第25話「開演、熱狂」
午後六時。
ComicMallメインステージ。
照明が落ちる。
数秒の暗転。
その瞬間。
会場全体の歓声が、 一つの波みたいに重なった。
巨大モニターが点灯する。
白。
青。
赤。
高速で切り替わる映像。
電子音。
カウントダウン。
観客達が、一斉にペンライトを掲げる。
「5!」
「4!」
「3!」
「2!」
「1!!」
爆音。
火花。
光。
ステージ中央が開く。
2.5次元アイドルユニットが、 光の中から現れる。
歓声が爆発する。
まるで地面そのものが震えたみたいだった。
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勇希は、思わず息を呑む。
(……凄)
会場全体が熱を持っている。
知らない人間同士なのに。
全員の感情が、 同じ方向へ流れていた。
ペンライト。
歓声。
コール。
手拍子。
全部が揃っている。
揃いすぎている。
腕の端末が、 また震えた。
ブルッ。
勇希は視線だけ落とす。
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SYNC RATE : 31%
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「……上がりすぎだろ」
誰にも聞こえない声。
だが。
その瞬間。
周囲の観客が、 まるで同じタイミングで笑った。
ゾワッ。
背筋が冷える。
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ステージ裏。
さやかはモニター越しに観客を見ていた。
異常な盛り上がり。
予定を超えている。
同接数。
海外配信。
リアクション。
全部が過去最高。
だが。
スタッフ達のテンションとは逆に、 さやかの表情は硬い。
「SYNC RATEは」
隣のスタッフが即答する。
「現在38%です!」
「安全域です!」
安全。
その言葉が妙に引っかかった。
モニターの向こう。
数万人の観客が、 同じタイミングでペンライトを振る。
その動きが。
まるで、一つの巨大生物みたいに見えた。
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地下監視室。
警告音。
数値が跳ね上がる。
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SYNC RATE : 42%
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研究員が顔色を変える。
「上昇速度が異常です!」
「海外同時視聴側と波形リンクしています!」
「は?」
政府職員が振り返る。
「海外まで同期してるのか!?」
「配信経由です!」
チーフは黙ったまま、 波形を見ている。
画面上の数値が、 人間の脳波とは思えない挙動を始めていた。
会場。
配信。
SNS。
コメント欄。
全てが、一つの巨大な波形へ収束している。
その時。
モニターの片隅に、 新しい表示が現れる。
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UNDEFINED IMAGE DETECTED
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空気が止まる。
研究員の声が震える。
「……生成、始まります」
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ステージ。
ライブは最高潮へ入っていた。
センターのアイドルが、 サビへ入る。
観客全員が叫ぶ。
ジャンプ。
熱狂。
光。
その瞬間だった。
大型モニターの映像が、 一瞬だけズレる。
ノイズ。
歌声が、 半拍だけ遅れる。
観客達がざわつく。
だが演者達は止まらない。
いや。
止まれない。
照明が暴走したみたいに点滅する。
赤。
白。
黒。
そして。
ステージ後方の巨大LEDへ、 “何か”が映る。
最初は輪郭だけだった。
人型。
だが、形が定まらない。
見るたび違う。
少女。
騎士。
怪物。
アイドル。
ロボット。
全部が混ざる。
観客達の歓声が、 一瞬だけ止まる。
その静寂の中。
誰かが呟いた。
「……なんだ、あれ」
その言葉。
その認識。
その瞬間。
“形”が固定される。
巨大スクリーンの奥から。
“それ”が、こちらを見た。
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SYNC RATE : 51%
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警告音が鳴り響く。
地下監視室。
研究員が叫ぶ。
「五十超えました!!」
「現実境界、維持できません!」
チーフが立ち上がる。
その顔から、 初めて余裕が消えていた。
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ステージ上。
巨大スクリーンが、 内側から膨らむ。
映像じゃない。
“向こう側”に何かいる。
観客のスマホが、 一斉に震える。
画面へ、 赤い文字。
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CONNECT ACCEPTED
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次の瞬間。
スクリーンが、 破裂した。
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続く。




