ったりタオルを濡らして体を拭いたりしてた。
「明日はさあ、釣りしてもらおうよ。このままだとうちらがみんなやってあげる感じだもんね!」
私が冷たい水で顔を洗いながら言うと。
「はい、タオル。そうだねぇ。明日は6人で魚釣ったりしようか!キノコもありそうだったよ。」
よーちゃんは頷いた。
海は背伸びしながら、
「でもよぉ。下手くそそうだぞー?
まっ!それを見てるのも面白いな!
『Eクラスなんか覚えるの時間の無駄』
とかいってたのによっ!」
ニヤニヤ笑っていた。
たしかにねぇ〜。
その夜、テントで寝ていたんだけど。
なんか夜中目が覚めちゃった。
私はよーちゃんと海を起こさないように、そおっとテントの外に出る。
星が綺麗かな?って思ったの。
目が覚めたし。ちょっと見たいな〜って。
テントから出ると、
「うわあ。きれいな星!!!」
満天の星空。
とても綺麗。
なんか落ちてきそう!
「あ! 流れ星!」
あぁ〜お願い事しそびれたあ〜。
と、
「何、お願い事したのかな?」
後ろから声をかけられる。
振り返ると。
「堂本さん」
堂本さんがいた。
「なんか寝つきが悪くて。外の空気を吸おうと思って。」
「そ、そうなんですね。でも、そんな勝手に出て、また誘拐とか⋯⋯大丈夫かな?」
そう。確か誘拐されそうになったっていうよね?
「あぁ。ここは学園の敷地内だから問題ないよ。」
あ。そうなのね。
堂本さんは私の隣に立つと、
「小泉さん。今日は色々ありがとう。」
「えっ!」
いきなりだからびっくり。
「とんでもないです!」
私は慌てちゃった。
「そんな敬語はやめよう? 僕たちは同級生だから。
普段やらないことをやるって大変だよね。魚、おいしかった。」
堂本さんは優しく私を見る。
と。
「あれ? 怪我してる?」
私の指先を見る。
「あ。あぁー。これ? さっき、魚のはらわた取るときにちょっとひっかけちゃったの。
で、でも、絆創膏貼れば平気。」
「ちょっと見てごらん?」
堂本さんは私の手をそっとつかむと、絆創膏の上に指を乗せた。
ジワ〜と暖かい何かが指に触れる。
「はい。おわり。絆創膏、とってごらん?」
え?
私は絆創膏を剥がす。
「あっ。傷が⋯⋯。」
「きれいになおったね。良かった。女の子は傷つけないようにしないといけないよ?」
「あ、⋯⋯ありがとう。」
「どういたしまして。明日は、釣りの仕方を教えてよ。あと、お米の炊き方。」
フワっと笑う堂本さん。
何か⋯⋯キラキラしてるんですけど⋯⋯。
「う。うん。みんなで釣ろう! もう少し奥までいったら、ほかのものもあるかもだし!キノコとか取って炊き込みご飯もいいかも!」
「そうなんだね。それは楽しみだな。じゃあ、もう寝よう。おやすみなさい。」
「あ! うん。おやすみなさい。」
私はそのままテントに戻る。
なんか、すごい。王子様みたいな人だった!
ドキドキしてすぐ眠れなそう。
そんなこと思いながら、眠りに落ちていった。




