大好きな婚約者はどうやら異性からの好意を察せないようです、そして素直に好意を伝えるのが苦手な自分は本当に駄目な男です
義兄上の助言に従い、さり気なくザボン公爵令嬢呼びから名前呼び、そして愛称呼びに変化させられたが15歳になっても俺様とルーレンディアとの仲に進展は全くない。
そしてルーレンディアの努力が実を結び王都の大通りで行う交通安全運動の許可が下りた。
流石ルーレンディア、下々の者にも慈愛を忘れない優しい完璧な婚約者♡褒美に俺様の膝で茶を飲ませてやりたい♡
そう思い王宮騎士団(国の治安も行っている)に許可証をもらうために来るルーレンディアを待ちかねる。
許可書が下りないとルーレンディアは落ち着かないだろうと思い、ルーレンディアが帰宅する前に迎えに行った。
丁度いい時間だったらしくルーレンディアが騎士棟の建物から出て来たところで声をかけた。
「ルーレンディア」
俺様は真正面からルーレンディアに声をかけたのにルーレンディアは俺様の横を素通りしようとしたのでルーレンディアの腕を掴んだ。
「殿下」
俺様を見るルーレンディアの驚きの顔は叫びたいほど可愛いが呼び方は気に食わない。
「ルー、なぜいつも名前で呼んでくれないんだ。婚約者なのだから俺様の愛称呼びも許可した筈だ」
俺様が掴んだ腕をルーレンディアが外そうと手を伸ばしてきた。
俺様はルーレンディアから触れられることは心の準備が追い付いていない、俺様の溢れる想いを全て曝け出してルーレンディアに逃げられそうで危険なのでルーレンディアを解放した。
適度に抑えてお茶を飲みながら愛を語ろうと決意しつつルーレンディアをお茶に誘う前にルーレンディアが言った。
「殿下、言いたいことがそれだけなのでしたら私は忙しいので失礼いたします」
またもや俺様に背中を見せるルーレンディア。
「なッ!これから大事な……ルーレンディア、無視するな、コラ!俺様の話を聞けッ!」
俺様を嫌がる婚約者に心はボロボロだが、俺様が幼少期にルーレンディアに対して行った仕打ちを考えると逃げられても仕方がない。
今日からルーレンディアが有志と共に大通りで交通安全運動を行うのだが、貴族令嬢のルーレンディアが市井で活動など良からぬ輩や暗殺が心配なので俺様のルーレンディアの周囲に密かに優秀な護衛を付け、俺様は馬車から様子を窺うことにした。
ルーレンディアに何も起きなかったので特筆することはないが、あの日から会えなかったイルカのキーホルダー少女を見かけた。
名前は何だったか……まあ、いいか。
「この者からコレを取り返せ」
帰宅後にイルカのキーホルダー少女の似顔絵を差し出して優秀な護衛に命令した。
自分で訪問すればいいだけなのだがルーレンディアの大通りでの交通安全運動を認可させるために御者組合と運搬組合から集会の誘いがあり出席したのを皮切りに医療や薬学、気象だけではなく、ありとあらゆる学会に出席することになってしまい忙しい。
(体が三つ欲しいが全員ルーレンディアに侍ッ、ではなく従者か護衛をしたがるから駄目だな)
命令した相手は優秀な護衛なので容易く回収できると思っていたのだが少女にベッタリな浮浪者のせいで回収は困難を極め、その浮浪者に恐ろしい事故が頻発した。
報告を聞くと最早、優秀な護衛は浮浪者の優秀な護衛になったのか?と聞きたくなる状態。
加えて俺様の可愛いルーレンディアが下町の警備も不十分な神殿に通っていることを聞き、密かに優秀な護衛を俺様の大切なルーレンディアにも付けた。
「報告しろ」
「疑惑の少女は今週末の安息日、ザボン公爵令嬢の通っておられる地域の神殿に赴かれるそうです」
「そうか」
「それと殿下の婚約者様に伝言が、「私の目的は殿下ではありません、その証拠に淡い初恋の思い出アイテムはどこにいったのか分からない状態です。私は崇高な精神を全く持ち合わせていないのでシンデレラストーリーに興味ないです。加えて尊き御方には使命が付き纏いますのでヒーローには近付きません、どころか御免です。私は我が儘でいつまでも少年気質を持って成長する男なんて恋愛対象外のため初恋ではありません!」だそうです」
「半分くらい意味が分からないが!」
イルカのキーホルダーの少女は気にしなくて良くなったので俺様は安心してイルカのキーホルダーを捨てたが同じ週の安息日、ルーレンディアに付けていた護衛からの伝書で聖女誕生(何と、イルカのキーホルダー少女であった。俺様の人を見抜く力は抜きん出たものがある。将来の聖女を見抜くとは流石、俺様)の知らせとルーレンディアがしょげた様子で神殿を出たと報告があったので俺様は早急にザボン公爵家屋敷に向かった。
(いつ見ても公爵家の屋敷とは思えんくらい質素だな)
忠誠を称えられ八代前に王家からザボン家に与えた公爵位と王都にある離宮は、土地は広いが王都でも少しだけ外れた場所にある。
ザボン公爵家は与えられた屋敷も当時のまま使用しているので広いが古い屋敷に暮らしていて強めの雨風がある度に補修しているし、土地面積も広いので農場と放牧場所があるので一瞬にして田舎風景が広がる。
俺様はいつものように玄関先で待ち構えていたのだが、ルーレンディアもいつものように俯いたまま俺様の前を素通りしていく……ルーレンディアの俺様への無関心さに俺様だって泣いてもいいかもしれない。
「コラ、コラ、待てッ。この俺様を玄関先で二時間も待たせておいて無視か!」
声をかけるとルーレンディアが俺様を見た。
ルーレンディアは常に鼻にハンカチを当てているので愛らしい口元は見えないが目の周りを赤くしている。
(泣いた!泣いたのだなルーレンディア。誰だ、こんなにも俺様のルーレンディアを泣かせたのはッ)
俺様が動揺を隠せないでいるとルーレンディアが心の底からであろう深い溜め息を吐いた。
「今は躾のなっていない犬の相手は疲れているのでできません」
言いながらもルーレンディアは涙を零している、ルーレンディアはどんな時でもとても美しいが悲しむ姿は見たくない。
「ルーレンディアはチョクチョク、俺様に失礼だな。だが婚約者だから許してやろう、だから取り敢えず涙を止めろ」
自分のハンカチでルーレンディアの涙を拭いているがルーレンディアから益々、涙が溢れてくる。
「チッ、追い付かないな」
ルーレンディア以外の婦女子に興味がないので女性の涙を止める方法など知らない俺様は成す術がない、何を言えばコレは止まるのだ???
「金髪碧眼と見目麗しい顔だけが取り柄のお子様はいつになったら威厳を保てるようになるのですか?」
よく分からないが……ルーレンディアが俺様に対して怒っているらしい、よく分からないが……俺様を責めてもいるらしい。
この三年間、距離を詰めようとする俺様を常に無視してきやがったくせに八つ当たりはしてくる。
そこが可愛くもあるのだが、いい加減に俺様の気持ちを無視するのは止めて欲しいものである。
俺様の恋心は誰しも気付いているほど分かりやすく、あからさまなのだがルーレンディアは察する気配がない、そんな筈はないと否定していたがルーレンディアは恋愛面における成長が著しく欠如している。
このままでは俺様はいつまで経ってもルーレンディアに不出来な婚約者扱いをされるだけだ、鈍感相手に遠回しに言っても気付く筈もないので俺様は告白の覚悟をした、自尊心など二の次だ。
「言われなくても俺様が見目麗しいのは知っている。俺様が素を見せるのがルーだけのことも知っているだろう。同い年の姉は要らない、いい加減に気付いて黙れ。婚約者らしく二人でお茶の時間も作って欲しい、色々な方面から高評価を得ている婚約者を持つと他の誰かに盗られそうで胃が痛い」
「私、恋愛感情をかなり拗らせているようで幻聴が聞こえたようです。非常に疲れているせいか精神機能を崩壊させ肉体にまで影響が及んでいるようなので寝ることにいたします」
俺様の言葉は聞こえたようだが腹立たしいことに俺様への信頼回復はまだしていないらしい、だがルーレンディアは涙を止めてこの上なく可愛い顔をしている。
俺様は取り敢えず先日、聖女から頼まれた意味の分からない伝言をルーレンディアに伝えることにした。
「俺様がここまで言っているのに聞き流すのか!リーゼから伝言だ「私の目的は殿下ではありません、その証拠に淡い初恋の思い出アイテムはどこにいったのか分からない状態です。私は崇高な精神を全く持ち合わせていないのでシンデレラストーリーに興味ないです。加えて尊き御方には使命が付き纏いますのでヒーローには近付きません、どころか御免です。私は我が儘でいつまでも少年気質を持って成長する男なんて恋愛対象外のため初恋ではありません!」だそうだ。初恋は俺様とルーを引き裂く過去の過ちのため初めて会った時のルーに修正しているが聖女はルー以上に失礼な女だな、しかも言っている内容が意味不明だ」
伝え終わるなり俺様の大切なルーレンディアが倒れてしまった。
聖女のありがたいお言葉ではなく意味も分からないし呪いか何かだったのだろうか、だがルーレンディアは俺様の腕の中に倒れ込んできたので聖女から何かしらの恩恵は受けたらしい。
婚約者であるルーレンディアが倒れたのを切っ掛けに俺様はルーレンディアの元に毎日、通うことにした。
ルーレンディアに想いは伝えたので買い集めた贈り物を改めて贈るために整理している。
自分の「馬鹿さ」を確認するつもりはなかったが、自分の行いが自分を嗤っているかのように目の色である青色の物が多い。
手違いで母の物になっていた装飾品は取り返して仕立て直しておいた。
露店で買った装飾品は本物で似た物を用意した、もう子供っぽい雰囲気の物は似合わないだろうから職人に今のルーレンディアに合うよう上品になるように仕上げてもらうのも忘れない。
顔合わせを済ませ、すぐに買った絵本と一緒に贈ろうとしていた青いリボンが色褪せている。
俺様がルーレンディアへの想いを拗らせた元凶である父は今でも嫌いだが母に罪はない。
母は守られることしかできないので父の庇護がないと生きていけない、社交も人見知りで過去の確執から公・侯爵の夫人達の顔色を窺っているから王妃の力量もない、ザボン公爵夫人から慰問に誘われて行くくらいだ。
だが何も考えていないので孤児院で一カ月分の食費になるくらい高価な菓子を手土産にしたり、子供達が描いた絵を飾るための空間なのに芸術作品を寄贈して一緒に飾るよう強請ったりするので呆れられることもしょっちゅうだ。
それでも母としては理想的で俺様に無条件の愛情を注いでくれる相手だった、母から読んでもらった多くの絵本で一番好きだったのがルーレンディアに贈ろうとしていた絵本だ。
絵本の内容は、王子様が虐められている裸足のお姫様を救う話だ。
現実に裸足のお姫様など存在すれば怪しいことこの上ないが、父と母のような話なのは母の意図と俺様が何も分かっていなかったからだろう。
「(この絵本を贈るのは止めよう)それにしても……思っていた以上に多いな。ルーレンディアを嫌ってなんかいないじゃないか、それなのに何をやっていたのだ俺様は」
リボンを解いて別の絵本を選んだ。
政略結婚をした二人が領地に出現した怪物を倒して愛し合うようになる話だ、絵本を贈らなくてもいいような気もしたが俺様とルーレンディアに子供ができた時に活用できる筈だ。
(ルーレンディアの体が心配だから子供はナシでも一人でもいいが、お祖父上様の特別措置のお陰で基盤は整っているし、貴族共も正式に女性が爵位を継承できるようになるのは反対しないだろうし、どちらが生まれても王位継承できるように法律を整えておかないといけないな。結婚するまで後、7年か……長いな、不満だ。明日では駄目なのだろうか)
せっかくルーレンディアと両想いになれたのに結婚できないとは残念で仕方がない。
王太子編がやけに長くなりましたが主役は絶対にユニとルーレンディアです、そこは譲りません、王太子はオマケです。




