表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
42/53

第42話 コンスタンチノープル奪回


「何だあれは?」

「あんなでかい銃は見たことが無いぞ」


 ペルシャ側の射手が皆驚愕している。

 両手で持ち構える銃ではない。台座に備え付けられた長大な銃なのである。火縄銃の有効射程距離内では、相手の銃の様子ははっきり見て取れる。銃を扱いなれた者は、本能的にその銃身の長さが意味するものを感じ取っていた。


「撃て!」


 四十丁の連発銃が火を吹くと、鉄砲戦においては数の優位が逆転した。発射される弾丸の数とスピードが違い過ぎる。オスマン軍の銃射手は、撃たれて倒れると、すぐ後ろに代わりの者が控えていている。弾丸の入れ物を押し込めながら、後は引き金を引くだけだった。熟練した射手でなくとも十分に扱える。


「悪魔の銃か!」


 次々と撃たれ倒れる兵士達は狼狽し阿鼻叫喚となる。

 連発銃は銃身が長く、強い装薬で射程距離が長い。後ろに立つ兵士もバタバタと倒れていく。敵鉄砲隊を潰走させると、


「突撃せよ!」


 ムラト3世の命令が下る。

 騎兵に続く歩兵、槍兵が残った敵を倒す。安兵衛や他のサムライ達も、刀を振るって縦横無尽の活躍をした。最前線の鉄砲隊が逃げた為、後ろに控えていたペルシャ兵も腰が引けた。そこへ進もうとする後陣の兵士がぶつかる。包囲されると大軍ゆえに隊列はさらに混乱した。

 オスマンの連発銃隊も反撃を受け十数名の死傷者を出したが、首都より迎え討って出たペルシャ軍は、数の優位にもかかわらず惨敗する。


 宮廷内の貴族派閥が対立する国内問題を抱えていたサファヴィー朝は、騒然とする雰囲気の中で、迫りくるオスマン軍を前に大宰相が実権を掌握したが、混乱状態の国内で暗躍する政敵に暗殺される。

 ペルシャ各地で反乱が続発し、地方総督の中には独立を宣言する者も現れた。

 数か月に及ぶ混乱の末――

 ついにイスファハーンは包囲されてしまう。

 混乱の中で司令官も捕らえられると、サファヴィー軍に味方していた多くの周辺部族も離反し、自らの利益を守るために抵抗せずオスマンに服従を決めた。サファヴィー朝は国家の存続自体が疑問視されるほどの状態となっていた。地方勢力は独立し、旧サファヴィー朝を支える者はいなくなったのである。

 サフィー2世は首都防衛を主張したが、家臣団はまとまらなかった。軍を統率する力も無く、いつの間にか逃走して、大宰相さえいなくなってしまったペルシャ軍は、降伏せざるを得なくなる。地方からの援軍も無く、イスファハーンは孤立して政権は崩壊し、サファヴィー朝ペルシャは事実上滅亡する。



 半年後、ムラト3世は、次はコンスタンチノープル奪回をめざすと宣言した。


「サファヴィーを倒しただけでは終わらぬ。異教徒に奪われた我らの都、コンスタンティノープルを取り戻す。」


「今日よりオスマンは亡国ではない。」


「祖国を取り戻す時が来た!」


 しかし、イスファハーンを手にしただけでペルシャ全土を掌握した訳ではない。ムラト3世には、なお数多くの戦う相手が残されていた。






 数千里離れた日本――

 大阪城の一室に幸村はゆっくり歩いて来ると、秀矩の前に顔を出した。


「秀矩様」

「これは幸村殿、どうしましたか?」


 幸村のほうから秀矩に声を掛けて来る時は、必ず何か重要な話が有るのだ。

 すでに腰が少し曲がっているが、その声にはまだまだ張りが有る。


「実はパイン殿より連絡が御座いました」

「おう、パイン殿から」

「はい。ムラト様から連発銃の弾丸を至急送って欲しいと、さらに出来れば新たな銃の追加要請も御座いました」


 ムラト3世からは、代金として大量の銀が送られて来たのだった。


「仁吉殿と太郎兵衛殿に連絡をして下さい」

「分かりました」

「それから、製鉄所の建設は今どうなってますか?」


 秀矩の指示を待つまでもなく、全国の大名は製鉄所の建設を検討し始めていた。

 国外を見れば新式火縄銃の需要が有り、引き合いが多い。だが弾丸の増産にしても鉄が無くては始まらない。


「砂鉄の産地近くですでに数カ所建設されて、試験的な生産も始まっております」

「そうか、だが、鉄の生産が軌道に乗っても、鉄そのものは輸出を禁ずる事にする」

「…………」

「代わりに海外からは保存できる食料を輸入しよう。飢饉で人口が減ってしまう事は何としても避けたい」

「分かりました。太郎兵衛殿にも伝え、そのように致します」


 武器の輸出は当分の間、新式火縄銃のみとする事が決められた。連発銃を今輸出するのは影響が大きすぎる。但し、連発銃の輸出は、当面オスマン帝国のみに限ることとなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ