野良猫、昔話3
それから季節が過ぎ、3月。夜斗は暗い面持ちでいつもの公園にたたずんでいた。手には卒業証書の入った筒。今日で最後のランドセル。夜斗は玲央が来るのを今か今かと待っていた。
「ヨル!!お待たせ!卒業おめでとう!」
「......ありがとう、玲央」
「中学生になるって事はもうここには......?」
「そうだな。もう来れない」
玲央はショックを隠せないでいた。
「ヨルは僕の神様だったのに......」
「神様?」
「僕に居場所をくれた!この公園に!......ホントにもう会えないの?」
夜斗はじっと黙ったまま下を向いた。
「ごめんな、玲央。もうオレは逃げられなくなっちゃったんだ」
「逃げる?何から......?」
玲央が問うが夜斗は答えようとしない。むしろ、口を閉ざしてしまった。夜斗は玲央の頭にポンっと手をのせると、浮かない笑顔で優しく玲央に声をかけた
「玲央。お前はもうオレがいなくても大丈夫だ。だから......オレの事はもう忘れて、幸せになってくれ」
「ヨル?どういう事?ヨルがいないと幸せになんかなれないよ!」
「玲央......」
夜斗は困った顔をしていた。そして、何かを言おうとしたその時だった。「夜斗!!」と呼ぶ男性の声が聞こえてきた。何やら怒っている様子だった。玲央は夜斗を見ると。顔は真っ青で、身体はガクガクと震えていた。
「ヨル?あの人は......」
「ごめん!玲央!もうオレの事は忘れて!!じゃあな!」
「よ、ヨル?!」
そういうと夜斗は走って男性の元へと行ってしまった。それから、何日も何日も公園に通ったが夜斗が現れる事は無かった。やがて、玲央も公園に行く事はなくなってしまった。しかし、夜斗の事を忘れた事は一度たりともなかった。それからというもの、玲央の日常はモノクロになってしまったようであった。そして、玲央は高校入学と同時に、父親の会社を手伝うようになり、そして、そのバイト代を使い探偵や興信所を使い夜斗の事を調べた。
「......母親の浮気癖、父親からの性的虐待。現在は......行方不明、か。......こっちの報告書は......変わりなし、か」
玲央は諦めがつかず、もう何年も何年も調査を続けた。気付けばもうアラサーとなっている。この報告書の情報が最後だ。これでダメなら諦めるしかない。ここは夜斗のよく来る酒場らしい。どうか今日こそ夜斗に会えますように...。そんな祈りを込めながら酒場へと入ると酒と煙草の匂いに参ってしまいそうになるが、カウンターへと目をやると、待ちに待った夜斗の姿を見つけることが出来た。だが、焦るな。ここで焦って逃がすと今までの努力が水の泡だ。そして、夜斗と1人の男が店を出たのを確認すると、玲央もそれを追うように店から出る。すると路地裏で襲われている夜斗の姿を見て身体中の血液が沸騰する。それは僕のだ。僕の神様なんだ......!!そう思うと玲央は思いっきり男を吹き飛ばした。
「テメェ!何しやがる!」
「それは此方のセリフだよ。せっかく見つけたと言うのに......」
あぁ、やっと、やっとだ。これで君は僕だけの神様になる......。




