野良猫、採用される
「...る、ヨル!!」
「!レオ?悪い。ボーっとしちゃった。」
なんで、今こんなところで思い出すかな...。できれば思い出したくない過去なのに。ヨウタの元を去ってから今の生活も始めたのであった。あれだけ嫌悪していた母親と同じ生き方で。
「いきなり面談とテストの両方やって疲れたかな?今日はもう終わりで大丈夫だよ。...結果としては採用でいいと私は思います。専務もその方がいいでしょう?」
「そうだね。テストの結果もミス0だったし、即戦力になるだろうからね。」
「じゃあ...」
「もちろん。採用だよ。これから仕事でもよろしく。」
夜斗は心の中でガッツポーズをした。オレってばこれで脱ニート?脱ヒモ?と喜ぶのであった。そんな夜斗から見えないところで、玲央と斉藤がひっそりと会話をしていた。
「いやぁ、まさか専務にあんな隠し玉があったとは。一体どんなかんけいなんです?」
斉藤は思わず興味本位で玲央に尋ねた。すると玲央はいたずらっ子のような笑みを浮かべ、
「可愛い可愛い、僕の飼い猫だよ。」
と答えた。斉藤はその答えにしばらくポカーンとしたが、次第に笑いがこみ上げてきた。
「アハハ。成程。飼い猫ですか!専務の事だか大変可愛がっているのでしょう。」
「もちろんさ。もう可愛くって仕方ないよ。...囲ってしまいたいほどにね。」
斉藤は「ヨルさんも大変な人に捕まったものだ。」と感想を持ってしまった。やがて夜斗がこちらの様子に気がついてすぐさま寄って来る。まさしく飼いならされた猫のようだ。
「なーなー。即日採用とかオレすごくない?ご褒美に回らないお寿司が食べたいな♡」
「仕方ないなぁ。分かったよ。その代わり、仕事はちゃんとこなす事!いいね?」
「もちろん!オレってばやるときはやる男だよ?」
「流石僕の猫ちゃんだ。期待しているよ?」
斉藤は、"いちゃつくなら私のいないところでしてほしい"と思うのと同時に、自身も妻が恋しくなったのであった。
「それはそうと、社長にはお会いしたんですか?」
「いや、これからだ。まずは人事を通ってからかなと思ってね。」
「なるほど。...社長の事ですからきっと...いや、絶対ヨルさんの事気に入ると思いますよ。」
「専務と好みが同じなので。」とは言わないでおいた斉藤なのであった。
「それじゃあ、これから社長室に向かうよ。斉藤、今日はいきなりすまなかったね。ありがとう。」
「斉藤さん!ありがとうございました!」
夜斗が元気よく挨拶をすると、斉藤は「躾のなった猫さんだ。」と感心するのであった。




