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夜になり、仕事でクタクタでもやっぱりゲームは忘れない。
温泉で純花とのニアミスを避けるために、風呂は最初に速攻で済ました。
純花の裸は見たくないし、まだ木桶で殴られた後頭部の痛みが残っていたし。
よってゲームの時間が遅くなったわけだが。
~~エメラルド城・庭園~~
いつも通りセレスタイトが、お花の前で屈んでいた。
肩が出た薄いピンクのドレスを着ていて、花を見ている姿はまさに姫だ。
俺に気づくと、顔を上げてにっこり微笑んでいた。
この子が純花と同じ記憶を持つセレスタイト。だけど守らないといけない。
「光輝さん、今日は夜遅いですね。眠くなっちゃいますよ」
「ああ……リアルと同じで、時間も夜がゲーム内でも来るんだな」
「そうですよ、リアルと同じ時を動いていますから。
あまりリアルの話をすると、私は妬いちゃいますよ」
「ごめん」
なぜか俺は反射的に謝ってしまった、セレスタイトはかわいく笑って許してくれた。
教育を一通り終えて、パラメーターをじっくり見ていた。
(まずまずか、芸術系は諦めて家庭系や社交系を上げればパラメーターの見栄えがいい。
セレスタイトはバランスよく育てるのがいいか……)
などと数字を見ながら考えていると、セレスタイトが声をかけてきた。
「そんなことよりイベントがありますよ」
「イベント?」
そう言いながら画面上部の『!マーク』を見つけた。
何かが起きたのか、イベントフラグが発生したらしい。
早速俺はそれをタッチした。
――場面はどこかの立派なお屋敷の応接間。
きらびやかなシャンデリアに、豪華なテーブル、王座みたいな椅子。
だけどおめかしをしてピンク色のドレスを着たセレスタイトはすまし顔。
隣にいるのはひげ面の国王風の男か。う~ん、誰かにそっくりだ。
反対側にいるのは、背が高くて耳が長い男性と女性。
二人とも金持ち……貴族のような豪華なジャケットを着ていた。
「さて、お願いがあってこちらに参りました。侯爵」
「うむ、申してみよ」侯爵が、貴族風男の話を受けていた。
「隣におられますセレスタイト姫殿下を、われわれに返してほしいのです。
セレスタイト様は我がフォレスセント族の娘ですから」
「そうか……とうとうきたか」
侯爵は全く表情を崩さなかった。当り前であるかのように振る舞っていた。
いきなりの言葉に、俺は理解できなかった。
当然セレスタイトは、納得できない様子で侯爵に詰めよっていた。
「どういうことですか、父上!」
驚きと悲しみの顔で、セレスタイトが険しい剣幕で侯爵の方に向かっていく。
侯爵は数秒間があって、口を開いた。
「セレスタイトよ、これは政略養子なのだ。
フォレスセント族の族長が、援助と引き換えにわしは娘を要求したのだ」
「ええっ、だって私は父上の娘だと教え込まれて……」
「嘘じゃ、真っ赤な嘘」
侯爵はいともたやすくためらいもなく言い放った。
眉も一つ動かさずに、しっかりとセレスタイトの顔を見ていた。
セレスタイトは驚いた顔から泣き顔に変わっていく。
「どうして……なぜ言って下さらないのですか?」
「成人になってからいうつもりだ……だが……」
「ええ、援助は我が民はもう不要になりました。
それ故に、姫様を……族長の娘セレスタイトを返していただきたい。
もちろん受けた援助金はお返ししましょう。外の荷馬車に積んであります」
「……そうだな、セレスタイトもフォレスセント族だからな」
「嫌です!私は……」
セレスタイトは嫌がっていた。困った顔のフォレスセントの男性。
それを諭すかのようにフォレスセントの女性が口を開いた。
「でもね、あなたは私たちの子供なのよ」
「嘘です、それも嘘!みんな嘘ばっかり!」
セレスタイトは泣きながらその部屋を出て行った。
困り果てた顔の国王と、フォレスセントの男女の三人がこの部屋に取り残された。
そのまま画面がフェードアウトしていった――




