野良猫、捕まる
なんなんだ、この男。助けてくれたのには礼を言う。しかし、"飼い主"とは"猫チャン"とはなんだ?夜斗の頭にハテナが舞う。
「その契約にアンタのメリットはあるのか?」
「...その質問に答える事はまだ出来ない、かな?」
「"まだ"、と言うことはいずれかは教えてくれるという事か?」
「...」
男はニコニコと胡散臭い笑みを顔に貼り付けたまま微動だにしない。
「ふかふかな大きなベッド。」
「?」
「美味しいご飯に綺麗な服。なんと言っても広い家。」
「!!」
男の口から出る言葉はどれも魅力的なものばかり。食いつくなという方が難しいだろう。夜斗は思わず生唾をゴクリと飲み込む。
「...アンタ、名前は?」
「僕かい?僕の名前は京極 玲央。気軽に"レオ"とでも呼んでおくれ。」
「分かった。オレの名前は...そうだな、"ヨル"とでも呼んでよ。」
「!...ではヨル。僕の所へ来てくれるかい?」
男は、"レオ"はそう言うと夜斗に手を差し出した。夜斗がその手を取ると玲央は子供のような笑みを浮かべていた。
「...アンタ、そんな顔も出来るんな。」
「...え?」
夜斗は「何でもなーい」と言うと玲央の手を利用して立ち上がった。...そう言えば今日は何も食べていない。
「ねー、ご主人様?ご飯が食べたいな♪」
「この近くに美味しいフレンチのお店があるんだ。行くかい?」
「わーい!フレンチ大好き♡」
夜斗が子供のように接すると玲央はどこか懐かしそうな目を向けてきた。その目、夜斗は知っていると感じた。でもどこでだろう?それが分からない。
「なぁ、さっき"見つけた"って言ってたな。アレどういう事だ?」
「...さて?そんな事言っただろうか?」
玲央は夜斗に対してすっとぼけた態度をとった。...この男。何か隠している。それもオレに関する事で。そう夜斗が考えていると、玲央は夜斗の腰に手を添えて、まるで紳士が淑女にするかのようなエスコートをしてきた。
「お、おい、何するんだ?」
「まずはその汚れを綺麗にしてからじゃないとね?一度僕達の家に帰ろう。ここからすぐ近くだ。」
「フレンチはそれから。」そう言って向かった先にあったのは黒いリムジン。夜斗は思った。とんでもないヤツに捕まった、と。




