表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビッグサイロ・プロトコル  作者: 山田の
PR
22/26

第22話「再開、同期」

五月。


一年ぶりに、ビッグサイロは営業を再開した。


国内外SNSで騒がれた一連の事故。


動画拡散。


陰謀論。


閉鎖要求。


それらは完全には消えていない。


だが時間は、人の熱を薄めていく。


そして政府は動いた。


“安全宣言”。


“新型監視体制”。


“最新セキュリティ導入”。


さらに。


日本サブカルチャー復興政策。


海外メディア招致。


大型配信契約。


コミックMallは、 「日本復活の象徴」として再始動する。


勇希は、そのニュースをスマホで見ていた。


大学の食堂。


昼休み。


周囲では同じ話題で盛り上がっている。


「マジで行く?」


「海外コスプレイヤー来るらしいぞ」


「限定グッズやばいって」


「去年中止だったしな」


勇希は黙って画面を見る。


コミックMall開催告知。


巨大なビッグサイロ。


派手なLED演出。


笑顔の参加者達。


まるで何も無かったみたいだった。


「……すげぇな」


隣の友人が言う。


「行くんだろ?」


勇希は少し迷う。


去年の事故映像。


あの日の異様な空気。


脳裏をよぎる。


だが。


それ以上に。


“戻ってきた”


という感覚が強かった。


「……まぁ、一応」


友人は笑う。


「お前オタクだもんな」


「うるせぇ」


軽口。


普通の空気。


その時。


スマホ通知が鳴る。



---


【コミックMall事前登録完了】


【入場用デバイスは当日配布されます】



---


勇希は眉をひそめる。


「デバイス?」


友人が覗き込む。


「あー、あれだろ」


「支払いとか会場連動するやつ」


「海外イベントで最近あるじゃん」


勇希は画面をスクロールする。



---


【次世代イベントサポートデバイス】


【混雑緩和・健康管理・キャッシュレス決済対応】



---


紹介動画が流れる。


腕時計型端末。


笑顔の来場者。


リアルタイムマップ。


翻訳支援。


迷子検知。


便利機能ばかり並んでいる。


「すげぇ時代」


友人は笑う。


勇希も小さく笑った。


だが。


動画の最後。


ほんの一瞬だけ。


画面へノイズが走った。


ザッ——。


勇希は止まる。


「……ん?」


「どうした?」


「いや」


気のせいだった。


もう一度再生しても、何も起きない。


友人は立ち上がる。


「午後講義やべ」


「あー……」


周囲のざわめき。


椅子の音。


食器の音。


いつもの大学。


勇希はスマホを閉じる。


その時だった。


食堂テレビのニュースが耳へ入る。



---


『コミックMall開催まで残り二週間——』


『海外来場者数は過去最大規模になる見通しです——』


『主催側は最新安全システム導入を発表——』



---


テレビには、 海外コスプレイヤー達の映像が流れている。


笑顔。


歓声。


色鮮やかな衣装。


周囲の学生達も盛り上がる。


「めっちゃ楽しそうじゃん」


「今年過去一らしいぞ」


「絶対人ヤバいだろ」


勇希はその映像を見る。


確かに楽しそうだった。


去年までの不穏さなんて、 もう誰も覚えていないみたいだった。


その時。


スマホ画面が一瞬だけ暗転した。


黒い画面。


そこへ。


赤い文字。



---


> SYNC READY





---


「……っ」


勇希は反射的にスマホを落としかける。


だが次の瞬間には戻っていた。


普通のホーム画面。


通知も無い。


「何だ今の……」


誰も見ていない。


周囲は普通だった。


勇希はゆっくりスマホを握る。


妙に冷たかった。


窓の外では、 巨大なビッグサイロが遠くに見えていた。


まるで。


何かを待っているみたいに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ