第34話「交錯、認識」
18:43。
敵の巨体が、腕を振り下ろす。
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空気が潰れる。
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遅れて。
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超高層ビル群の窓ガラスが、一斉に砕けた。
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轟音。
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悲鳴。
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湾岸道路を走っていた車両が横転する。
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だが。
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ビッグサイロは動く。
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人類側の巨人。
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白い装甲線を発光させながら、前へ出る。
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その瞬間。
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見る者によって、戦闘が変わった。
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永山豪太。
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「避けろぉぉぉ!!」
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彼には。
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巨大スーパーロボット同士の激突に見えていた。
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重装甲。
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巨大な拳。
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火花。
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昭和特撮めいた爆炎。
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富野コウ。
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(右肩、損傷予測——)
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彼には。
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超巨大機動兵器戦に見えていた。
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慣性制御。
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姿勢補正。
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推力偏向。
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都市防衛戦術。
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上松さやか。
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「……そこ、見せ場になる」
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彼女には。
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巨大ライブ演出に見えていた。
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光。
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残光。
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空間そのものがステージ化していく。
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五十嵐勇希。
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彼の視界には。
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無数のUI。
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予測ライン。
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選択肢。
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■回避 ■迎撃 ■受け流す
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戦闘ではない。
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“分岐”。
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その認識。
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その全部が。
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同時に、ビッグサイロへ入力される。
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18:44。
敵の巨体が咆哮する。
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空が歪む。
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黒い衝撃波。
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湾岸上空の雲が、一瞬で消し飛ぶ。
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報道ヘリの映像が乱れる。
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『うわっ!!』
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『映像死ぬ!!』
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『ノイズが——!!』
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その時。
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ビッグサイロが、右腕を振るう。
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世界中が、違うものを見る。
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拳。
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剣。
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光。
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ビーム。
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ミサイルチョップ。
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だが。
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結果だけは、一つ。
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敵の巨体の左肩が、吹き飛ぶ。
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遅れて。
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上空で爆炎。
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雲が裂ける。
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衝撃波が海面を叩く。
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SNS。
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『今何した!?』
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『パンチ!?』
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『剣だったろ!!』
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『いやビーム!!』
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『編集じゃないよな!?』
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認識が一致しない。
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だが。
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“人類側が押し返した”。
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その結果だけは、完全に共有されていた。
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地下監視室。
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研究員が叫ぶ。
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「認識差異許容範囲、突破!!」
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「戦闘描写が観測者ごとに分裂しています!!」
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富野が画面を見る。
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「……それで成立するのか」
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チーフは静かに答える。
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「現実じゃない」
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小さな声。
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「“認識”で戦ってる」
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その瞬間。
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敵の巨体が、初めて後退する。
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世界中が息を呑む。
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効いている。
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人類側の巨人が。
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あの存在を。
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押し返している。
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だが。
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次の瞬間。
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敵の背後空間が、ゆっくりと開いた。
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黒い穴。
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違う。
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“観客席”だった。
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無数の赤い眼が、奥で光る。
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チーフの顔色が変わる。
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「……第二波か」
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続く。




