第15話 今度は海だぜ
「私は――おば様の船を取り返したいんです」
「…………」
バルクはすぐには答えなかった。
「船?」
クイナが低く呟いた。
バルクは黙ってユキを見つめた。
いつの間にこんな顔をするようになったのだろう。
「おいおい……また面倒な話が来たな」
タリウトは静かにユキを見た。
「状況を聞かせてください」
ユキは一度だけ息を飲み、刀をゆっくり鞘へ戻した。
「交易船が、襲われました」
その言葉に、バルクの眉が動く。
「海賊か?」
「違います」
ユキは首を振った。
「暴徒ですが……」
ユキは視線を落とした。
「それで、お前は船を取り返したいのだな」
バルクは短く言った。
「行くかどうか」
その一言に、ユキの指がわずかに震える。
クイナが横から口を挟んだ。
「隊長、今度は海ですよ、海」
「だからだ」
バルクはユキを見た。
「陸で済む話じゃなくなった。ユキさん、ちょっと待ってくれ」
男達は一旦ユキの前を離れた。
「どうする。あいつもおれ達を雇用したいんだろ」
「だが金がねえじゃねえのか」
「船を取り戻せば金が手に入るんだ、奴の話じゃな」
店の隅で男達が輪になって相談している。
「信用するのか?」
「やらなきゃ、食い扶持が手に入らねえ」
「おれはここんとこもう、ろくなもん食ってないんだ」
「だけどよ、今度は海だぜ」
大声がユキの所まで聞こえて来る。
「隊長」
クイナが難しい顔をしていた。
「おれ達……船なんて乗れましたっけ?」
周囲が静かになる。
タリウトも黙っている。
「船に乗った事ないのか?」
「ない」
全員だった。
「おれ達は草原の民だ」
クイナが胸を張る。
「馬なら分かる」
「船は分からん」
「海はもっと分からん」
「泳げるか?」
「……少しなら」
男達は自分たちで言っておいて大笑いが起こった。
ユキは思わず額を押さえた。
――駄目だこの人達――
「船ってのは馬みたいに蹴らねえのか?」
「蹴らんだろ」
「じゃあどうやって動くんだ」
「風だよ」
「意味が分からん」
だがバルクだけは真面目だった。
「敵が海にいるなら、海へ行くしかない」
「方法は?」
「知らん」
あまりにも真顔だった。
クイナが吹き出した。
「タリウト、皆を店の前に呼べ」
と指示したバルクはユキの所に戻って来た。
「ユキさん、おれ達はあんたを信用することにした」
「だけどバルクさん、お金は――」
「それは後でいい。おれが一度信用すると言った以上二言は無い」
「分かりました」




