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悪役令嬢転生しましたけど人間って開き直ると結構、何でもできるモンなんですね…

 5歳の時に気付いた、(わたくし)は休日の部活帰りに自転車ごとダンプカーにぶつかって死亡した中学一年生で、愛読書(あいどくしょ)の世界に転生して悪役令嬢のルーレンディアになったと。

 ちなみに愛読書は少女小説で王子様とドレスと馬車とコルセットのナンチャッテ貴族社会が舞台だ。

 現在は歴史だけは立派なザボン公爵家の娘になり子供に無関心な両親(連帯責任で私と一緒に断罪される)と、妹に無関心な兄(生き残って公爵家を繫栄させる素敵な脇役)を持ち、家族から存在していないかのように無視されている。

 それでも私は王太子の婚約者なのでお金のないザボン公爵家のために王家から使わされている家庭教師から教えを受けている。

 この家庭教師は子供が言うことをきくようになるという評判の家庭教師なのだが、実際は体罰が酷いので私は鞭打ちされては聖水治療される生活をしている。

 鞭を片手に持つヒステリックな女教師は行き遅れストレス発散のために子供を使っている。

 前世を思い出して少々、庶民的になった私としては読者目線で、王太子様の婚約者様に何をしくさっているのかと問いたい。


「ふっ……ウッ……ウエーン!」


 5歳児なので美しい文字を書くのすら難しい年齢だが単語のスペルを間違えてしまったので今日も右手に鞭が素敵にクリーンヒット。

 しかし前世を思い出した私は、今までのように瞳を潤ませ唇を噛んで我慢するという超人的なことをせず5歳児らしく大声で泣いてみた。


「何事ですか?!」


 家族から放置されていても貧乏な王太子の婚約者に同情した王妃様より送られた有能な乳母がいるワ・タ・ク・シ。

 いつも聖水治療されてなかったことにされている鞭の痕がしっかり残った手と、暴れたために家庭教師から強い力で拘束され口を塞がれているせいで酸素不足で気絶寸前になっている私を乳母が目撃した。

 家庭教師は王家より派遣された騎士に捕まり、王太子様の婚約者を虐待していた罪を問われ今まで通った回数の十倍、鞭で打たれて家庭教師の資格も剥奪された。

 その後は大活躍な乳母のお陰で、新しい家庭教師との勉強の時間であっても王家より使わされた通いの護衛が付くようになり虐待を回避できるようになった。


 私は生誕と同時に婚約しているので5歳で覚醒しても婚約回避できない。

 よくある転生物だとヒーローが美しい悪役令嬢に一目惚れしたり積極的に交流したりするのだが現実は子供がすぐに死ぬ世界、王太子の婚約者なので他の令嬢達より命を狙われる確率が高くなった幼女では誘拐防止と行動制限で外出許可は下りず、王太子様・8歳の誕生日パーティーで初のご対面になった。

 婚約者の王太子殿下は同い年、対面するまではいくら殿下が美少年でも「ショタには興味ねーわー」と思っていたのだが流石、小説世界の金髪碧眼で破格の美貌を持つヒーロー設定の王子はコッチを一目惚れさせてくるほど魅力があった。

 だが殿下は赤い髪と大きな緑の瞳をしている文句なしの美少女婚約者に対して不機嫌を隠そうともせず怒った顔を見せてきて、何もしてなくても嫌われることはあるんだなと知った。


(初対面から嫌われる設定だもんね。泣いちゃダメ、14+8歳だから)


 同じ年に建国祭のお誘いがあったが殿下はすっぽかしてきた。

 予想はついたので一秒も待つことはせず帰宅した結果、殿下との交流はお互いの誕生日だけになった。

 それからはお互いの誕生日パーティー当日はこちらを避けまくる殿下と、殿下がヒロインと出会うまで粗野な分、優雅さ一級品に成長を遂げている私に太鼓持ちをしながら擦り寄ってくる貴族令嬢や弟妹達の相手もあり、出世欲の強い貴族令息や私に対抗心を燃やす令嬢達に囲まれる殿下と仲を深めるなどできなかった。


 案の定、10歳の婚約式では何もしていないのに殿下から邪険に扱われた。

 貴族令嬢にとって婚約式は結婚式に並ぶ晴れ舞台なのに殿下は私に贈り物一つ渡してこなかった。

 詳しい事情を知っている乳母が王妃様からの贈り物を携えフェ○リーゴットマザーのように華麗に登場してくれなければ私は古着ドレスのリメイクで婚約式に(のぞ)むところだった。

 小説の設定通りヒロインと出会って初恋を経験したから不満が増したのだなと理解しつつも、コッチは王家より派遣されている家庭教師によって屋敷で王妃になるため自国だけではなく他国のことまで知識を詰め込まれ大人扱いされているというのに、小説通りなら今の時期の殿下は毎日、王宮を抜け出して市井でガキ大将をしていると思うと理不尽に感じて腹が立った。

 婚約式では普通なら唇にキスするのだが額にキスするフリ程度でよかった、殿下からキスされでもしたら唇だろうと額だろうと確実に頬を引っ張たいて説教してしまう。

 婚約式は双方、一言も発さず睨み合うだけで終了し、私達は不仲説を確定させた。

 私は婚約式で乳母と涙の別れを経験する筈だったが婚約式終了後、乳母が今までの家庭教師と交代で王室に入るための()(きた)り教育の家庭教師となり戻って来るというオチャメな報告をしてくれたので私の機嫌は直った。


 すっかりヤサグレた私は殿下の11歳の誕生日、婚約者と交流もせず一足先に一人で会場を抜け出そうとバルコニーに向かう設定の殿下を元から嫌われているのだから今更、何をしても同じだと開き直り、設定通りガッツリ見張ることにした。

 エピソード通りに私の視線を避けつつコソッとバルコニーに向かう殿下をすぐに追いかけ、殿下が小説通りに建国祭でヒロインに贈ったお揃いのキーホルダーを落として急いで拾った隙に私は殿下の近くに姿を現した。

 不仲エピソード発動で「殿下、どちらへ?」「チッ(舌打ち)貴様か、(われ)に構うなッ」だけの会話で済ませてやるもんか。

 殿下が私に跪いた体勢になっているのをいいことにバサッと扇を広げて嫌味を言う。


「殿下は王太子の立場でありながら勉強を疎かにして市井で遊び回っていると聞き及びました。殿下は生粋のお馬鹿さんですこと、傀儡の王になりたいのなら、今後も、そう、なされませ」


 わざと言葉を区切り婚約者を説教する私を殿下が殺せる目線で睨んできた。

 だが殿下は所詮、11歳の少年でしかない。

 14+11歳の成熟した大人である私は大人げなく小学5年生を鼻で嗤ってやった。


「初恋だか何だか知りませんが、平民と恋に落ちた殿下が愛に突き進むのであれば誰からも口出しできない強い権力を持つべきなのではありませんか?私の家の人脈を殿下は侮っているようですが殿下の求心力だけでは乗り越えられるものではありません。政治的判断ができないまま恋愛するのでしたら、いつでも第三者に王位を譲れるように整理してからにしてはいかがかと存じます」


 殿下は口が開いていたが知るもんか、小説のネタバレ上等、殿下に上から目線で言い切り背中を向ける。

 殿下が騒げば無礼打ちも王族侮辱罪も適用され罰せられるだろうとビクビク過ごしていたが何も起きなかった。

 どうやら私は男を見る目があるみたいだ、殿下はヒーローだけあって寛大な心を持っているらしい、虚しい片想いだが私を惚れさせた男だけある。


 私は闘志に火が点いたので持てる人脈を駆使してヒロインの登場を阻止しようと決めた。


「悪役令嬢として華々しく散ってやらぁ!」


 老朽化の激しいザボン公爵屋敷ではバルコニーに出られないため窓を開け下品に叫ぶ私を外壁補修中の兄が発見し、興味深そうに見てきた。

 兄は厨二な年齢に当て嵌まるため何かに刺さったのだろう、この日から私に絡んでくるようになった。

 私は兄の厨二病に応え、古いシーツを割いて紅茶(出涸(でが)らし)で染みを作り全く治療に向かない汚れ気味の包帯や黒革の眼帯を贈ったり、黒龍が取り憑き左手が勝手に動いたり震えたり語りかけてきたりする現象や、影の組織№2(その世界では№1ではいけないらしい)という内容で「聞き齧っただけ」という嘘を吐いて前世を参考に適当に創作した俺TUEEE話に喰いついた兄は滅法(めっぽう)、チョロかった。

 兄は「ソウイウノ」が好きだと分かったので前世を含む私の事情も打ち明けてみた。


「そうか……相手が聖女とはいえ殿下のために血が滲むほど努力した健気(けなげ)なルーレンディアを、たかが初恋のために邪険に扱うばかりか不義を犯したという罪を自分は有耶無耶にして、その後の保障もなく簡単に捨てるとは酷い対応だな。不憫なルーレンディアが聖女に恨みを抱いて陥れようとしても仕方がないのではないか?いっそのこと今の内に処しておくか?」


 と、親身になってくれた。

 一瞬、魔が差したがこの世界はヒロインのための世界であるのだから、きっと聖女としての覚醒が早まるだけなのではないかと暗殺は引き止めておいた。

 天からの怒りを買い、ありとあらゆる自然災害がザボン公爵領を襲ってきて一族が一瞬で滅びるだけだろう。

 それでも兄と少しばかり太い家族の絆が生まれて良かったから私の収穫は大きかった。


 私は兄と相談して聖女が見つかる馬車事故の時期に合わせて交通安全キャンペーンをしようと決めた。

 当初の動機は不純だったのだが、貴族が平民を馬車で轢き殺すのは日常茶飯事なので私は次第に本気になった。

 他家との交流で馬車事故により車椅子生活をして家から隠されている同世代の貴族少年や、寡婦となった貴族の未亡人や、孤児となってしまい虐められていた貴族の子供達だけではなく、奉仕活動(ザボン公爵家では金銭に余裕がないので労働力を提供しているのだ)で行った孤児院で同じ状況になってしまった子供達と共に標語的なポスターを持って街道に立ったり、前世からパクッて領地内に路地から飛び出して来る少年の看板を設置したりもした。

 そうなってくると殿下の私を見る目も変わってきたのか、年1交流を希望していた殿下と国家行事だけではなく何かある度に顔を合わせるようになった。


「ザボン公爵令嬢、今日は俺様と共に最新医療の視察に……って、どこに行くのだッ」

「見てお分かりでしょう、孤児院と貧困街と託児所です」

「そんなことは他に任せて婚約者として同行しろ、医師との歓談が目的だがザボン公爵令嬢も特別に昼食に招待してやってもいいぞ」

「消化不良を起こすような真似はお止めになった方が賢明……私、気付きました、ですから医師が同伴するのですね、素晴らしい対処ですこと。ですが私が根本的に解決して差し上げます、私を同伴せず行かれては?私の昼食は移動する時にいただきますのでご心配には及びませんから。それでは殿下、お互い有意義な一日を過ごしましょう」


 貧乏暇なし、あるのは労力、私は殿下の前を素通りして王宮からの派遣だがザボン公爵家と私の行動力に慣れ親しみ素早い対応をしてくれた護衛と共に(馬車は殿下の馬車に通せんぼされているので)馬に乗って出発した。


「待て、コラ!」


 殿下が叫んでいるが女子にはTPOがある。

 王家から定期的に支給されるドレスは宝石付きの礼服、お出かけ用のオシャレドレスは殿下の婚約者としての体面があるため同じドレスに袖を通せない。

 お貴族様ルールに従いリメイク中のドレスは仕上げが終わっていないので急なお出かけはお断り、殿下の急な都合に合わせることはできない。

 帰宅後、玄関先になぜか殿下がいた。


「ザボン公爵令嬢、貴女は弱者の立場を理解できる立派な女性だ……い、いつかの令嬢の無礼な助言も俺様はありがたく思っているからなッ」

「身に余るお言葉をいただき光栄に存じます、殿下」


 内心はツンデレ的な態度を見せる殿下に五体投地状態だが、20歳で聖女として再会する初恋のヒロインと愛を育む殿下の言葉は信用しないで聞き流しておいた。

 既に手遅れな殿下への恋心を抱く私は無駄に傷付きたくない、殿下を避けて現実逃避に走って何が悪い。

 私は聖女が王宮に滞在し始めると同時に戦わず領地に逃げると決めている、殿下や聖女から遠く離れた場所なら二人は愛を育むために私を巻き込んで、私の心を踏み躙りながら愛を深めることもできまい。

 一向に帰宅しようとしない殿下に笑顔を見せる。


「申し訳ございませんが我がザボン公爵家では事前に申し入れがない場合、夕食にご招待することはできかねます、理由はお察しくださいませ。殿下、御機嫌よう」


 私は使用人の夕食確保のため殿下を招き入れず玄関先で別れた。



 11歳の殿下の誕生日パーティーより四年間の内に殿下は許可もなく「ザボン公爵令嬢」呼びから「ルーレンディア」呼び、更に愛称である「ルー」呼びに変化させていった。

 今日、私は交通安全キャンペーンの許可証をもらうために王宮に来たのだが書類を受け取り、今後のタスクを脳内で確認しつつ歩いていると誰かから腕を掴まれてしまった。

 驚いて相手の顔を確認すると今、一番顔を合わせたくない人だった。


「殿下」

「ルー、なぜいつも名前で呼んでくれないんだ。婚約者なのだから俺様の愛称呼びを許可した筈だ」


 掴まれた腕にある殿下の手を外そうと手を伸ばすと、そんなに早く動かさなくてもいいのではないだろうか?という速さで手を外された。


「殿下、言いたいことがそれだけなのでしたら私は忙しいので失礼いたします」


 美は一日にしてならず。

 本末転倒な気もしたが、世界から愛されるヒロインと対峙するカウントダウンは始まっている、ヒロインが世界にデビューする瞬間でもバッチリ決めたい私は殿下の複雑怪奇な少年の心を無視した。


「なッ!これから大事な……ルーレンディア、無視するな、コラ!俺様の話を聞けッ!」


 背後で殿下は叫んでいるが、早急に侍女のエステを受けなければならない私には時間がない。

 ちなみに成長するにつれ美容やファッションの話も理解できるようになり母親との距離も縮まっている。

 それぞれ個々で過ごすのが貴族の家庭らしいので母親も自分と同じ境遇で育ち家族に対して寂しさを抱えていた女性(ひと)だった。

 似た境遇の者同士は仲良くなると早いのだ、今では「ママ」と「ルーレンディアちゃん」呼びである。

 現在の私は領地で稼げないため王宮での仕事一辺倒な父親以外の家族と仲良しになっている。


「ママ!私は恋敵に美貌を見せ付けに行かなくてはなりませんので神の手で美肌を創り出せる侍女をお貸し下さいッ!」


 我が家の使用人は執事兼お父様の侍従と侍女長兼針子、料理長、侍女兼美容員2人、護衛兼お兄様の従者兼下働き1人、護衛兼調理員兼下働き1人、農夫兼兵士8人という公爵家にあるまじき人数なせいで有能なのだ(悲しいかな置かれた状況から有能にならざるを得ない職場とも言えるのだが)。

 他に王宮より派遣されている私専属の護衛が2人いるが通いである。

 ちなみに元乳母の家庭教師は私に免許皆伝を言い渡し、教育を終えたので王宮に戻って王妃様に仕えることになったのだが、王妃様があまりにも無能なせいで仕事に追われ、たった半年で体調を崩したため秒で退職し、私が王籍に入らないと戻らないと宣言して、現在は療養している。

 なので私は今のザボン公爵領の領主代行が老齢になって引退したいという希望が出ているので有能な人材である元乳母にスローライフしないかと勧誘しようと思っている。


「まー、大変。アリースッ!ポーラーッ!」


 ママは古着ドレスを流行の最先端ドレスにするための内職(ママや私のドレスではない)をしていたが手は止めずに侍女を呼んでくれた。



「イタタタタタタッ!」


 ゴッドハンドマッサージ=激痛、骨格矯正もしてもらったので私の小顔が更に小顔へ、ウルルンもち肌がウルルン艶もち肌にグレードアップ。

 私は万全の美貌を整えて当日を迎えたがキャンペーン期間中は何も起こらなかった。


(骨折り損のくたびれ儲け……諦めるものですかッ!)


 私は屋敷に帰宅前、小説に描写されていたヒロインが通っていた下町の「こぢんまりとした神殿」を探すべく公爵家の子飼い達に命令を下した。

 子飼いとは、貴族屋敷を辞めた形(なんせ有能だからありとあらゆる職場から引く手あまた)にして市井に暮らしている元使用人で情報収集・世論誘導係である。

 お金はないが人望はあるザボン公爵家、無駄に家の歴史があるだけのことはあり塵も積もれば山となる状態の子飼い。

 ヒロインの名前や容姿は判明しているので情報はすぐに入ってきた。

 情報が入れば後は張り込みである、私は私の知らないところで奇跡を起こしたであろうヒロインが一番に相談に行くであろう下町にある神殿に安息日毎(ごと)に通うことにした。

 私は最早、ライフワークとなっている交通安全キャンペーンをしつつ恋敵と対峙すべく毎回、バッチリ決めて下町の神殿に赴いた。


 しかし現実とは虚しいもので、やっと会えたヒロインに原作ファンとして感動する暇もなく清らかな光をスポットライトのように浴び聖女爆誕の瞬間を目撃してしまった。

 茨の道決定だと号泣しながら乗り合い馬車と徒歩で帰宅して、涙が止まらないまま玄関の戸をくぐろうと通過すると誰かにガシッと腕を掴まれた。


「コラ、コラ、待てッ。この俺様を玄関先で二時間も待たせておいて無視か!」


 誰しもが思うように「殿下は応接室で待つか、帰宅すればよかったではないですか」と思ったが、そんな気力もないので溜め息と涙を零す。ハンカチを常に鼻に当てているので鼻水は垂れ流していない。


「今は躾のなっていない犬の相手は疲れているのでできません」

「ルーレンディアはチョクチョク、俺様に失礼だな。だが婚約者だから許してやろう、だから取り敢えず涙を止めろ」


 殿下にハンカチで涙を拭いてもらいながら言われると益々、涙が溢れてくる。


「チッ、追い付かないな」


 これからガンガン浮気をする設定がある婚約者が舌打ちしてきた。

 当然、殿下に対する怒りが込み上げてくる。


「金髪碧眼と見目麗しい顔だけが取り柄のお子様はいつになったら品を保てるようになるのですか?」

「言われなくても俺様が見目麗しいのは知っている。俺様が素を見せるのがルーなだけのことも知っているだろう。同い年の姉は要らない、いい加減に俺様の気持ちに気付いて黙れ。婚約者らしく二人でお茶の時間を作って欲しい、色々な方面から高評価を得ている婚約者を持つと他の誰かに盗られそうで俺様は胃が痛い」

「私、恋愛感情をかなり拗らせているようで幻聴が聞こえたようです。非常に疲れているせいか精神機能を崩壊させ肉体にまで影響が及んでいるようなので寝ることにいたします」

「俺様がここまで言っているのに聞き流すのか!リーゼから伝言だ「私の目的は殿下ではありません、その証拠に淡い初恋の思い出アイテムはどこにいったのか分からない状態です。私は崇高な精神を全く持ち合わせていないのでシンデレラストーリーに興味ないです。加えて尊き御方には使命が付き纏いますのでヒーローには近付きません、どころか御免です。私は我が儘でいつまでも少年気質を持って成長する男なんて恋愛対象外のため初恋ではありません!」だそうだ。勘違いの初恋は俺様とルーを引き裂く過去の過ちのため初めて会った時のルーに修正しているが聖女はルー以上に失礼な女だな、しかも言っている内容が意味不明だ」


 リーゼじゃなくてユニだが一言一句、理解した私は倒れた。

 記憶を取り戻した際は高熱に(うな)されなかったのだが、今回は今までに溜まりに溜まったストレスからか一週間も魘された。

 一週間後、私室に溢れたプレゼントと毎日お見舞いに来る殿下を見て殿下からの溺愛に気付いた。

 殿下のパズアドラ(愛称「パド」)という、ふざけた名前を呼んでやってもいいと少しだけ思った。


 殿下からの溺愛を受け15歳で王宮に囲われてしまった私は殿下のお守りや王妃様の補助として王宮勤め(バイト)をしている。

 未成年のため簡単な仕事程度だが殿下が事ある毎に私に構ってくるため確実に将来の王妃に決定してしまった。

 そのせいで文官達から現在の王妃様の二の舞は御免だと否応なしに仕事を教え込まれている。

 私は王宮に行くに当たり、元乳母に再就職の是非を問うたが元乳母は「スローライフの方がいい」と断わられた。

 領地の運営を任せているため元乳母にお茶の木だけではなく痩せた土地でも育つ植物を数種類、贈る約束を取り付けられた。

 元乳母は私の給料を搾取する気でいるらしい、変らず有能で頼もしい。


 ちなみに、王宮で仕事をさせられるようになったので父親と打ち解けた。

 王妃様と違って私の仕事の理解力の早さと応用力が父に刺さったらしい、父は今では過保護な父親にジョブチェンジして有力貴族共を洗脳しつつ殿下を私の側から排除しようとしている……することが何もかも遅いお父様だ。


 18歳になった私は王妃様の補助として本格的に文官として働いている。

 小説の中で殿下の心強い味方だった美形なジアリウム侯爵は現在、宗教に熱心なオジサンでしかないので大神官にしょっちゅう会いに行っている。

 今の殿下の頼れる側近達は小説で政敵だった人達だ。

 流石に国を相手に喧嘩する悪役だけあって有能だ、見た目は残念な人達だが政治手腕は信用できるし、上昇志向が強いので餌さえ与えておけば飼いやすい。



王太子君は元日本人として呼ぶのを少し躊躇うような名前にしたいと思い命名、迷いましたが名前と愛称に「○ズドラ」を採用するのは自重しました

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