↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビッグサイロ・プロトコル  作者: 山田の
PR
31/37

第31話「変形、開始」

18:32。


地下監視室。


警告音は、もう鳴っていなかった。


代わりに。


低い駆動音だけが空間へ響いている。


ビッグサイロ全体が、脈動していた。


富野はモニターを見続けている。


世界同時配信。


海外ニュース。


SNS。


全部が、同じ空を映していた。


東京湾岸上空。


赤黒い巨大存在。


世界中で、既に“現実”として扱われ始めている。


その時。


チーフの個人端末が震えた。


着信。


非通知。


だが、声で分かる。


『……お前、本当に流したのか』


白髪交じりの男だった。


背後では怒号が飛び交っている。


官邸側の混乱。


回線越しでも伝わってきた。


チーフはモニターを見たまま答える。


「もう隠せん」


『CIAが動いた』


『EUも映像解析へ入ってる』


『中国側も衛星を回した』


『全部、お前の動画経由だ』


富野の表情が固まる。


チーフは冷めたコーヒーを口へ運ぶ。


もう味はしなかった。


『鳥羽宏に、どこまで渡した』


数秒の沈黙。


チーフは静かに言う。


「観測記録全部だ」


電話の向こうで息が止まる。


『……お前な』


責める声ではない。


呆れ。


理解。


諦め。


全部が混ざっていた。


チーフは低く続ける。


「どうせ消される」


「なら、一度くらい世界へ残す」


長い沈黙。


その直後。


監視室全体が、大きく揺れた。



---


18:34。


会場上空。


巨大存在が、腕を動かす。


ゆっくり。


だが。


空そのものが押し潰されるみたいに、雲が歪む。


報道ヘリが悲鳴みたいなノイズを吐く。


『高度維持!』


『近づきすぎるな!!』


カメラがズームする。


赤黒い外殻。


王冠のような頭部。


巨大な肩。


背後へ広がる“何か”。


翼。


煙。


マント。


見るたび形が変わる。


だが。


“敵”という意味だけは、完全に固定されていた。



---


SNS。


コメント欄。


世界中の投稿が流れ続ける。


『MOVE』


『IT MOVED』


『OH GOD』


『RUN』


『GIANT DEMON』



---


その時。


東京湾岸全域が停電する。



---


18:35。


光が消える。


ビル群。


道路。


観覧車。


広告モニター。


全部。


一瞬で暗闇へ沈む。


悲鳴。


ざわめき。


車のクラクション。


だが。


ComicMall会場だけは違った。



---


ビッグサイロ。



---


白い外壁のラインが、ゆっくり発光していく。


一本。


また一本。


巨大な発光線が、施設全域を走る。


富野が息を呑む。


「……始まる」


モニター中央。



---


■COUNTER IMAGE LOADING



---


研究員が叫ぶ。


「内部構造、再編開始!!」


「施設全体が変形しています!!」



---


会場。


勇希は揺れる床へ踏ん張る。


観客達が悲鳴を上げる。


だが。


逃げない。


逃げられない。


全員が、“見てしまっている”。


床が動く。


壁面が展開する。


照明塔が上昇する。


客席が、回転する。


まるで巨大な機械内部みたいに。



---


18:36。


ビッグサイロ外壁。


巨大な亀裂が走る。


違う。


開いている。


白い装甲が、左右へ分割される。


内部。


黒い巨大フレーム。


無数の駆動骨格。


光。


蒸気。


熱。


世界中の配信が、その瞬間を映していた。



---


『THE BUILDING IS OPENING』


『TRANSFORMING!?』


『GIANT ROBOT!!』


『NO WAY』



---


地下監視室。


富野が画面を見る。


表示が切り替わる。



---


■MAIN FRAME RECOGNITION START



---


その瞬間。


富野の視界が揺れた。


一瞬だけ。


ビッグサイロが別の形へ見える。


量産型兵器。


重装甲。


無骨な頭部。


現実的な関節。


ミリタリー色の強い巨大機動兵器。


富野は息を止める。


(……見えてる)


だが。


隣の研究員は違うものを見ていた。


勇者型。


騎士。


光の巨人。


全員、反応が違う。


なのに。


モニター上の質量数値だけは一致している。


チーフが低く言う。


「観測者ごとに、対抗イメージが違う」


「だが、“戦う存在”という意味だけ共有される」



---


18:37。


上空。


赤黒い巨大存在が、ゆっくり腕を持ち上げる。


その動きだけで、空気が震える。


東京全体へ影が落ちる。


そして。


初めて。


ビッグサイロが、上を向いた。



---


続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。