野良猫、最初の男5
翌朝、ヨウタは昨夜の酔いが醒めきっておらず、ベッドの上でのたうち回っていた。無理もない。夜斗との外食が余程嬉しかったのか、ワインをボトル一本開けたのだ。
「...たく。なんでそんなになるまで飲むかなぁ。」
「だって、ヨルが幸せそうに食べてるの見たら、つい(笑)」
「今日出掛けるって言ってたのはヨウタだろ?」
「...面目ない。」
「今日は大人しく家にいる事!」と言うと、ヨウタはぶー垂れたが二日酔いの人間を連れ回すような真似はしたくない。
「...また明日行けばいいだろ?」
「明日行ってくれるのかい?!」
「お、おぅ...。だって買い物行きたいんだろ?」
「行きたいに決まってる!」
ヨウタは食い気味で返事をしてきた。なんでこんなにも必死なのやら。
「ふふ。ヨルとデートができる。」
「デートって。ヤロー2人で言う事じゃないろ...。」
「女子高生じゃあるまいし。」と夜斗は呆れてものも言えない。夜斗は暇になったので株投資の雑誌を読むことにした。本当なら、パソコンに向かいたかったところだったが、ヨウタが「1人にしないでぇ」と泣きわめくので仕方なく、だ。
「その雑誌、どうしたんだい?」
「ん?コレ?昼ご飯買いにコンビニ行った時に見つけて買ってみた。少しでも勉強したくって。」
「ヨルは意外と向上心旺盛だよね。」
「意外って酷くない?」
ヨウタの言葉に、傷つきましたー!と言わんばかり雑誌を放り出してヨウタの頭をわしゃわしゃとかき乱した。すると、ヨウタは夜斗の後頭部に手を回してキスをしてきた。
「...え?」
「...嫌だった?」
「嫌とかじゃ...ないけど...、なんで?」
「ヨルの事が好きだから。ヨルの今までの事は承知してる。けれど僕も自分の気持ちに嘘をつくことは出来ない。」
ヨウタのあまりにも真剣な眼差しで、「二日酔いの戯言」として済ませることは出来ない。
「...オレでいいの?オレ汚いよ?」
「ヨルに汚いところなんてないよ。ヨルは綺麗だ。身も心も全部。だから僕の物になって?」
夜斗は思わず涙がはらはらと流れて止まらない。ヨウタは、なんて綺麗な涙を流す子なのだろうか、と。この子はこれから自分が守っていくのだと神に誓おう。そう心に決めた。
「ヨル。僕らは"家族"だ。これからも何でも遠慮なく言ってくれていいからね?」
「...これからも此処にいていいの?」
「当たり前じゃないか!...好きな子を1人で放り出すような薄情な男に見えるかい?」
ヨウタはそう言うと、夜斗はヨウタに思いっきり抱き着いた。捨てる神あれば拾う神あり、とはこの事を言うのだと夜斗は感じた。
「今まで苦労してきた分、僕がヨルを幸せにするからね?」
「...期待してる。」
夜斗はこれからの未来に一筋の光が見えた。そんな気がした。




