私は貴方の婚約者
その日はアビスから話しかけてくれた。
「お前か」
「オマエじゃないよ、「バニー」って呼んでッ。今日もカッコイイね、大好き♡」
アビスは私の頭からつま先まで見てから聖騎士見習い達の訓練場の方へ歩き出した。
私はモチロン、アビスを追いかけたんだけど、アビスはやっぱり速く歩くから私は遅れて聖騎士見習い達の訓練場に到着しちゃった。
「アビスは~……?」
キョロキョロしてアビスを探してもアビスを見つけられなかった。
(これから訓練なのに点呼の時にいないと聖騎士見習いから外されちゃうのに)
そう思ったけど、別に聖騎士見習いを辞めても二人で働きながら一緒に暮らせばいいだけだと気付いた。
私はアビスを探しに行こうとして訓練場を抜け出そうとしたんだけど、間の悪いことにちょうど教官が来たので訓練の列に並ぶハメになっちゃった。
すぐに点呼になって教官が名簿を持った。
「アビス・エトラ」
「はい」
(アレ?アビスがいた。モ~、もう列に並んじゃったよ~)
点呼が終わるとすぐに敬礼や行進なんかの基本教練に入っちゃうからアビスの近くに移動できないよ~。
アビスが気になってソワソワしながら訓練を受けてたから教官に何度も注意されちゃったよ、目線は合わなかったけどアビスは私を気にしてくれている筈だから休憩時間になったらすぐに来てくれるよね。
それなのに休憩時間に私を囲んできたのは貴族出身の娘達、三人だった。
「ちょっとバニー、エトラさんに迷惑がられてるって分からないの?」
三人の中で一番背が高くて茶色い髪を短髪にしている女が言ってきた。
「アンタ達よりは迷惑がられてないよ」
私は群れないと何も言えないような女じゃないから事実を告げてやった。
「何ですってッ!」
三人の真ん中にいて偉そうにしている、長い髪を三つ編みにして高い位置で纏めている女が怒っているから私が言ったことを本人も感じていたんだろう。
「相手にすることないわよロレッタ、バニーなんて同じ遊牧民ってだけじゃない」
短髪の女と反対側にいる馬の尻尾みたいな髪形の女が言った。
「ロレッタはエト族と親しかったダキャー侯爵家の領地を管理していた子爵家なんだから」
短髪の女に言われて真ん中の女が顎を上げたから益々、偉そうだ。
「ソレってぇ~、顔見知りなだけじゃな~い?」
顎に人差し指を当てて首を傾げながら言ってあげた、そうしてあげるとバカにしてるって分かってくれるも~ん。
「バニーこそ、そうじゃないの」
「アハッ、一緒にしないでよ~、私はアト族の姫だからアビスが小さい頃から知ってるし、結婚の話もあったんだから」
何も言えなくなった娘達を無視してアビスの元に行こうとしたけど休憩時間が終わっちゃった。
ホント、せっかくの休憩時間だったのに無駄な時間だった~!
でも、この後に食堂に行ってもなぜかアビスと一緒にならなかった。
私とアビスはいつも一緒だったのに聖騎士見習いの鍛錬場にもいないし、訓練の休憩時間の時も食堂にも姿を見かけなくなっちゃった。
(きっと、あの貴族出身の娘達が私とアビスの邪魔してるんだ、性格ワル~イ!)
私はアビスと10日も会えないままだったから落ち込んでた。
(アビスは私と会えなくて平気なの~?)
「エトラってもう聖騎士見習いから正式に聖騎士になったって」
「まだ半年なのにエト族だけあるよな」
聖騎士見習いの訓練場でくさった気分でいたところにそんな声が聞こえてきた。
きっとアビスは私と再会できたから私と早く結婚するために聖騎士に上がってくれたんだ。
くさった気持ちなんて一気に吹き飛んだ。
(私も見習いじゃなくて正式に聖騎士にならなきゃ!)
守られる女なんてゴメンだよアビス、どこまでも一緒がいいもんッ♡
°︵‿︵࿔.♡.࿔︵‿︵°
ちょっと作者様、どういうことなの?アビたんの過去があんなにも過酷だったなんて知らなかったよ、原作でアビたんの手首に縄をかけて処刑場に向かう後ろ姿で退場させてないで、少しは過去を語らせてユニとLoveを育ませなさいよ、アビたんが不憫だよッ!
「(もうッ、怠慢!それに、アビたんとのスピンオフがないのってあり得ないんですけどーッ。神様もッ!むしろアビたんとのスピンオフで聖女として覚醒させるべきじゃない!)」
「聖女様、いかがされましたか?」
イケナイ、イケナイ、声に出しちゃってた。
幸い声が小さかったから聞こえなかったみたいだけど、聖女としての式典用の法衣の採寸中だった。
「胸回りは余裕をもって作っておいてください」
「承知しています、聖女様をそういう対象に見られてはいけませんからね」
神女から言われたが、私はアビスに恋する乙女だから式典の時にはジャストサイズになってると思う。
その後も小帯とか祭服の刺繍の図案を選んでいった。
大神官や統括の神官長は階級があるから小帯の色も決まってるけど、聖女は階級から外れてる特別枠だから好きな色を選んでいいことになってる。
だから当然、アビスの髪色である銀色と瞳の色である濃い青を選ぼうと思う。
(アビたんは自分の瞳の色だって気付くかな♡)
濃い青の小帯をナデナデしながらアビスに想いを馳せていたけど、ツインテール女についてアビスに聞いてもちゃんと答えてくれなかったから今回は自分の眼の色な空色にしようか……でも、あのツインテ女のことを自分で調べた結果、アビスと無関係だった。
アビスのエト族は遊牧民の中で一番、力を持っていたから利用したいって考える部族も多くて、ツインテ女のアト族だけじゃなくラテ族もヨロ族も何かと理由をつけてエト族の部族長と対面していた。
ツインテ女はアビスのことが好きそうだが、アビスの方はツインテ女なんて当時から認識していないだろう。
だってアビスがツインテ女を見初めたならアト族が滅んでもツインテ女はアビスの女になっている筈だ、でも現実はそうなっていない。
「(アビたんもちゃんとツインテ女を避けてくれてるし)……小帯はこちらの濃い青色にします」
「いいですね、祭服は白地に銀色の刺繍ですから映えると思われます」
今日はアビたんを起こさないで、いつもの回復と聖騎士としての成長を促すための魔法をかけてあげよう。
一番下の使い走りでも正式に聖騎士になれば私が住んでる聖女区域のある中央棟に移れるから、たまたまを装ってアビスに会うことだってできるだろう。
夜、アビスの頭をナデナデしようと手を伸ばしたんだけど、ぐっすり眠っていた筈なのにアビスに腕を掴まれた。
「せ、せ、せ聖女様ッ?!」
「アビたん、グッスリ寝なきゃ疲れが取れないよ、メッ」
アビスの額を押してアビスを眠らせてから回復と成長補助の魔法をかけた。
「もう誰もアビたんの命を奪いにこないから安心していいんだよ」
声をかけると、眉間に皺を寄せながら眠っていたアビたんの顔が緩んだ。
小さなアビたんが夢の中で私とのスピンオフを楽しんでるといいなぁ……と思いながら私はアビたんの頬におやすみのキスをしてから聖女区域にある自分の寝室に戻った。




