三十話「レア度、奇しくも一致」
佐藤健太エイリアン騒動から少し歩いて―――。
「すごい、薄暗い感じやね……」
「一階は深海をモチーフにしてるって、さっき書いてありましたよ」
「そうなん? 見逃したわ」
「あ、ついでに、さっき出口もありました」
「は―――?」
美ら海水族館一階、深海エリア。
深海生物たちの日々生活する空間を再現するべく、水族館らしい薄暗さを保ったその空間は、非日常感と相まって興奮を誘うものだった。
そして、一階から水族館めぐりがさぁ始まる、というタイミングで、早速出口を発見している大輔だった。
「なんで今から、っていうときに出口?」
「あ~……それがですね。ふつうどんな建物も一階から回るもんよな、と思ってまず一階に来たんですけど、なんか順路は四階から一階に降りてくる感じらしいんすよね……」
「入口のすぐそこにあった展示には進まずエレベーター降りていくからなんでなのかと思ったら……」
美ら海水族館は久しぶりやから忘れてた! と祐介が叫ぶ。
周りもあらまぁよ、と呟きながら、まぁいっか、とまた水族館の中を進み始めた。
改めて、美ら海水族館一階、深海エリア。
深海に生きる生物というのは、常に鋼鉄すらも拉げさせるような圧迫的な水圧を受け続ける環境が故に、陸上や浅海の生物とは全く持って異なる。
正直その情報の多くが身近ではない。しかし、だからこそ、非日常感は演出されるのだ。
「あ! このススキカラマツっていうの、お兄ちゃんに似てる!!」
「最早魚でもなくサンゴだけど? どこが似てると??」
「お兄ちゃん、おじいちゃんっぽいから……枯れ具合とか?」
「確かに最近腰痛エグいしかりんとうとか芋けんぴとか大好きやけど!!」
保護者であるおばぁを除けば男女ペア三組。
公認のカップルではあるが実際のカップルではない健美ペア。
健美ペアの傍観者であり同じ生徒会本部に所属するという共通点を持つ変人の優等生、大里ペア。
突如出現し、与えられていなかったはずのヒロイン枠をぶんどったくるみと祐介の親族ペア。
そして、その中で最初に手を繋ぐというまさしくラブコメ展開を果たしたのは、当然のように祐介とくるみのペアであった。
「健全というか、純粋というか……何ともなぁ〜」
「ま、仕方ないでしょ、佐藤くんはそーいうの苦手やし」
祐介が呟けば、大輔からの返事が返ってくる。まさか、お前も含まれてるんだよ、などとは言えない祐介であった。
「ま、ゆっくりでも着実に進展はしてるか」
初対面のときからいくらかは距離の短くなったお互いの距離感を見て、祐介ははぁ、と息を吐く。
大輔と里奈はまだ、なのかもしれない。しかし、健太と美穂に関してはそろそろもう少しの進展があってもよいのではなかろうかと思えてくる。
花火大会に二人でいったりもしたはずだろうに。まあ、その点では大輔と里奈も同様ではあるが。
「あ、なんか診断テストみたいなんあるで!! こーいうのはやらな!!!」
ふと、里奈が声を上げる。
少し目を向けてみれば、確かに診断テストが用意されていた。
「あなたを動物に例えたら?」の深海魚バージョンのようである。
「高橋くんは、ススキカラマツかな?」
「いや、それはないやろ」
「やってみないと分からないでしょー!?」
「シュガーくんはチョウチンアンコウかな」
「知ってる深海魚言っただけでしょ?」
診断テストのパネルのところにぞろぞろと全員が集まってくる。
意外と人数が多いということで、適当に一列に並び、その順で診断をしてみる。
「んじゃ、言い出しっぺの私からー」
トップバッターを務めるのは当然ながら里奈である。
「なになに? 『スポーツが好きな方だ』? うぅ〜ん、水中は好きやけど陸上はなぁ……『いいえ』っと」
「水中は好きだけど陸上は……」とは、なんとも、魚みたいな返答だなぁ、と思いながらも進行を滞らせても良くない、と大輔は言葉を飲み込んだ。
「あ、結果出た! 『ムラサキヌタウナギ』……? 聞いたことある人いる?」
「水深500メートル以深に生息する生物ですね。腐った生物の遺骸に豪快に吸い付くように食べます」
「すげぇわ、流石『メガネ教授』」
「そこのパネルに書いてありましたので」
「ズル教授じゃないですか」
流石の大輔といえど、深海生物は専門範囲外であったようで、パネルの盗み見くらいしか出来なかった。
そして、大輔のあだ名は不名誉なものが一つ、追加された。
「はい、じゃあ次はズル教授の出番ですよー」
「不名誉なあだ名が……分かりましたよ、やりますやります」
里奈に続いて、大輔の挑戦。
果たして、面白い結果になるのか―――!?
「『モモイロサンゴ』だそうです。宝石としても重宝されるのだとか……」
「なんか、可憐で美しく素晴らしい私より綺麗そうなん出しててムカつく」
「議長さんが言うとネタじゃなくなるでしょう……」
大輔の結果としては、まぁ、なにか面白いことがあるわけでもなく。
というか、面白い結果が出る人などそもそもいるのかわからないが。
「あ、ていうかレア度とかあるんや」
「ホントですね、僕は星3です」
「私は……なんやっけ?」
「議長は星3でしたよ」
「絶妙に高いんやね」
「確かに、ふたりとも生徒会本部やから、美術部に来れへん時あるよなぁ」
美穂の言葉に、そういうレア度では無いだろう、と思いながらも意外に共通しているのかと納得している大輔であった。
「んじゃ、次は私〜」
続いて美穂の出番である。
といっても質問の答によって質問分岐するだけで、ほとんど絵面が変わらないので割愛。
「私は……ワム……ワヌク……『ワヌケフウリュウウオ』やって」
「確かに、歩き方が美穂に似てる〜」
「そうなん? あ、レア度は星2やわ。まぁ、部長やし委員会も序盤以外は落ち着いてたしなぁ」
里奈に歩き方が似てる、と言われ美穂は画面に映るワヌケフウリュウウオの歩く様子を見ながら自分も歩いたりしてみていた。
「じゃあ次は俺で」
そう言いながら健太がパネルに近づく。
「エイリアン先輩はそのまんまエイリアンじゃないんですかー?」
「違うでしょ……そもそも深海生物やないやん」
くるみに「一応人間」発言をイジられながらも健太が診断を進めていった。
「へぇ〜、『ヒゲツノザメ』やって。レア度星2やわ」
「確かに、美術部じゃないにしては美術部メンバーと一緒にいるもんな」
「どこ行っても大体おるよなぁ」
「やっぱ、移動手段はUFOなんですか?」
「いや、普通に歩きやけど……」
やはり健太のレア度についても説明がつく。美術部ではないのに生徒会組の謎にしっかりした理論で美術部につれてこられたりしているだけはあるというものだ。
「んじゃ次俺な」
ここまで何人もの診断を軽く見てきた祐介は一瞬で結果までたどり着いた。
「はい、ススキカラマツじゃありませんね―――『ヒメエボシ』やって」
「レア度は星2、まぁ地味に皆勤賞疑いあるしね」
「『その生態はナゾに満ちている』やって。かなりピッタシちゃう?」
祐介は「ナゾ」という言葉に内心苦笑いを浮かべながらも表情には出さず。「基本部屋の中で生活するからな」と当たり障りのない話だけを零す。
こうして祐介まで終了。
おばぁは基本的に会話にも参加せず壁に徹するとのことを聞いていたので、残りはくるみだけである。
「では最後私でーす。えーっと……? あ! 『ナガタチカマス』らしいですよー、レア度星4!!」
「レア度、今までで最高やん。確かに、今日だけやもんな」
「悲しいですねー、今日だけだなんて」
「けど、マジでレア度一致したやん」
祐介が少々驚きの混じった声で呟く。美穂が言い出した偶然の一致が、まさかここまで的中するなど、誰が想像できただろうか。
もしかすると、この診断テストは彼らの本質を掴んでいたのかもしれない。
【美穂】あのレア度診断まぁまぁ当たってたよね
【健太】深海生物はあんまわからんけど、レア度に関しては確かにある程度あってたんかな
【美穂】くるみちゃんも含めて、みんなのレア度が同じぐらいになって頻繁に全員で集まれたらいいなぁ
【祐介】(くるみと頻繁には嫌やなぁ)




