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ビッグサイロ・プロトコル  作者: 山田の
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23/27

第23話「配信、熱気」

コミックMall開催一週間前。


湾岸地区は、 異様な熱気に包まれていた。


ビッグサイロ周辺では、 巨大広告の設営が続いている。


海外企業ブース。


大型LED。


配信機材。


仮設ステージ。


工事音。


ライト調整。


スタッフ達が慌ただしく走り回る。


その光景を、 さやかは楽屋モニター越しに見ていた。


「……規模デカすぎでしょ」


隣のメイクスタッフが笑う。


「今年ヤバいですよ」


「海外同接かなり行くらしいです」


「政府案件も入ってるし」


さやかは苦笑する。


一年前。


ここは地獄みたいな空気だった。


炎上。


中止。


スポンサー撤退。


SNSは毎日荒れていた。


だが今は違う。


“復活”。


その言葉が、 どこへ行っても並んでいた。


「さやかさん、台本確認お願いします」


スタッフからタブレットを渡される。


そこには:



---


【コミックMall応援特番】


【日本サブカルチャーの未来】



---


というタイトル。


さやかは小さく息を吐く。


「未来、ねぇ……」


タブレットをスクロールする。


出演者一覧。


海外配信者。


コスプレイヤー。


評論家。


政治家。


企業代表。


まるで国家イベントだった。


その時。


楽屋テレビからニュース音声が流れる。



---


『コミックMall開催まで残り七日——』


『海外配信契約数は過去最大を記録——』


『政府関係者は“日本文化復活の象徴”とコメントしています——』



---


スタッフ達は盛り上がっていた。


「これ成功したら歴史変わりますよ」


「日本また勝てるって感じ」


「オタク文化最強っすね」


さやかは曖昧に笑う。


その言葉に、 なぜか少し寒気がした。


楽屋の隅。


未開封の箱が積まれている。


その一つへ、 視線が止まる。


白いケース。


管理ラベル。



---


【来場者サポートデバイス】



---


さやかは眉をひそめる。


「これ何?」


スタッフが答える。


「あー、今年の新システムです」


「出演者も全員装着らしいですよ」


「健康管理とか導線制御とか」


「海外客向け翻訳もできるみたいで」


便利機能の説明。


だが。


箱を見た瞬間。


さやかの胸が妙にざわついた。


「……開けた?」


「いや、まだです」


「当日スタッフが配るって」


その時だった。


楽屋モニターが一瞬だけ乱れる。


ザザッ——。


ノイズ。


映像が止まる。


誰も気づかない。


さやかだけが顔を上げた。


モニター画面。


一瞬だけ。


黒いフレーム。


赤い文字。



---


> SYNC CHECK





---


次の瞬間。


普通の番組映像へ戻る。


「……え?」


「どうしました?」


スタッフが振り返る。


「いや……今」


だが誰も反応していない。


空調音。


スタッフの笑い声。


遠くの工事音。


全部普通だった。


さやかは無意識に腕をさする。


寒かった。


その時。


楽屋入口の扉が開く。


スーツ姿の男達。


政府関係者パス。


一瞬だけ空気が変わる。


スタッフ全員が姿勢を正した。


男の一人が笑顔で言う。


「本日はご協力ありがとうございます」


「日本文化の未来を、ぜひ世界へ」


その笑顔だけが、 妙に作り物みたいだった。


さやかは何も言わない。


ただ。


モニター画面の隅へ、 まだ微かに赤い残像が残っている気がした。



---


> SYNC CHECK





---


消えない。


まるで。


何かが、 開始確認をしているみたいに。

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