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ヒーローに殺されたい少女  作者: 川里隼生


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第五章 少女に力を貸したい少年

 上級生の教室を覗いて、溜息をついた少年の名はマックス・ザンダー。金髪碧眼、文武両道、優等生にして新生徒会長。彼は十四歳の少年でありながら、ヴァレンシュタイン公国の自由と平和を守るヒーローでもある。マックスは持ち前の正義感で、母国ヴァレンシュタインに蔓延る悪を成敗していた。宇宙人によるエリーゼ第一公女暗殺未遂事件が大々的に報じられ、正体不明ながらもジャスティスマックスの名は世界中に広まりつつあった。


 彼をヒーローたらしめているのは、ジャスティス・スーツと呼ばれる強化服だ。ジャスティス・スーツは当初、彼の従兄であるフィリップが着用するものとして開発された。しかし、フィリップは争いを好まない潜在意識が強すぎて満足に戦うことができなかった。そこで新たな着用者に選ばれたのがマックスだった。フィリップは何度かジャスティス・スーツを取り返そうとしたがいずれも失敗に終わり、結局は今もマックスがヒーローのままになっている。


 最近、マックスには気がかりなことがある。自分と同じ年頃の少女と、ひと回り小さい少女が二人で結託して悪事を働いているのだ。マックスにはその内の一人に見覚えがある。同じ学校の生徒だ。名前や学年までは知らない。誰かの命を奪っているわけではなく、宇宙人でもない人間なので、マックスは彼女らの武器を無効化することで対応している。なぜ彼女らは暴走しているのか、マックスは考えていた。


 非行の原因として挙げられやすいのが家族関係だ。マックスは生徒会長の仕事として、教師から生徒全員の家族関係を可能な限り教えてもらった。ほとんどの生徒について情報を得ることができたが、ただ一人、マックスより一学年上のアニカ・ベッカーについてだけ、教師が家族関係を教え渋った。教師が教えないのなら本人から聞き出そうと思って教室まで赴いたのだが、欠席だった。他の先輩に事情を聞いたところ、彼女はここ数週間ほど不登校なのだという。アニカがジャスティスマックスの前に現れ始めた時期だ。


 彼女に何があったのだろう。もしも彼女が傷ついているのなら、生徒会長としてでも、ヒーローとしてでもなく、一人の人間として手を差しのべるべきだ。ただ、不登校の生徒の自宅にまで押しかけるのは逆にアニカを追い詰めてしまうのではないか。マックスが悩む中、左耳に付いているピアス型のガジェットが少年の声を発した。

「助けて、ジャスティスマックス!」

 誰かがジャスティスマックスを呼んだのだ。

「やれやれ。今日もジャスティスマックスは忙しいぜ」

 メタリックホワイトのスーツに着替えて、マックスは無限に広がる空の彼方へ飛び立った。

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