野良猫、仕事?
朝食を取り終えると、玲央は仕事に行く準備をする。夜斗はそんな様子を先程まで交わっていたでかでかとしたベッドに寝転びながら眺めていた。
「なぁ、仕事って楽しい?」
「...突然どうしたんだい?」
「質問に質問で返すなぁー!」と夜斗は憤慨した。玲央はフム。と考えると、一つの答えを導き出した。
「僕は楽しいかな?ヨルがいてくれると思うとなおの事ね。」
「...じゃあ、オレがいなかった時はどうだったんっだ?
「んー、探し物どころでまるで仕事に手が付かなかったよ。」
「まぁ、与えられたことはこなしてたけどね。」そう玲央が答えると、夜斗は「ふーん」と何かを考えていた。そして玲央の考えを斜め上を行く事を言いだした。
「なぁー。オレも働いてみたい。」
「え?!」
「...そんなに驚くことかよ?だってヒマなんだもん。」
「...あんまり聞きたくはないんだけど、今までの人達のところにいたときはどうしてたの?」
玲央の質問に夜斗はニヤリと笑みを浮かべると、ベッドから転がるように降りる。そして玲央に絡みつく様に抱き着く。まるで「これでわかるだろ?」と言わんばかりに。
「ヨル君の生き方については分かっていたつもりだったが...身売りの真似事をしていたのかい?」
「真似事じゃねーよ?まさにそれ♡ガキん頃から仕込まれてたから。」
「...それは、どういう...?」
「あぁー、また話それた!なーなー、逃げないからオレも働いてみたい!!」
世の中の人間が"働きたくないでござる"精神だと言うのになんて素晴らしい心持なのだろうか。だが正直夜斗を必要以上にこの部屋から出したくはない。...なら、この部屋でできる仕事をさせれば良いのではないか?
「ヨル。実はうちの会社で人手不足の部署があってね。その穴埋めと言っては何だけどやってみるかい?基本PC業務だから家で仕事してもらうことになるけど。」
「PCは得意!前男んところで株かじったから。WordもExcelも一通りできる!」
これは驚いた。こんなのただの野良猫なんかじゃない。血統書が付いていてもおかしくないくらいだ。
「それじゃあ急だけど今日僕と会社に来てくれるかい?簡単な面談とテストをしないといけないんだ。」
「オレから言っといてアレだけど今日の他の人の予定とか聞かなくていいん?そーゆーとこの担当さんとかさ。」
「僕からの推薦って事なら大抵通るし、時間は無理にでもとらせるから。」
「...流石坊ちゃんだな。」
しかし会社に行くのは問題ない。スーツがあればの話しだが。
「なぁ、会社行くならスーツじゃなきゃじゃね?オレ昨日の高級スーツしか着れるもんねーんだけど。」
夜斗の心配をよそに玲央はクローゼットからリクルートスーツを取り出した。これもこれで高そうだが。それよりも何故リクルートスーツがこんな坊ちゃんの部屋にあるんだ...。玲央は満面の笑みを浮かべてオレのTシャツをはぎ取ろうとしてきた。
「安心して?何も不安がることはない。皆親切な人ばかりだから。」
いや、今現在進行形で恐ろしいのは貴方です。追剥の様に服をひん剥かないでください。




