査定
ブライアンは、あの忌まわしい異動を命じられてから、変わらず国道沿いの安ダイナーで時間を潰すことを日課としていた。今日も完全に煮詰まったコーヒーをすすっていると、テーブルに伏せていた端末が短い振動を立てた。
画面には、二年ぶりに見るウィリアムの名前が表示されている。ブライアンはわずかに眉をひそめ、通話ボタンを押した。
「ブライアンだ。ウィリアム、久しぶりだな。」
「なかなか連絡できずにすまない。」ウィリアムは、さして悪びれる風もなく続けた。「用件だけ手短に伝える。これから君に、スカウトが仕事のオファーで接触するはずだ。話を聞いてやってほしい。」
「なんだって? スカウト?」
「彼らは非常に怪しく見えるんだが……きっと面白いものを見られるはずだ。着いて行くといい。待っているよ、ブライアン。」
それだけ言うと、一方的に通話は切れた。
端末をテーブルに置いた直後、ダイナーの埃っぽい窓越しに、風景の彩度を吸い取るような漆黒の装甲SUVが駐車場に滑り込んでくるのが見えた。明らかに軍の車両ではない。後部座席のドアが開き、砂埃の舞う駐車場にはおよそ似つかわしくない、完璧に仕立てられたスーツ姿の男が二人降り立った。
男たちはダイナーのドアを押し開けると、フロアのスタッフと二、三の言葉を交わし、迷うことなくブライアンの座るテーブルへと歩み寄ってきた。
「ブライアンさんですね。」
片方の男が、身分証も名刺も提示せずに一方的に確認した。
「そうだが、おたくらは?」
「貴方に頼みたい仕事がある。これから一緒に付いてきてほしい」
「ずいぶん唐突なんだな。嫌だと言ったら?」
「これは強制ではない。残念ではあるがおとなしく退散するさ。」男は表情一つ変えずに言った。「ただし、貴方はまたとないチャンスを棒に振ることになる。」
ブライアンはコーヒーカップを持ったまま、男を見上げた。
「一つ教えてほしい。おたくらはいつもこんなやり方でリクルートを?」
「普通でないことは分かっている。まあ、雇い主からのテストみたいなものだと思ってくれればいい。」
ブライアンはまっすぐ相手の顔を見据えた。ウィリアムの「待っているよ」という言葉が、耳の奥でリフレインしている。
「オーケイ、着いて行くとしよう。今の仕事にも飽き飽きしていたところだ。」
ブライアンが立ち上がると、男の口元に初めて微かな笑みが浮かんだ。
「それは良かった。強制ではないと言ったが、実は多少強引にでも連れてくるよう言われていたんだ。」




