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ビッグサイロ・プロトコル  作者: 山田の
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12/26

第12話「選択、終幕」

光が、満ちる。


---


旋律が、空間を満たしている。


---


上松さやかは、動きを止めない。


---


ビッグサイロが舞う。


---


回転。


---


上昇。


---


残光が、空に軌跡を描く。


---


観客はいない。


---


音もない。


---


それでも——


---


“成立している”。


---


(……ここまでは、作れた)


---


だが。


---


異形は、まだ崩れない。


---


正面。


---


左右に分かれた顔。


---


少女が笑う。


---


男が睨む。


---


固定されたはずの境界が、再び揺らぎ始める。


---


四本の腕が広がる。


---


血が噴き出す。


---


刃となり、鎖となり、空間を埋める。


---


“終わっていない”。


---


さやかは息を整える。


---


(足りない……)


---


演出は完成している。


---


流れもある。


---


だが——


---


“決め手がない”。


---


そのとき。


---


空間が、わずかに静止する。


---


光が止まる。


---


旋律が、一瞬だけ途切れる。


---


そして。


---


“それ”が現れる。


---


文字。


---


空間全体に、浮かぶ。


---


「あなたは、どれを望む?」


---


さやかの視界だけじゃない。


---


地下。


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避難シェルター。


---


観客たちの“意識の中”にも、同じものが浮かんでいる。


---


誰も声を出していない。


---


だが、見えている。


---


選択肢。


---


・彼女を救う

・彼女を否定する

・彼女を終わらせる


---


「……来た」


---


さやかは小さく呟く。


---


(これが、最後)


---


迷いはない。


---


だが、すぐには選ばない。


---


視線を上げる。


---


異形。


---


少女の顔が、こちらを見る。


---


ほんの一瞬だけ。


---


“何かを待っている”ように。


---


(……そういうことね)


---


理解する。


---


これは戦闘じゃない。


---


“エンディング分岐”。


---


なら。


---


「……ちゃんと、終わらせる」


---


静かに言う。


---


その言葉は、誰にも聞こえていない。


---


だが確かに、空間に届く。


---


さやかは、選ぶ。


---


「彼女を終わらせる」


---


その瞬間。


---


光が収束する。


---


旋律が一つにまとまる。


---


ビッグサイロが、ゆっくりと手を伸ばす。


---


攻撃ではない。


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触れるための動き。


---


異形が動かない。


---


逃げない。


---


少女の顔が、微かに笑う。


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ビッグサイロの手が、触れる。


---


その瞬間。


---


崩壊が始まる。


---


爆発ではない。


---


破壊でもない。


---


“幕が降りる”。


---


血が光に変わる。


---


刃が音符になる。


---


鎖が、線となってほどけていく。


---


少女の顔が消える。


---


男の顔が消える。


---


境界が、意味を失う。


---


最後に残ったのは——


---


“形になりきれなかった何か”。


---


それも、ゆっくりと消えていく。


---


静寂。


---


光が消える。


---


旋律が止まる。


---


空間が、元に戻る。


---


何もなかったかのように。


---


■管制室


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「……消えた」


---


誰かが呟く。


---


モニターには、何も映っていない。


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数値も、ゼロ。


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ログも、存在しない。


---


「撃破……じゃない」


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別の声。


---


「終了……?」


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誰も断言できない。


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チーフは画面を見つめたまま、動かない。


---


数秒の沈黙。


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そして、低く言う。


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「……記録は残すな」


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「残せないだろうがな」


---


自嘲気味に、付け加える。


---


画面の片隅。


---


一瞬だけ、波形が揺れる。


---


すぐに消える。


---


まるで——


---


“拍手”のように。


---


■地下シェルター


---


人々は、何も知らない。


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ただ。


---


ほんの一瞬だけ。


---


同じ感覚を共有していた。


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理由は分からない。


---


記憶も残らない。


---


それでも。


---


誰かが、小さく呟く。


---


「……良かった」


---


その言葉は、誰にも届かない。


---


だが確かに。


---


“終わった”。


---


■操縦室


---


さやかは、静かに息を吐く。


---


視界が戻る。


---


椅子。


---


何もない空間。


---


「……はぁ」


---


肩の力が抜ける。


---


(今の……)


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現実感がない。


---


だが。


---


確かな感覚だけが残っている。


---


“終わらせた”。


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それだけ。


---


そのとき。


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視界の端に、文字が浮かぶ。


---


『公演終了』


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「……は?」


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思わず声が漏れる。


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次の瞬間。


---


それは、消えた。


---


何もなかったかのように。


---


静寂。


---


だが。


---


確かに、何かが残っていた。


---


“次”を予感させる、微かな気配。


---


上松さやかは、ゆっくりと立ち上がる。


---


戦いは終わった。


---


だが——


---


物語は、まだ続いている。


---


続く。

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