第32話「対峙、巨影」
18:37。
ビッグサイロが、上を向く。
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その瞬間。
世界中の視線が、一点へ集まった。
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東京湾岸。
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巨大施設。
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変形途中の白い構造体。
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だが。
見る者によって姿が違う。
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報道ヘリのカメラマンは、叫んでいた。
「完全にスーパーロボだろこれ!!」
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海外配信者。
「NO NO NO」
「MILITARY TYPE!!」
「THIS IS REAL WEAPON!!」
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SNS。
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『勇者ロボじゃん!!』
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『いやリアル系だろ!?』
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『騎士っぽい!!』
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『アイドル形態に見えるんだけど!?』
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認識が一致しない。
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だが。
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“人類側の巨大存在”。
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その意味だけは、完全に共有されていた。
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18:38。
ビッグサイロ中央部。
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白い装甲が展開する。
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内部フレームがせり上がる。
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巨大な腕。
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肩部。
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頭部。
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形成。
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会場内部。
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勇希は、揺れる床へ立っていた。
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観客達は、巨大空間の中で上を見上げている。
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もうライブ会場ではない。
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操縦席。
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巨大な共有認識空間。
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観客全員の端末が、一斉に発光する。
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SYNC COMPLETE
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その表示と同時に。
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勇希の視界へ、“選択肢”が浮かぶ。
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■迎撃 ■防御 ■観測
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「……またかよ」
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周囲を見る。
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他の観客達も、何かを見ていた。
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だが。
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反応が違う。
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誰かは拳を握る。
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誰かは祈る。
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誰かは泣いている。
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入力されている。
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無意識に。
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世界中の認識が。
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ビッグサイロへ。
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地下監視室。
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研究員が叫ぶ。
「認識流入、止まりません!!」
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「世界側観測数が増え続けています!!」
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モニター。
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日本。
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アメリカ。
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EU。
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中国。
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中東。
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南米。
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世界中の脳波同期ラインが、東京湾岸へ集中していく。
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富野が低く呟く。
「……兵器じゃない」
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チーフは静かに答える。
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「最初から、“集団認識増幅装置”だ」
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18:39。
上空。
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赤黒い巨大存在が、ゆっくり腕を開く。
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空が歪む。
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遅れて。
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雲が裂ける。
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その中心。
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黒い穴。
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いや。
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“舞台”だった。
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世界中の誰かが、呟く。
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「降りてくる……!」
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その認識。
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その瞬間。
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巨大存在が、落下を開始した。
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重力ではない。
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“そういう演出”として。
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東京湾岸へ。
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真っ直ぐ。
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報道ヘリが逃げる。
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警察無線。
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避難警報。
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だが。
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誰も画面から目を逸らせない。
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その瞬間。
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ビッグサイロ内部。
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巨大な“心拍音”が響く。
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ドクン。
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会場全体が揺れる。
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ドクン。
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勇希の端末が白く発光する。
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ドクン。
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観客達の歓声と脳波が、一つへ重なる。
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そして。
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ビッグサイロの右腕が、初めて動いた。
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世界中が息を呑む。
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富野には。
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巨大火器を備えた軍用機動兵器に見えた。
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永山には。
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正義のスーパーロボットに見えた。
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さやかには。
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光のステージ装置に見えた。
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勇希には。
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巨大な選択肢そのものに見えた。
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だが。
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結果だけは、一つだった。
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人類側の巨人が。
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敵へ向かって、立ち上がる。
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続く。




