天狗の怪 その二
そもそもこんな事件が起こったのも、中央の奴らが中央にしか興味を持たなくなったせいだ。何が自助で何とかしろだよ。そういうことだから、こういう田舎のガバナンスが効かないわけだ。だからこんな事件のひとつやふたつ起こったって仕方ないじゃないか。俺も大忙しだよ。
さて、まず何をすべきか。まずは役場で里の首長から話を詳しく聞くべきか?いやどうせ概要しか知らんだろう。だから俺みたいな専門家を派遣したわけだ。少なくとも、これが天狗のせいではないことを証明せにゃならん。ただ、事件が事件だ。俺の身に何が起こるか分からんな。
とりあえず、その辺歩いてみるか。それにしても、どいつもこいつも貧乏くさい格好してるもんだ。やせ細ってな。それに俺のことを怯えたような目つきでじっと見てくる。お上さんからやってきた俺がこんな怖く見えるのかな。取り敢えず、この里に溶け込むことから始めるべきか?
取り敢えず、さっきすれ違った、いろんなことに無断着そうな男に話しかけてみた。
すみません。
え?なんでしょか?おれぁ犯人でねえど?
いやいや。まだ何も分かってないんで、取り敢えず何か着るものだけでも合わせたいと思ってね。
あぁおれぁそういう面倒なことは知らねぇからあの家の菊子さんって子訪ねてみぃ。
そうですか。では。
取り敢えず、あの住宅を訪ねてみる。この荒れ果てた里にしては庭は綺麗にされており、かつての中流家庭のようだったが、家の方は若干崩れかかっているように見えた。
コンコン!スミマセン。どなたかいますか?
何か御用でしょうか?
隣の畑から女性の通りのいい掛け声が聞こえた。
あぁこちらにいらっしゃいましたか。
私は畑の方へ駆け出す。そしたら、向こうの方からドロだらけの裸足で近づいてきたので、思わず身を引いてしまった。
あなたが菊子さんですか?
ええそうですが。
ハタチぐらいでまだ若く、相変わらず痩せていたが、赤い頬で可愛い感じの背の小さい娘だった。
なかなかいい感じの娘を紹介してもらったもんだ。おぉっといけない、今回はお見合いじゃないんだ。




