野良猫、危機一髪
「まったく。一時はどうなるかと思ったよ......」
「オレだって閻魔さまに会う気でいたさ」
何という運の良さなのか、一時は命の危険にあったが駆け付けた救急隊の処置や手術のお陰で、一週間は生死を彷徨ったが無事目を覚ますことが出来たのだった。
「あれからヨウタはどうなった?」
「ヨウタ......あぁ、彼なら警察に捕まったよ。それにしても......彼が夜斗の"最初の男"ってやつだったんだね」
「あぁ。オレに一からPCの技術を叩きこんでくれた恩人で......元恋人と言っていいのかな?」
"元恋人"と言うワードに玲央は面白くないという顔を見せたが、夜斗が玲央の頭に手を伸ばし、わしゃわしゃと頭を掻き撫でた。
「安心しろ。今もこれからもオレにはお前だけだよ」
「これからもって......」
「あれぇ?オレ、意識を失う間際に告白したつもりだったんだけどなぁ?」
そう夜斗が不敵に笑うと、玲央は顔を真っ赤に染め上げ目を泳がせたのだった。思ってもみない反応に夜斗までもが恥ずかしくなってきてしまった。
「な、なんだよその反応......こっちまでこっぱづかしくなるだろーが!」
「仕方ないだろう?!あの時は君が死ぬかもしれない恐怖でいっぱいで......最後の言葉になるかもしれなかったんだから......!!」
「そ、それは......オレだって死ぬと思ったから伝えなきゃと思って......」
まるで初心な中学生のような二人の空間に"コホン"と咳払いが一つ。音の先に目をやると、そこにいたのは玲央の父であり、社長であった。
「二人とも。ラブラブなのは構わないが......人目を気にしてほしいものだよ」
「しゃ、社長さんが何でこんなところに?!」
「やぁ。夜斗君。無事に目を覚まして良かったよ。一時は本当に危険だったところらしかったから私としても君の無事は嬉しい」
社長は笑顔でそう言いながら夜斗が横たわるベッドへと近寄ってきた。
「本当にこの一週間は玲央は使い物にならなくてね。今までにないようなミスを繰り返す始末。それなのに終業時間になると誰よりも早く退社して、病院の面会時間ギリギリまで居座っていたようだし......。君には早く目覚めてほしかったのは私も同じだったさ」
「それは......すみません」
自分が寝ている間にそんな事になっていたとは思わなくって、ただただ謝るしかなかった。......そんな事より、社長に自分達の関係が露呈している事に戸惑いが生まれていた。まさか、こんなところで「別れろ」なんて言われるんじゃないだろうな?そんな夜斗の戸惑いに気づいた社長は、優しい笑みで「大丈夫」と言った。
「私も妻も偏見は無いし、跡取りの孫が欲しいとは思っていない。思う存分愛し合うといい」
「え......母さんも知っているんですか?」
「知っているも何も......母さんだって同じ会社で働いているんだから知らないわけないだろう。夜斗君。退院したら妻のも会ってくれるかい?妻は君に興味津々でね。あと、彼女は猫派なものでね」
......会う事と猫派がどう関係しているのかは分からないが、歓迎されているのであれば会わないわけにはいけない。なので夜斗は了承の返事をすると社長は「息子が2人になったな」と言い笑いながら病室を後にした。
「......反対されると思ってたけど」
「ハハッ。ウチの親は寛容でね。......夜斗。愛してる」
「ふっ。オレも」




