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9/22

大好きな婚約者が冷たいのですが全く気になりません、なぜならば愛し合っているから

 ルーレンディアへの恋心に気付いてからは吹けば飛ぶようなザボン公爵屋敷に俺様の大切なルーレンディアを住まわせておけないと思い機会を狙っていたのだが、ルーレンディアと両想いになれたので囲い込む理由ができたのは喜ばしい。

 ルーレンディアの命に関わる大問題は早急に処理したい。


 俺様はザボン公爵家でようやく二人きりでのお茶ができているのでルーレンディアの横に座り説得している。


「ルー、実家を補修する間は王宮で俺様と一緒に住め」

「殿下、冗談も休み休み言って下さいまし、個人資産であっても婚約者の家を補修するなど認められません。国民に税から捻出したと誤解を生む行いです、そんなことは暴君か現王がすることです」


 敵は手強く賢いが俺様には譲れないことがある。


「分かった、実家の補修は中止するがルーは本格的な王妃教育を受けなければならないだろう、実家から通うのは大変だから俺様と一緒に住め」

「私の王妃教育は終了しております。そして先ほどから実家と仰っておりますが私と殿下は結婚しておりませんので共に暮らすのは無理かと存じます」

「馬鹿父に似ていると言われようと何だろうと一緒に住むのは譲らない!」


 ルーレンディアの両手を両手で握って頼み込むとルーレンディアの顔が赤らんだ。


「俺様が美しいから照れているのか?」

「殿下、私を見る目線に色を含んでいるように見えますが今すぐに止めていただかないと意識喪失します」


 ルーレンディアの首がガクッと後ろに反った。


「ルーッ!」


 ルーレンディアの手から片手を離してルーレンディアを支えて引き寄せる。


(至福だが危うい香りがする)


 ルーレンディアに接近したことでルーレンディアの香りが濃厚になっている。

 気を失っている相手に対して、してはいけない妄想が俺様の頭を駆け巡っている。


 俺様は取り敢えず一緒に住むためにコッソリ、ルーレンディアを城にお持ち帰りした。



 翌日、ザボン小公爵が涙のせいで伏せ字になっていて解読できない義母からの手紙(だがルーレンディアは読めていた)を持って押しかけてきた。

 不敬の輩(義兄)は伺いも立てずに勝手に王太子の部屋に乱入して来た。


「おぉいッ、誘拐犯!ルーレンディアッ!」


 俺様と共に昼食を摂っていたルーレンディアが立ち上がった。


「お兄様」

「ルーレンディアーッ!」


 俺様は俺様の妻(婚約者)に近付く不敬の輩と妻の間に立ち塞がった。


「ルーレンディアーッ!!」


 立ち塞がったせいで不敬の輩は俺様にしがみ付いて泣いている、抱きしめる力が強くて気色悪い。


「殿下、邪魔ですが」


 俺様の背中側でルーレンディアが咎めるように言った。

 兄妹の絆の強さに嫉妬してしまいそうだが俺様は婚約者でザボン小公爵は兄だと自分に言い聞かせて冷静さを保つ。


「この勢いで抱き付かれたらルーが転んでしまうだろう。ザボン小公爵、吐き気はするが我慢してやる、そして不敬だから速やかに帰宅しろ」


 俺様にしがみ付いていたザボン小公爵を近衛兵に排除させてルーレンディアを腕の中に確保。


「殿下、速やかに離していただかないと意識」


 やはり婚約式で口接けをすべきだった。

 ルーレンディアは俺様に免疫がないので密着すると意識喪失してしまうようだ、純粋で可憐だ。



 無事にルーレンディアを囲い込めたがルーレンディアが有能で母が無能なのでルーレンディアは母の補助に取られてしまった。

 王太子妃の部屋に住む筈のルーレンディアはザボン小公爵が現れてから一ヶ月も後宮の客室に住んでいる。


「こんなッ、こんな筈では」

「フッ、これで我が家の光を奪った貴様への復讐は果たしたも同然、今や父上も殿下との結婚を反対している。もう婚約の解消は秒読み段階だ」


 俺様に勝ち誇ったようにザボン小公爵が宣言してきたが、いきなり扉が開きルーレンディアが入室して来た。

 ルーレンディアが扇を剣のようにザボン小公爵に突き付けていて凛々しい、惚れ直す。


「お兄様の策略は瓦解しました、お父様に絶交をしないことを条件に殿下との政略結婚の履行を勝ち取ったのです。お兄様、どうせなら婚約を解消したとしても私の立場が危うくならないように画策して下さいませ、妹に裏をかかれるなど「№2」として未熟としか」


 ルーレンディアの宣言に燃え尽きたザボン小公爵はザボン小公爵の従者に背負われて帰宅した。

 義兄が帰宅してからルーレンディアが俺様の隣に座った。

 ずっと離れていたせいかルーレンディアとの距離が近い、俺様のことを恋しく思ってくれていたのだろうか。


「殿下、後宮より戻りました。国王様がお越しになり王妃様に私にばかり頼ることを禁じられたのです。私も王太子妃となる身、で、殿下と共に過ごすことに慣れなくては」

「ルー!」


 俺様が抱き付いたのが良くなかったらしい、ルーレンディアが気絶した。

 雰囲気も良かったので抱き付くのではなく口接けをするべきだった、久し振りに会うルーレンディアが笑顔なので抱きしめたくなるくらい可愛くて我慢できなかったのだ。



 ルーレンディアは王太子妃の部屋に住みながら文官として働いている。

 あれから5年も経ち俺様もルーレンディアも20歳になったのだが手すら繋ぐこともなく清く正しい付き合いをしている……やはり婚約式で口接けしておけばよかった。

 俺様の下半身寄りな思考はルーレンディアしか求めていないのだが、先日から馬鹿父とジアリウム侯爵が聖女の話ばかりしてきて鬱陶しい。

 だが俺様の恋路を邪魔するから罰が当たったのだろう、ジアリウム侯爵が王宮から突如消え数時間後に戻り、その間の記憶をなくした怪事件が発生した直後に聖女から馬鹿父(一応、国王)に手紙がきた。


 王宮への常駐要請には応じられません、担当の神官で十分だと判断しています。聖女は王太子様には死んでも嫁ぎません、政治利用しようと聖女の婚約者となった聖女専属聖騎士兼聖騎士団長のアビスを排除しようとしたり、私の幸せを脅かそうとしてきたりしたら国の安寧と命は保証できません。


 ……だそうだ。

 聖女と婚約者との結婚予定日が翌日に正式に発表され、祝福の恩恵を受けたい俺様は聖女によってボアル国中に降り注いだ祝いの花びらを拾った。


 王家の結婚というものは国家行事のため何かと準備が必要なので、今まで見たことのない希少な花びらを拾った日から結婚準備をしていたのだが、俺様が結婚すると知った害悪な馬鹿父と無能な母が退位を決めたことで結婚式に戴冠式も重なった。

 そのせいで準備することが大量に増えたため結婚できないまま二年も過ぎた。

 俺様とルーレンディアには何の進展もなくルーレンディアは変わらず文官として王宮勤めをしている、主は母の補助役だ。

 母は困ったことに考え足らずなのでルーレンディアがいないと王妃の務めを一人で真面(まとも)に果たせないのだ……もう戴冠式を待たずに害悪な馬鹿父と一緒に今すぐ隠居すればいいのに。


「ルー♡……ルー♡……ルー♡……ルー♡……ルー♡……ルー?……ルーッ!」

「私は狐でございますかッ!」

「俺様を無視するなッ!」

「今は社会的弱者支援に対する予算編成の要望書で忙しいですから邪魔をしないで下さいまし、その後は医学発展のための助成に提出された研究の元になっている論文を読まなくては。書類なしで殿下と二人きりのお茶は……15日後です」


 ルーレンディアとお互いに積み上がった書類を片付けながら会話をしている。


「15日後!それは酷いんじゃないか?」

「じゃあ今、片手間にお茶をして差し上げましょうか?」

「俺様の相手をするのに片手間だと!」

「じゃあ、書類が汚れてはいけませんのでナシですね」

「お茶を運べ!じゅ、15日後で承諾してやる、だが当日は膝に座ってもらうからな」

「過剰な触れ合いは私の心臓に負担が大きいのでご遠慮いたします」


 書類から顔をあげたルーレンディアは俺様と目線が合わさると次第に顔を赤らませ微笑んだ。


「なんだその可愛い反応と顔は、俺様を殺す気かッ!」

「殿下、五月蠅(うるさ)いから死んでおいて下さいませ。殿下を愛しておりますが今は忙しいんです」


 冷ややかな言葉だがルーレンディアの耳が赤いから俺様から可愛いと言われて喜んでいるらしい。


「クソッ、可愛い。好きだ、ルーレンディア。やはり婚儀は前倒しして年内で頼む」

「補正予算が面倒臭いので嫌です」


 ルーレンディアに指摘され確かにそうだと思い直した。

 それにしても俺様はいつになったらルーレンディアと口接けできるのだ。

 まさか結婚式までお預けではないよな……当日の気絶を避けるために事前に練習しようと誘うことにしよう、いい考えだ、そうしよう。



子猫(ルーレンディア)がピンチ!

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