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第39話 新式火縄連発銃


「旦那様、仁吉殿が見えられました」


 大矢太郎兵衛の屋敷に、鍛冶業界の大御所となっている仁吉がやって来た。先の秀矩より、新式火縄銃などを開発した功績を認められて苗字帯刀を許され士分になっている。太郎兵衛は普段自分の穀物商も続けている為、城下の屋敷に住まい、大阪城とを行き来する日々である。


「仁吉殿、今日はどのようなご用件でしょうか?」


 よそ行きの服装に、なれない脇差を腰に差した仁吉は、幾分緊張した面持ちで話し出した。


「早速ですが太郎兵衛様、拙者、あの方から鉄砲の未来を聞き及んでおります」

「…………」

「そのような鉄砲の開発をするには、ぜひとも必要な物が有り、そのお願いに参りました」


 豊臣、いや日本の将来の為には、大掛かりな製鉄所の建設が必要だと聞かされていたと言うのだ。


「鉄砲を造る為だけではありません。国を強くする為です。あの方からそのように聞かされております」

「分かりました。幸村殿にも相談してみます」

「お願いいたします」


 仁吉は他にも幾つかの話題を口にした後、不器用にお辞儀をすると下がって行った。





 大阪城から見える季節は何度か変わっている。


「大矢様」

「はい」


 秀矩はいまだに太郎兵衛をそう呼んでしまう。ふたりだけになる時は、いつも勝家時代の師弟関係に戻ってしまうのだ。太郎兵衛もあの方と秀矩と勝家の込み入った関係は知っているのだが、今では常に秀矩様とお呼びして立場をわきまえ接している。


「イングランドとの交易に支障はないでしょうか」

「と申されますと」

 

 東南アジアでの交易を盛んにするのは良いが、イングランドやオランダなどと問題を起こすのは避けたいと考えているのだ。


「イングランドとオランダはアジアで激しい利権争いをしているようです」

「…………」

「かじ取りを間違えれば、我が国も同じ紛争の渦に巻き込まれかねません」

「イングランドと競合しない交易品を取り扱う必要があるでしょう」

「そうですね、イングランドとは今の友好な関係を壊したくない」

「はい」


 ここで部屋の外から家臣が声を掛けて来た。


「殿」

「どうした」

「仁吉殿がお目にかかり、お話したい事があるそうです」

「お通ししなさい」


 大阪城の奥まった一室にやって来た仁吉は、秀矩の前に出ると深々と頭を下げ、そこに居た太郎兵衛にも会釈をした。


「仁吉殿、今日はどのようなお話ですか」

「はい、実は……」


 仁吉は秀矩が想像も付かないような話をし出した。これまでと違う、全く新しい銃を開発しているというのだ。


「あの方は、連発出来る銃と仰っていました」

「連発出来る銃?」

「はい」


 多くの弾丸を連続して発射できる銃だと言う。


「しかし今の火縄銃の改良だけでは限界が有ります」

「…………」

「弾丸と火薬を別々に装填していては連続して撃つ銃にはなりません」


 このふたつを一体化させる必要があると言う。そのためには薬莢に使える薄く加工しやすい金属の開発が是が非でも必要だと、話に来たのだった。


「そのような金属が出来るまで、火薬は紙製薬莢で包み、連続して装填出来ないか考えておりました」

「それで、何処まで出来ているのですか?」

「はい、実は今日その試作品をお持ちいたしました」


 新しい銃の試作品を披露出来ると言うのだ。中庭に置かれた銃をさっそく試射してみることになった。

 

「これは大きな火縄銃ですね」


 確かに従来の火縄銃とは比べ物にならないほどの大きさで、分解して運搬できる台座に固定されている。


「この銃は自由に動かす事が出来ます」

「…………」


 長大な銃は台座を軸に上下左右へと振ることが出来るようだ。


「従来の火縄銃とは違い、火薬の包みと弾丸が一緒になっております」


 それを上に積み上げる薄板状の入れ物があり、一度に多数の弾を順に装填出来る構造になっている。助手がそれを上から下に弾包を押し込んでいく。射手が引き金を引くたび一発ずつ落下する仕組みではあるが、やはり人の手が必要で、力を込めて押し込まねばならない。


「許可を頂ければ……」

「よし、撃ってみせよ」

「はっ」


 仁吉の手が上がった。


「撃て!」


 ダダダダダッーー


 射手が銃身を左右に振るたび、土塀に並べた的へ弾丸が次々と突き刺さった。

 火縄を用いる点火方法は従来の鉄砲と変わらない。しかし次々と弾が送り込まれるため、発砲速度は比べ物にならぬほど速かった。後は故障なく何処まで連射出来るようになるかがカギだと言う。


「仁吉殿、これを量産出来ますか?」


 秀矩は土塀に並んだ無数の弾痕を見つめて言った。もしこれが戦場に並べば、戦の形そのものが変わる。


「はい、お望みとあらば、さらに改良を加え、増産にこぎつけます」


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