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病みヒロインになりましたから異世界チートで共依存の邪魔はさせません

 あれから二年、無事に私のお手付きになったアビスは聖騎士団長だが常に私に引っ付いている。

 神殿では私の意向が最優先のため騎士団長としての書類仕事は他の聖騎士達がしてくれているのだ。

 私のお世話をしてくれている神女達は私が神殿に来た当初からずっと付いてくれているのでアビスのことも理解してくれて、私達は誰にも邪魔されずに二人でいることが多い、なので神殿の聖女区域は新婚家庭と相違ない状態になっている。

 私は既に処女ではないが、私の神聖力がなくなっていないので私のお世話係の神女達から私達はまだ清い関係だと思われている。


「聖女様、心臓と理性が(たも)てないので離れてもよろしいでしょうか?」


 二人でのお茶の時間に同じソファに座って私はアビスにくっ付いているのだが、アビスにそんなことを言われてしまった。


「(赤面する推し最高♡)アビたんは「ユニと呼びなさい」って、いつも言っているのに。こうなったら……呼ばないと膝に座りますよ」

「ユニ様、呼びますが膝には座って欲しいです」

「「様」を付けたから座ります。今から沐浴があるので行きましょう」

「ユニ、抱き上げて運んでもいいですか?」

「いいですよ」


 沐浴は二人で水に打たれている、冷たい水だろうが愛の炎は消せやしない……なーんて、ダサセリフを吐くくらいに相思相愛である。


「ユニ、好きです、愛しています、いつまでも自分だけ好きでいて下さい。ユニに嫌われたり捨てられたり自分以外の者を見つめられたりしたら……と考えるだけで自分は狂ってしまいそうです」

「心配いらないですよ、私はアビたんが大好きですからアビたん以外は見ませんし近寄りませんから」


 いつもなら返事をしてキスしたらアビスに立位で挿入してもらうのだが、神様から極上の幸福を与えられたのだから今日はキスと抱擁だけにしておいた。

 沐浴時間は毎回イチャラブ時間、私達はこんなにもラブラブなのに王家から聖女に王宮に常駐要請の手紙がきた。

 神殿のお偉いさんが突っぱねればいいのに……仕事のできない大神官と太鼓持ち達である。

 このボアル国で繁栄している都市の神殿にいて分けられている地区の統括もしている8人の神官長達と大神官を速やかに招集した。

 異世界チートが働いているので私を(あなど)って仮病で欠席しようとした2人も召喚した。

 テーブルは円卓なので序列はない、座っているのは私を含めて10人だ。

 私は小説の中で描写されていたように大神官の隣ではなく、いつも敢えて大神官と対面する位置に座るようにしている。


「あー、もー、面倒臭い。政治的思惑に神殿を巻き込んでくるなんて。愚かな考えをして要らないことを陛下に進言した貴族は誰ですか。私は恋愛に政治が絡んで主権を取り合う壮大な話から抜けたんですから放っといて欲しいです」


 円卓にしている白大理石のテーブルをトントンするとリアルタイムなミニ王宮が階ごとに分かれてテーブルの上に出現した。

 屋根がないので王宮にいる者の様子がよく分かる、モザイクになっているのは18禁行為中だろう。


「それと、神殿にも世俗を愛する方がいるようですね。アラ、いつお見掛けしても真っ黒な(もや)を背負っているジアリウム侯爵ではありませんか」


 小説の中で聖女の後ろ盾として大活躍なジアリウム侯爵(小説ではコイツ、イイ人ぶって本当は野心家じゃねーの?な味方)をジオラマの中からヒョイッとつまみ上げ、焦っているジアリウム侯爵の背中をトンと押すと映写機のように記憶が出てきた。

 小さいので手の平くらいの大きさの映像が白大理石に映し出されたので見えにくい位置にいる神官長が立ち上がって身を乗り出している。


 ・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…


「王家は聖女の持つ求心力を懸念しています。」


 ジアリウム侯爵は目線を下に向けているので映像は音声とローテーブルに置かれている湯気の立つ紅茶だ。


「陛下に「王太子様に聖女を(めと)らせれば過去の歴史にあるように国が繫栄する」と進言して下さればいいだけです、聖女の能力がなくなっても国母となれるのですから聖女にとっても悪い話ではないと思います。王宮に聖女を送り込めば王太子様も聖女を無視することはできない筈、平民の聖女だろうと我が家の養女にすれば聖女を世俗に戻しても蔑ろにされることはない、それは保証します」

「ジアリウム侯爵、認められませんね。王太子に嫁ぐ聖女は利になるでしょうが、今代の聖女は歴代の聖女達より強い力をお持ちだからこそ神殿の意向が国内に響き、他国より優位でいられるのです」


 ジアリウム侯爵に返事をした声を聴いて、中央神殿に所属しているためいつも大神官の側で太鼓持ちをしているゲルマン神官長を全員が見た。

 ゲルマン神官長はブルブル震えているが映像は続いている。


「心配なさらなくても神殿の政治に対する発言力は確実に高まります。ゲルマン神官長が大神官様の威光で大神官の地位に昇り詰めるにはあちらこちらに金をばら撒く必要があります。ですがそれも聖女が王宮にいれば容易(たやす)いのでは?王太子妃となれば莫大な予算が配分されますからね、清貧な聖女なら必要ない予算を神殿に寄付なさるでしょう」


 ジアリウム侯爵の目線がテーブルに置かれていた自分の紅茶から対面していた二脚の茶器、人物の顔に移る。


「今後もジアリウム侯爵が動いて下さると?」


 ジアリウム侯爵が見ているのは不安そうな顔をしているゲルマン神官長と、いつもの優しい微笑みを(たずさ)えている大神官だった。


「聖女を差し出してくれさえすれば全て上手くいきます。神殿から聖女が姿を消せば大神官様に神殿の意思が戻ってくるのではないですか?偉大な大神官様が今のように聖女の陰に隠れる必要もありません、大神官様の威光は以前と同じように高まるでしょう。大神官様の座位中に名のある画家による宗教画はどうでしょう、神殿が身銭(みぜに)()らなくても王となった王太子が愛しい妻から可愛らしくお強請(ねだ)りされれば喜んで国庫から金を出しますよ。美しい神話の世界が祈りの場である聖堂に(ほどこ)されることになれば神もお喜びになるのではないでしょうか。加えて、私が王太子の信頼を得られれば金などいくらでも国から引き出せますよ」

「悪くない話ですね」


 ・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…━…‥・‥…


「もう、いいですよー!」


 大神官とジアリウム侯爵が握手したところでミニ・ジアリウム侯爵を指で弾いてジオラマの中に戻してジオラマは消した。

 地区を統括している神官長達も私にアビスがいるように専属護衛の聖騎士を一人連れて会議に出席しているのだが、アビス以外の護衛騎士達全員の動きがオカシイ。

 確実に大神官に加担していなかった神官長達と自分達を()りにきている。


「呪いーッ!」


 聖騎士なのに護衛対象を殺ろうなんていう不届き者達に体が重くなり動き辛くなる呪いをかける。

 アビス(Myダーリン)が素早く動いて不届き者達を戦闘不能にさせた。


「アビたーん!」

「ユニ♡大事な体に何もなくてよかった」


 殺伐とした気分を払拭するために二人で抱き合ってお互いの匂いを補給する。

 アビスは匂いだけでは足りなかったらしく私を横抱っこ回収してキスを始めた。

 ギャラリーが多いので唇以外へのキスだが、美形からの溺愛とはとことんイイ(モン)である。

 その間も私達の背後で物事は進んでいて、神官長の一人が表で待機していた聖騎士達を呼んだので大神官とゲルマン神官長や大神官派の聖騎士達は全員、捕まって連行されていった。


「ところで聖女様が大事な体なのは当然ですが、それでもエトラ団長の過保護が平常より増している気がします、何かありましたか?」

「ハイ、おめでたです。初めて会った時から大神官様が悪意と人殺しの罪を示す真っ黒い靄に包まれていましたので全く信頼できなかったのと、アビスとの愛の証がまだ安定期に入っていませんでしたから報告は控えさせていただいてました」


 祝いの言葉が欲しかったが残った7人の神官長達、全員の口が開いた。


「では聖女様は乙女ではないと?!」


 今回の会議を面倒臭がって仮病を使ってきた神官長7が言った。意外にもコイツは大神官にも、担当している神殿がジアリウム侯爵の領地にあるのにジアリウム侯爵にも加担していなかった。

 でもそれも納得、権力欲が強くて自分が一番偉いと考えているバカで、実力も求心力も支持もないのに前の大神官の甥だという理由だけで近い将来、大神官になれると思っていたからなのだ、これを機に新しい大神官に人事異動を命じられて左遷される可能性が高い。


「乙女ではないなら聖女の神聖魔法は使用することはできないのでは?!」


 私を下に見ている元貴族なだけで能力は自分の補佐に勝てない神官長8が言った。

 彼は今回、仮病を使ってきたもう一人である。

 無能だから大神官とは疎遠なので排除しなくても問題ない、コイツも左遷対象だろう。


「で、で、ですが先ほどの神の御業のような現象は?!」


 神官の中でも中立を貫き他の神官長からも尊敬されている男爵家出身神官長6が言った。


「アレは確かに神聖魔法でしたよ?!」


 私に好意的な平民神官長4が言った。


「そうですよ、神聖魔法に間違いありません!」


 伯爵家出身だが幼くして神殿入りしたため世間知らずではあるが実力は伴っていて私に好意的な神官長5が言った。


「では、どういうことなのですか?!」


 侯爵家出身の神官長3が言う、自尊心が高いので私を否定したいが自分の眼で神聖魔法を確認したから混乱しているのだろう。


「「聖女様は聖女のまま」ということではないでしょうか」


 平民出身で大神官とは対立勢力になり信者の間で一番の次期大神官候補であり、私にとても好意的で感じのいい神官長2(ちなみに神官長1は今回捕まった大神官の腰巾着ゲルマン神官長だ)が言った。

 神官長達の中で結論が出たようなのと、アビスも満足したようなので床に降ろしてもらった。


「では王侯貴族への今後の対処は「王宮への常駐要請には応じられません、担当の神官で十分だと判断しています。聖女は王太子様には死んでも嫁ぎません、政治利用しようと聖女の婚約者となった聖女専属聖騎士兼聖騎士団長のアビスを排除しようとしたり、私の幸せを脅かそうとしてきたりしたら国の安寧と命は保証できません」ということでお願いしますね。神殿関係者の皆さんも良からぬことを企むと真っ黒に見えますから変な考えを実行に移さないようにして下さい。それでは聖女のお努めに戻りますね」


 微笑んだが、どうやら恐怖対象になったようなので後光を出してみた。

 すると神官長達は尊敬の眼差しに戻ったので無事に畏敬対象に戻った。


「次の大神官と補充の神官長に関する人事は全て皆さんにお任せします。私の信頼を裏切ることのないようにして下さい」

「承知いたしました」


 頭を下げた神官長達に背を向けて部屋に戻る。

 聖女区域に入ってからアビスの腕に絡まった。


「王太子様は見目麗しくて有名ですし、国母は女性の地位として最高峰なのにユニは興味がないのですか?」


 不安そうなアビスの耳を引っ張って顔を引き寄せて唇にキスする。


「アビたん、政治と宗教は交らわない方がいいんですよ。私は元から国母に興味ありません。第一、愛するアビたんの子供が私のお腹で育っていますから今更な話だと思いますよ。ま、それ以前に王太子様は私の好みではないので愛を育んで尽くす気にはなれませんけどね、私が好きなのはアビたんだけです」

「ユニ」


 凄く嬉しそうに微笑んだアビスからキスのお返しをされた。



 実は私が10歳の時、建国祭でお忍び中の王太子様と遭遇し一緒に遊んだ経験がある。

 結果「コイツ、私に惚れたな」と察したが、王太子様はその日に会ったばかりの私を連れ回して、私が本当の友達と話し込むと口で言えばいいものを腕を引っ張られて無理矢理、離されるという対処をされた。

 王太子様は確かに悪いことは見逃せない性格をしていたが、元気と腕っぷしだけが取り柄で所有欲が強く、見目麗しいことや王太子の地位を持っているせいで他者からの特別扱いが当然だと思っている好感の持てない男子だった。

 勝手にどこかに行かれたら王太子だし困ると思って一日中、付き合いはしてみたものの、将来は弱い者に優しい正義感の強い爽やかな男に成長するだけの王太子様は、厨二な前世のある私の性癖に刺さらなかった。

 建国祭で王太子様と別れる際に「今日の記念に」と言われてお揃いのイルカのキーホルダーを押し付けられたが、たとえそれが小説の中で重要な王太子様「初恋の思い出アイテム」であっても小説のように大切に持ち歩かなかったし、すぐに失くした。

 聖女として神殿に行く際に大掃除をしたので行方不明だったアイテムを見つけたが私は迷わず処分した。

 私の初恋は薄汚れた服を着てガリガリでちょっと臭い浮浪者少年であり、私のあからさまなストーカーだったアビス(Myダーリン)である。

 転生物ではお決まりな幼いアビスとのスピンオフがなかったのは心の底から残念だった。


「ユニは王太子様に会ったことがありますか?」

「市井で暮らしていたんですから街に溢れていた肖像画を見たことがありますよ、でも私はアビたんの方が美形だと思います。私から離れちゃダメですからね」

「言われるまでもありません。自分は一生、ユニの側にいます」


 アビスに微笑みかけるとアビスが立ち止まったのでキスをして愛情を注いでおく、愛情タプタプで誤解からの思い込みによる心中は阻止だ。


「どうやら王太子様を排除しなくても良さそうですね」

「ハイ、私はアビたんしか見えませんから♡」

「ユニ♡」


 再びアビスの腕に絡まって聖女専用区域にある部屋に帰宅した。

 私はアビスを()ませて殺人鬼にさせたくないが、アビスが私を奪われたくない一心で殺人を犯してしまった場合はアビスを全面バックアップする気でいるし、「一緒に逃げて欲しい」と言われれば逃げるし、心中だってする。

 こういうのは狂っていると思われるのだろうし、共依存というモノなのかもしれない、だが私達は神殿の奥でヒッソリ生きているので誰にも迷惑にならないだろう。


 取り敢えず小説と王侯貴族に振り回されるのはこれから先も勘弁だし、明日はアビスとの結婚を宣言しよう。

 ついでに妊娠していても神聖魔法が使用できることをアピールするためにボアル国中に途中でこの世界にはない桜の花びらに変わる雨でも降らせればもう誰も口出ししてこないだろう。

 アビスとの結婚式は安定期に入る夏を考えている。

 私は結婚式の当日に何を降らせようかな……と今から迷っている。



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