天狗の怪 その八
山登りはしんどかった。一歩一歩、足を踏みしめるたびに心臓をえぐられるような気がした。だが、これが事件解決のための一歩なのだと思えばこそ、私は必死になって登った。
キツイのは最初のうちだけですから、辛抱ですよ!
は、はひぃ。
菊子さんは1m先を歩き、僕を励ます。足元の菊子さんが踏みしめた足跡が、私を勇気づける。あの子は登ったんだから俺だって登れるってもんさ。登れば登るほど汗が体中から噴き出てドロドロになる。それにこんな靴だから、足も疲れてたまらない。菊子さんのように裸足になれば楽になるのかとか、心のなかでファイトを高める叫びを上げ、ただひたすら一歩一歩標高を上げていく。
すると、アスファルトの開けた道へでた。道も平坦だから、開放された気分だ。私は、はぁぁ!!と大きく息を吐き、ここまで来た達成感を味わった。
まだまだ先ありますよ!
菊子さんは遠くの方におり、再びアスファルトの道から続く獣道の登山道を指さして、手を振りながら声をかけた。
アスファルトの道は通れないんですか?
そっちは崩落とか色々あったから行かないように言われてるんですよ!
なるほどな。しゃあない。また気合いれるぞ。私はまたふぅと息を吐き、ズンズンと菊子さんの方へ向かっていった。でも、たしかに菊子さんが言うように、さっきよりはだいぶマシになったな。人間慣れってことだな。
しばらく山道を歩くと、鳥居が現れ、その先に階段が続いていた。
ここです。
菊子さんは、山登りしたばかりであるのに、汗を流してはいるが神妙な顔で鳥居の前を指さした。なるほど、ここに例の9人の遺体があったわけか。では、最初の遺体はどの辺だったのだろうか。息を切らしながら、頭の中で考えを巡らせている次の瞬間、鳥居の脇の茂みから影のようものが飛び出してきた。急にこちらへ突撃してきたものだから、私は思わず、うわぁ!と叫び尻もちをついてしまったが、菊子さんがその隙をつき、えぇぇぇぇい!!!と殴り込んでいった。すると、影は反対方向へ倒れ込んだ。その正体は、あの菊子さんを紹介してくれた無断着なおっちゃんだった。




