表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジュエル☆クイーン♡スクーリング  作者: 葉月 優奈
一話:リアルを教育するゲームとセレスタイト
9/137

夕方、俺は路面電車の車内にいた。

この富山市には市街地中心に路面電車が走っていた。

帰り道、俺はいつも通り帰ろうと路面電車のつり革につかまっていた。

電車内ではイヤホンつけてDSPはやっているが、セレスタイトの教育をこなしていた。

路面電車が三つ目の駅に停車して、乗り込んで来た乗客。

そこに俺の方へ近づいてくる一人の女がいた。


「あれ?ミツノマルじゃない」

純花だ、赤い色のボーダーシャツとデニムパンツをはいていた。

無邪気な笑顔浮かべて俺の方に近づく。

夏らしい純花の私服は、夏休み何度か見ていて珍しいものではない。

純花の登場に、左耳のイヤホンを外してDSPを閉じた。


「おう、セレス……純花か」

「セレスって?まあいいわ。学校の帰り?」

「ああ、部活の帰り」

「そう……相も変わらず怪しい部活しているのね」

「へえ、しれっとばかにするんだ俺の部活」

純花は俺のいるパソコン音楽部をあまりよく思っていない。

オタク色の強い部活だから、リア充押しつけ彼女の純花がよく思わないのも納得だ。


なんだか気まずそうな顔をあからさまに見せてきた純花。

隣に来た純花は、ちょっといつもより元気がないようにも見えた。


「純花は何していたんだ?寮はこっちじゃないだろ」

「ん~、来週帰るでしょ。だからいろいろ買い物して行こうかって」

「春には帰ったんだっけ?奈月温泉郷」

「春休みは帰っていないわ、前に帰ったのは冬休みかな。

今年の春休みは、絶対に負けられない戦いがあったからね」

「ああ……あったな。学校で銅像を撤去するって騒いでいた時期だっけ」

「そうよ、あんな邪魔な銅像いらないでしょ」

不機嫌な顔で純花は言っていた。


三学期も終わりに差しかかる頃、学校で記念碑の銅像を作ることになった。

はっきり言って、ほぼ百パーセント学校側が決めた自己満足で迷惑極まりない銅像。

『学問の神様像』だったかな、そんなタイトルの像を置くことで話が進んでいた。

学校では決定事項だったのだけど、それに対抗したのは純花だった。

中庭の花壇を取り壊して作ることに反対した純花は、学校と徹底的に言い争う。

そこに俺も駆り出されたわけだが。


職員室にまで行って抵抗した、一年生の春休み。

ほとんど決まった学校の決定を覆すのは難しい。

花壇のそばで俺も純花に言われて見張りもさせられたっけ。

それだけに、春休みは俺が毎日のように学校に行くことになったわけだが。


「あの時は大変だったわね、大体なんであそこに銅像?憩いの場を壊して建てる物じゃないわ」

「そうだけど、結局学校の方が強行して建て始めたんだよな。銅像の除幕式は行ってないよな」

「当然じゃない!」

純花はさも不満そうだ。

あの中庭での学校側との戦いは、ある意味純花のプライドが垣間見られた。

純花はかなり頑固なところかがあるからな。


「あそこには珍しい花があるわけでもないし、あまり人もいないわ」

「一部花壇の花は結局植え替えられただろう、結果的に問題ないだろう?」

「おおありよ、その中で何本かの花が死んじゃったんだし」

純花は本当に悔しそうな顔を見せていた、今にも泣きだしそうだ。

おいおい、これじゃあ俺が純花を泣かせているみたいじゃないか。

路面電車の客の視線が、微妙に俺に冷たく突き刺さるし。話題を変えよう。


「今回は二週間だよな。奈月温泉」

「そうね、お盆のころが特に忙しいからね」

泣き出しそうな顔がいつも通りの表情に戻った。


「純花、おじさんは元気しているか?」

「えと……そうね。パパは元気しているわよ」

「ならよかった」

「ねえ、ミツノマル」

「なんだ?」

純花が少しためらったような顔で俺を見てきた。

さっきまでの泣き出しそうな顔が、逆に頬を赤らめた顔に変わっていく。

珍しく見せるいじらしい顔が、ゲーム内のセレスタイトと重なった。


「今日はゲームしていないのね」

「たまたま……だ」

俺は窓を見たまま、自宅の最寄り駅に路面電車は到着していた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ