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ジュエル☆クイーン♡スクーリング  作者: 葉月 優奈
二話:フォレスセント族とセレスタイト
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八月になって、俺はすぐに車に乗っていた。

窓から見えるのは自然豊かな山や高原が見えた。

夏でも長そでのシャツを着た俺は、後ろ座席でゲームをしていた。

やっていたのは『ジュエル☆プリンセス♡スクール』。

丁度八月になって新しいキャラを始めていた。


純花の前でセレスタイトのいる『ジュエル☆クイーン♡スクーリング』はなんとなくやりにくい。

目の前でセレスタイトに照れている俺を、純花の前でやるにはいろいろまずい。

ゲーム画面に純花そっくりの美少女に出ているのを見つかると、純花のサソリ固めがきそうだ。

そんな純花は相変わらず、不機嫌な顔で俺の隣に座っていた。

いつも通りの私服だけど、長いジーンズに長そでのシャツだ。


「相変わらずそのゲーム……飽きないわね」

「Jプリは神ゲーだからな」

「ふーん、端から見るとただの怪しいロリコン高校生だけど」

純花の悪態もいつものことで慣れた。

俺が今育てているのは、ボーイッシュな『トパーズ』と言う美少女。

例のごとくボクっ娘なのだが、トパーズにも恋愛感情はあまり抱かない。


「それでも俺は純粋なパラメーター上げがいいんだ」

「変なの」

純花も俺いじりに飽きたのか、反対側の窓から景色を見ていた。

晴れた空に山々と木々が見えていた。クネクネの山道で車が右に左に曲がっていく。


「今日は悪いね……菅原君」

すると前の運転席から声がした。

年老いた初老のおじさんが、運転しながらふと俺に声をかけてきた。

さすがに俺は顔を上げて前を見上げた。


「いえ、俺も夏休み暇ですから」

「パパ、たっぷりこき使ってもいいわよ」

「ははっ、純花の彼氏だからね。父さん嬉しいよ」

「違うわ。ミツノマルは単にあたしに惚れているだけよ!」

(よく言うよ)などと思いながらも純花はすこし笑顔が戻っていた。

もちろん前で運転しているのが純花の父だ。『純花パパ』と俺は呼んでいる。


「これだけ純花のことを大事に思ってくれるなら、父さんとも裸のつきあいをしないとね」

「ええ……まあ」

「純花のことを頼むよ」

「はい分かりました。純花の暴走を止められるのは俺ぐらいですから」

「ちょっと、どういう意味よ?」

純花は流し目で俺を見てきた。その視線で窓を見ることで無視することにしよう。


「そろそろ近づいてきたな」と前の純花パパ。

「何がですか?」

「何言っているのよ、奈月と言えばあれでしょ。ほら、こっち来なさい!」

純花は強引に俺のことを自分の窓側に引っ張った。

引っ張られた俺は素直に純花の窓側を見ていた。

見えるのは山の連なりだが、だけど純花は下の方を指さしていた。


「そうね……あれじゃない、『阿弥野ケ原(あみのがはら)樹海』」

純花が車の窓から身を乗り出したのは、崖の下に見える樹海。

純花の声を聞いてか、自然と車がゆっくりになった。

山頂付近から樹海が見えて、ところどころに大きな水たまりが見えた。

S字カーブの切れ間から何百何千もの木の群れは、自然の雄大さを物語っていた。


「すごいですね」

「そうだな、阿弥野ケ原樹海は山岳特有の濃霧が発生しやすい場所だからな。

晴れていないと、なかなか樹海を上から見ることはできないよ」

「今回三回目ですけど、初めて見られましたよ」

俺は初めての景色に感動していた。

正直、毎回この道を車で移動するときに濃霧だった覚えしかないから。

見えた緑は色鮮やかで、目にもよさそうだ。


「このあたりには、高原植物や珍しい動物もいるよ。

自然で人の手が全く入らないから、ここはとてもきれいだ」

「そうですね、感動です」

「早く行きましょ、お客さんがそろそろ戻ってくるでしょ」

と俺の腕を組んで純花が急かしてきた。


「おお、そうだったな……じゃあ飛ばすぞ」

「全く……パパはいつもすぐそうなんだから」

「ははっ、ごめんよ純花」

純花は怒って、逆に純花パパは素直に笑顔で謝っていた。

ふてくされたように純花は深いため息をついていた。

そんな純花の横顔を隣にいた俺はじっと見ていた。


「何?ミツノマルあたしの顔に何かついている?」

「いや……そんなはずないよな」

「そう?あたしの顔がかわいいからって見とれていたんでしょ。

少しはリア充体験を味わえた?」

「いや……純花は何か悩みはないのか?」

「何もないわよ……電車乗って疲れただけ」

純花はやっぱり俺に対して、当然のごとく冷たかった。


「お前には似合わないよ。元気なのが純花っぽい」

「……そうよ。悪かったわ」

声を明るく返すも、やっぱり元気がないようにも見えた。

そんな純花は、俺から視線をそらすように携帯電話をいじり始めた。


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