野良猫、番外編2
カタカタ......カタカタ......パソコンのキーボードを叩く音が一人きりの部屋に響き渡る。玲央が会社行っている日は夜斗はマンションに一人きりでリモートワークに勤しんでいる。それでも、一時間に一度は玲央からLINEが来る。内容は他愛もないというか、くだらないというか......。
「......コーヒー淹れよう」
そう思い立ち上がると、タイミングを見計らったかのようにLINEが入ってきた。相手はもちろん玲央である。
『夜斗、お疲れ様。仕事は順調かい?僕は君がいないせいで仕事のモチベーションが上がらないよ......』
ほら。やっぱり今回もくだらない。夜斗は既読スルーを決め込むと、コーヒーを淹れにキッチンへと行く。そしてマグカップを手にリビングへと戻ると、スマホがけたたましく着信を告げていた。夜斗はめんどくさいと思いつつ出ないと帰って来た時の方がめんどくさいので、仕方なく通話ボタンを押した。
「......もしもし」
『あ!やっと出た!もう。既読スルーなんてひどいじゃないか。夜斗は寂しくないのかい?僕は寂しくて寂しくて......』
「あー、ハイハイ。寂しいですよー。でもちゃんと仕事してくれた方が、きっとかっこよくてすてきなんだろうなぁ」
『!......夜斗はずるいなぁ。そんなこと言われたら仕事頑張っちゃうしかないじゃないか』
よし。これで玲央は残りの就業時間、仕事に集中してくれるに違いない。それに夜斗もリモートワークのアルバイトとは言え仕事があるのだ。こちらも集中させてもらいたいものである。
「あ、そーだ。帰りに牛乳買ってきてくれるか?今晩はシチューを作りたいんだけど牛乳を切らしてたのをすっかり忘れてた」
『夜斗のシチューか......。分かった。いつものでいいのかな?』
「おう。頼んだ」
『好物のために仕事はなるべく早く終わらせるよ』
『好物って......何食べても言うくせに』と心の中でツッコんだ。玲央は夜斗の作るものなら何でも美味しそうに食べる。もう、玲央の料理は全てが好物なのではないだろうか。
「それじゃ、オレも仕事あるから切るぞ。くれぐれも玲央パパに迷惑かけんなよ?一時お前が仕事しないで帰りたがるのを抑え込むのに苦労したって言ってたんだからな?」
『そのためにLINEは許可してもらったんじゃないか』
そう。そうなのだ。玲央に仕事を真面目にやらせるために玲央パパが『LINEだけでも相手してやってくれると助かる』と言ってきたのだ。流石に飼い主が解雇されては困ると思い渋々夜斗は玲央の相手を受け入れたのだ。......めんどくさいと思いつつも、既読スルーすると確実に通話をしてくるのでそれを夜斗は狙っている。なんだかんだで恋人である飼い主の声が聞けないのは寂しいからだ。
「それじゃ、おつかい頼んだぞ?それに仕事もきちんとする事!わかったな、飼い主様?」
『......猫ちゃんのお願いを聞かないわけにはいかないね頑張るよ』
そう言うと通話は終了したのであった。




