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ヒーローに殺されたい少女  作者: 川里隼生


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第四章 誰かに認められたいヒーロー

 今日はサッカー場に来てみた。ヴァレンシュタインにもプロのサッカークラブがひとつだけあって、ドイツのサッカー協会に参加している。ちょうど今日はバイエルン・ミュンヘンを迎えてのホームゲーム。DFBポカールの2回戦で、チケットは完売。ゲート周辺でフーリガンのように大量の発炎筒を振り回して騒ぎ、大勢の人を危険に晒す。以上が計画の全貌なのだけれど、私がFCヴァレンシュタインのユニフォームを買ったのに対し、カミラが持っていたのはバイエルンのユニフォーム。応援するクラブは違うのに行動は同じフーリガンという変な状態になってしまった。ま、たまにあることよね。


「待て」

 ジャスティスマックスより低い声が聞こえて振り返ると、そこにはジャスティスマックスの格好をして、ヘルメットだけ外した男が立っていた。

「お前たちの愚行はこのジャスティスフィリップが許さん」

 フィリップと呼ばれていたその男は、戦いの覚悟を決めたように、一気にヘルメットを被った。


「お姉さんはジャスティスマックスに用があるんです! 偽物は帰ってください!」

 私の嘘を疑う素振りすらないカミラが発炎筒を振り回して言う。

「マックスなら俺が倒されれば来るだろう。そんなにマックスに会いたいのならば、俺を倒してからにしろ!」

 ジャスティスマックス側には何か事情があるようだけれど、私としては殺してくれるなら誰でもいい。とりあえず挑発のつもりで、発炎筒を投げつけてみた。


「うおっ!」

 顔面に命中した。もう一本、火をつけて投げた。

「うわっ!」

 また当たった。私は確信した。こいつ、弱い。

「立ちなさいよ。まだ降参じゃないでしょ?」

「降参してください! ジャスティスマックスを呼んでください!」

 いつも通り発炎筒を持つだけの係のカミラ。ここまで献身的な友人は初めてかもしれない。


「待てフィリップ!」

 今度はいつもの声がした。もう一人、真っ白なヒーローが空から現れた。ジャスティスマックスだ。声以外は見分けがつかない。

「ジャスティス・スーツが二着だと? どういうことだ!」

「おやっさんにスペアを貸してもらったんだよ!」


 ジャスティスマックスの目にも留まらぬ早技によって、私たちが用意した発煙筒はすべて使用不能にされてしまった。それを見て最もショックを受けていたのは私でもカミラでもなく、フィリップのようだった。

「どうして俺は正義の味方になれないんだ!」

 彼の叫びは、煙たい夕焼け空に消えていった。

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