21
翌日の昼には俺は行動に移していた。
探すチャンスは昼しかない。今、この民宿に純花がいなかった。
朝はバイトが忙しすぎてチャンスすらない。急に入ればもちろん不審がられる。
調べないといけない、本当にゲーム内での出来事が正しいのかを。
ならばいなくなって違和感がない昼休みに突入。そして突入の時を迎えた。
純花が買い出しに行くのは街中……かなり遠い、往復三時間以上はかかる。
山を越え、崖を越えて、俺たちが来た駅に向かっていた。
(どうしても掴まないといけないんだ。ならば手段は選べない。
純花の部屋に行けば……絶対に養子のヒントがあるかもしれない)
意を決っして俺は純花のドアの前に立っていた。そのままドアノブに手をかけた。
女の子らしい部屋で、机とベッド。
それから壁一面に、花の標本がいくつも飾られた部屋。
だけどそんな女の子らしい部屋で、俺はとんでもない出会いをしてしまった。
「あっ……」
先客がいたのだ、しかも三十代風のサラリーマン。
サラリーマン風の若い男は、よく見ると口髭を携えていた。
フォレスセント族の貴族の男に顔が似ていたから驚きだ。
「フォレスセント族!」思わず叫んだ。
「はあ?何を言っている?お前は泥棒か」
険しい顔で汗をかきながら背広姿の男は、俺の方に詰め寄ってきた。
「いえ、俺はここのバイトです。あなたこそ何しているんですか?
ここは従業員以外立ち入り禁止ですよ」
「私の娘に会いに来た」
「何を言っているんだ、純花には純花パパがいるんだ。
この民宿を一生懸命切り盛りしているパパがいるんだぞ」
「違う私は……」
「あなたはもしかして純花の本当の父親ですか?」
なんとなくゲーム内でのイベントを言うと、背広の男は頷いてきた。
目を細めて俺の方をじっと見て聞いた。
「ほう、私のことを知っている。じゃあ君は純花の知り合いなんだな」
「知り合いというか、一応彼氏です……」
口にしては照れてしまう俺がいた。するとサラリーマン風の男は逆に笑っていた。
「はっはっは、そうか、純花は元気でやっているんだな。彼氏もできて立派に恋愛をしているんだな。
申し遅れた、僕は『森本 卓』外資系の会社員をしている」
「会社員ですか、なんで純花のことを養子に出したんですか?」
「生まれてくるのが純花は早すぎた」
いきなり森本さんは真顔で言ってきた。
「早産ってことですか?」
「いや、若かった……僕たちには育てる経済力がなかった。
純花が生まれたのって、僕たちがまだ高校生と大学生だったからね。
丁度僕が今の君ぐらいの時に、子供ができちゃって……妻がどうしても生みたくてね」
「なんですか、それ?」
「いやぁ、気持ちよかったよ、若かったから。ただ快楽でしか子供を産めなかった。
でも子供をいざ生んでしまって、僕たちは彼女を育てる経済力がなかった……そこで」
「ここに預けたんですか?」
「ええ、奈月温泉郷に来たんです。
奈月温泉郷で子宝に恵まれない老夫婦がいて、僕たちは養子に出したんです」
「そうですか……」
全てが納得できた、セレスタイトのイベントもつながった。
だけど、もう一つ気になることがある。
「純花とはちゃんと会ったのですか?」
「いえ、そのことで純平荘に久しぶりに一週間泊まることにしたんだ。
けじめもつけないといけないから」
だけど、俺はその瞬間一人の人間の気配を背後に感じた。
殺気と言ってもいい張りつめた空気が、俺の背中にはっきりと感じた。
「なんでミツノマルに言うのよ!最低」
それは俺よりも驚いた表情を見せた森本さん。
俺の背中には出かけたはずの純花がいた。怒っているよりも悲しそうだ。
顔を強張らせて、今にも泣きだしそうなその顔はセレスタイトと重なった。
「純花……ごめん」
「光輝にだけには、絶対に知られたくなかったのに!」
「おい!純花」
だけど純花はそのまま泣き出しながら走りだしていた。
そのまま俺は血相を変えて純花を追いかけていた。
その時の純花は、セレスタイトと全く同じ逃げ方をしていたのだから。




