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ビッグサイロ・プロトコル  作者: 山田の
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11/26

第11話「共鳴、発動」

光が、走る。


---


理由は分からない。


---


音もない。


---


だが確かに、“始まっている”。


---


上松さやかは、息を整える。


---


(……これ、戦闘じゃない)


---


目の前の異形。


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少女と、男の顔。


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交互に揺れる。


---


定まらない。


---


四本の腕。


---


血が流れ、空中で形を変える。


---


刃。


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鎖。


---


武器。


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だがそれらも、完全には固定されていない。


---


(まだ“決まってない”)


---


さやかは直感する。


---


なら——


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「見せ方で、決める」


---


小さく呟く。


---


ビッグサイロが動く。


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ゆっくりと、一歩。


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地面を踏む。


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重い。


---


だが。


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次の動きは、違った。


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軽い。


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跳ぶ。


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空中へ。


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「……え?」


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自分で驚く。


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理由がない。


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推進もない。


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それでも——成立している。


---


(……いい)


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理解する。


---


「これ、“そういう演出”でいいんだ」


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ビッグサイロの背に、光が広がる。


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羽のように。


---


意味はない。


---


だが——“見える”。


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それで十分だった。


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異形が反応する。


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血が噴き出す。


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空中で束ねられ、刃となる。


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飛ぶ。


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一直線。


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さやかは、動かない。


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視線だけを向ける。


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その瞬間。


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音符が生まれる。


---


光の粒。


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回転しながら、前に出る。


---


触れた瞬間。


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血の刃が、弾ける。


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「……いける」


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確信。


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次の瞬間。


---


ビッグサイロが“ポーズ”を取る。


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片手を差し出す。


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もう片方を引く。


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構図。


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決め。


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そして——


---


放つ。


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音符が連なる。


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旋律になる。


---


軌道ではない。


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“流れ”。


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それがそのまま、異形へと流れ込む。


---


命中。


---


揺れる。


---


顔が、ぶれる。


---


少女。


---


男。


---


境界が、歪む。


---


「……まだ足りない」


---


さやかは静かに言う。


---


(観られてる)


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確信があった。


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地下。


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避難したはずの観客。


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その“どこか”で。


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同じ光景が、共有されている。


---


音はない。


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だが——


---


“ライブになっている”。


---


(なら)


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「もっと、見せる」


---


ビッグサイロが回転する。


---


空中で。


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あり得ない動き。


---


だが成立する。


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光が尾を引く。


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残像が残る。


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それだけで、空間が“舞台”に変わる。


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異形の動きが止まる。


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ほんの一瞬。


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“見ている”。


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その隙。


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さやかは、踏み込む。


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距離ゼロ。


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手を伸ばす。


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音符が収束する。


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一点に。


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叩き込む。


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衝撃。


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ではない。


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“確定”。


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異形の顔が、大きく歪む。


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少女が、笑う。


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男が、睨む。


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二つの表情が、同時に存在する。


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そして——


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“境界が現れる”。


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正面。


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左右に分かれた顔。


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固定される。


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「……出た」


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さやかが呟く。


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(これが“形”)


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その瞬間。


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場面が切り替わる。


---


■管制室


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「イベント登録、確認しろ」


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「……該当なしです」


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「スケジュール外か?」


---


「いえ、ILS側のトリガーも反応していません」


---


沈黙。


---


「じゃあこれは何だ」


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誰も答えない。


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モニターには、戦闘。


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だが数値が合わない。


---


サイズが固定されない。


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熱量が増減する。


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存在が“揺れている”。


---


「……記録は?」


---


「取得できません。途中から欠落しています」


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「またか」


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チーフが小さく息を吐く。


---


「誰が起動した」


---


「搭乗者は確認済みです。上松さやか」


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「適性者か?」


---


「不明です。選定ログが存在しません」


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一瞬、空気が止まる。


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「……は?」


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「選ばれていません」


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「なのに、座っているのか?」


---


「はい」


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沈黙。


---


誰かが小さく言う。


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「……想定外じゃない」


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一拍。


---


「想定“できない”現象です」


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チーフは目を細める。


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モニターの中。


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巨大な人型。


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光の羽。


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旋律の軌跡。


---


だが——


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スピーカーから音は出ていない。


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それでも。


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波形だけが、存在している。


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「……なんだこれは」


---


誰も答えない。


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ただ一つ。


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地下避難シェルター。


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その内部で。


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全観客の脳波が、わずかに同期している。


---


■戦場


---


異形が、動く。


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四本の腕が同時に振り下ろされる。


---


血が爆発的に増幅する。


---


だが。


---


さやかは、もう迷わない。


---


「——いくよ」


---


ビッグサイロが、応える。


---


光が収束する。


---


旋律が、強くなる。


---


戦いは、次の段階へ進む。


---


続く。

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