第三章 ヒーローに立ち塞がりたい少年
「お姉さんは、どうしてジャス……白い悪魔の敵になったんですか?」
カミラと夕食を分け合っていたとき、そう聞かれた。至極もっともな質問だと思う。ジャスティスマックスと言うと奴に先回りされることがわかったから、普段の会話では『白い悪魔』と呼ぶことに二人で決めた。
私は本当の理由を隠した。自分の嫌いな部分を進んで話す人間なんか、きっとこの世にいない。本当は、ただぼんやりとした不安を感じているだけ。たったそれだけ、なんだか曖昧な理由。何も知らない他人が聞いたらきっとそう言う。
「あいつはね、私に不幸になる呪いを掛けたの。他人を不幸にさせて、あいつはその分の幸福を欲しいままにしているのよ」
酷い人なんですね、とカミラは言ってくれた。水晶のように純粋な子。同時に、その子に嘘をついて、ジャスティスマックスに無実の罪を着せて、なんて酷い人間なんだと、私の自己嫌悪は雪のように積もり続ける。いつからだろう、自分がこれほど許せない人間になってしまったのは。私にもカミラのように純粋な時期があった筈なのに。
同じベッドの中で眠るカミラの顔はとても安らかで、見ている私が癒された。朝を迎え、私たちは遊園地に向かった。遊びに? とんでもない。私がジャスティスマックスに殺されるため。まあ観覧車くらいなら、最期の思い出として一緒に乗ってもいいけれど。
「観覧車を出たら、スタッフを襲ってみましょう」
「いいですね! きっとびっくりしますよ!」
今日はスパナとボルトを持ってきた。スパナは近接専用、ボルトは投擲用に。
ドアを開けてくれた係員のお腹めがけて、私がスパナを振り下ろす。続けて待機列に向けて無差別ボルト攻撃。カミラは声で威嚇するのと、ボルトが入った箱を持つ係。観覧車周辺は一気にパニック状態。どこかで聞いたような男の子の叫びが聞こえた。
「助けて、ジャスティスマックス!」
スタッ、と着地する音。背後から聞こえた。
「やめるんだ! って、また君か! 懲りない奴だな!」
「懲りないですって? 当たり前よ!」
「お姉さんがんばれ!」
ジャスティスマックスなら頭を狙っても大丈夫だと思う。カミラが持つ箱からボルトをいくつか鷲掴みにして、白い悪魔へ投げつける。簡単に全部避けられた。
「終わりか? なら今度は俺の番……うわぁっ!」
キックの助走に入ったジャスティスマックスから、爆竹のような音と火花がした。撃たれたみたい。
「誰?」
撃ったほうを見ると、そこには私と同年代くらいの男がいた。
「マックス、そのスーツは俺の物だ」
「フィリップ! まだそんな事を!」
「俺のジャスティス・スーツを、返せぇぇぇ!」
「うぉぉぉ!」
私たちを置き去りにして、二人は遊園地の奥の方へ行ってしまった。係員に「警察には言わないから」と促され、私たちは帰宅することにした。
「ところで、お姉さん」
「なに?」
「あの人たちはどこまで行ったんですか?」
「……私のラーニングと予測が正しければ、採石場かな」
「この国って採石場あるんですか?」
「……どうだろ」




