野良猫、最初の男7
夜斗の「母さん」発言にビックリするヨウタだったが、涙しそうな彼をいち早くこのばから連れ出さなければと思い、近くのベンチに移動する。そしてベンチに夜斗を座らせると自販機で買った水を夜斗に差し出した。
「ヨル。これ飲んで少し落ち着いて。」
「...ありがと。」
「あれがヨルの話してたお母さんかい?」
「そう。でも、相手の男知らないヤツだった。...店の客かな?分かってはいたけど目の当たりにすると結構キツイのな。」
夜斗は目に見えて落ち込んでいた。それもそうだろう。家出した息子を心配するそぶりもなく、男にすり寄ってる母親を見るとあぁ、自分はいらない子だったのか。と実感させられる。
「ヨウタ。オレもあんな風になっちゃうのかな?」
「え?」
「男に媚び売って生きていくようにってこと。いくら勉強したって血は争えないだろ?」
ヨウタは夜斗の言葉を否定したくとも出来ずにいた。だが、静かに涙する夜斗の涙を優しく拭うと、只々強く抱きしめた。
「お、おい。ここ外...。」
「大丈夫。ヨルには僕がいるだろう?」
「...ヨウタに寄生してるとも言えるけど。」
「ウチにいるのは寄生じゃないよ!きちんと勉強してるじゃないか。それにヨルがいてくれるから僕は仕事を頑張れる。生きることを楽しめている。」
夜斗は「大袈裟だな。」と笑うと水を一気に飲み干す。そして、「デートに水差して悪かったな。」と言ってデートの続きを促すかのようにベンチから立ち上がり、ヨウタの手を引く。
「今日はお前の好みに染められてやるよ。有難く思えよな。」
「はいはい。まったく。我儘プリンセスだなぁ。」
「...オレは男だ。」
「ハハッ。美容室の予約時間もあるし、見れるだけ見て行こうか。」
こうしてデートは再開された。いろんなショップを回り、今の夜斗の体形に合う服を次から次へと買っていく。こんなに買って大丈夫なのだろうか?と心配したが、とあるショップで支払いの時にブラックカードを店員に差し出していたのを見て心配することをやめた。
「お昼ご飯の時間だけどお腹空いてる?」
「モーニングがまだ残ってるからいい。」
「ん。了解。じゃあお茶だけでも飲みに入ろうか。たくさん歩いて疲れただろう?少し休憩。」
ヨウタからの申し出がありがたかった。丁度疲れて来たところだったからだ。ショッピングモールの中にあるカフェに入り夜斗はアイスティー、ヨウタはアイスコーヒーを注文した。
「ここで一休みしたら美容室に移動しようか。」
「分かった。結構歩く?」
「タクシー使うから安心していいよ?」
またタクシーか...。今日だけでどれだけの出費をするつもりだろうか...。いくらブラックカードの持ち主とは言えヨウタの懐事情が心配になった夜斗であった。




