野良猫、愛に気づく
眠りから目を覚ますと、見知らぬ部屋にいる事に気がついた。身体は怠いが拘束などはされていない。扉がぎぃっと音を立てて開かれると、部屋に入って来たのはヨウタであった。
「おはよう、夜斗。よく眠れたかい?」
「......ヨウタ、なんでこんな真似を?」
夜斗がそう問うと、ヨウタがわなわなと震えだした。そして、つかつかと夜斗のいるベッドに近づくと、夜斗の身体をベッドに沈めた。
「だって......だってこうでもしないとまたいなくなるだろう?!今までずっと探していたんだ!それでやっと見つけたかと思ったのに......夜斗、君は京極 玲央の隣を歩んでいた!!それがどれだけオレの心を切り刻んだことか......分からないだろう?」
「ヨウタ......」
「ホントはこんな真似したくはなかったよ?けれどこうでもしなければ君はオレの元にやって来ない!!今だってこうしている間にも君の心を占めているのはあの男なのだろう?!」
ヨウタは涙を流しながら夜斗を攻め立てる。ヨウタの涙が夜斗の頬をつたった。そんなヨウタの頬に夜斗は手を添えるとぽつりとつぶやいた。
「ヨウタ......お前も寂しかったんだな。」
「!!や、と......」
「でも、オレはお前の物にはなれない。オレはガキの頃から玲央の"神様"らしいからな」
そういうと、夜斗はフッと笑った。ヨウタはただただ呆然としたかと思うとポケットからナイフを取り出した。
「よ、ヨウタ......?」
「きみが、君が悪いんだよ?素直にオレの物にならないから。手に入らないなら......お人形になってもらうしかないね?」
ヨウタがそう言ったかと思うと、腹部に鈍い痛みが走った。あぁ、ごめん玲央。お前の神様はもう出来そうもないや......
意識を手放そうとしたその時だった。扉が物凄い音を立てて開き、ヨウタの身体が上から吹き飛ばされていった。
「夜斗!!しっかりしろ!!今救急車を呼ぶから!」
「......れ、お。ごめ、ん」
「もしもし!救急です!腹部をナイフで刺されて......」
あぁ......玲央の声が遠くなっていく。ありがとう、玲央。オレを見つけてくれて。オレを神様だなんて呼んでくれて。あ、これが、か。これが"愛"ってやつか。......もっと早く知りたかったなぁ。
「夜斗!もうすぐ救急車が来る!しっかりするんだ!!」
「れ、お......」
「しゃべるな!!」
「あ、い......して、る」
最後の力を絞って出した言葉は玲央に伝わったであろうか?ダメだ。もう、何も考えられなくなってきた。次、目を開いたらオレはどこにいるのかな?いろいろやって来たんだ。きっと地獄に決まってる。閻魔様、せめて少しだけでいいから玲央の事を見守らせてください。




