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魂☆リサイクルセンター  作者: ルリカワ
第一章ラビットさんのオカルトラジオ
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ラビットさんのオカルトラジオ 7

「アマネ、この国の人間を助けてほしい。」

「何言ってんだよ、雨音はそんな」

俺の言葉を遮って、背は言葉をつづける。背は今度は俺に向き直った。何だか嫌な予感がする。

「君の力も貸してほしいな、青年。君には前世がない!そんな人間、ここ数百年滅多に現れることはなかった」

男は芝居がかったその態度や声音とは裏腹に、ひどく鋭い目をしていた。

「このふざけた男の話が信じられないのは分かる。ただ、君たち二人がとても貴重な魂の持主であること、その魂は人のために役立つことをどうか私たちに説明させてくれないか」

もう一人の男が、宇佐美だったか、卯月をたしなめた。オンボロのトタン小屋は静まり返っている。


「そこの金髪のお兄さん「卯月くんだよ」……卯月さんの声、先ほど私たちが聞いていたラジオの声と同じです」

膠着状態で口火を切った雨音に、金髪、卯月が口をはさむ。動転しすぎて気が付かなかったが、この声確かに先ほどまで聞いていた声だ。この話し方のうざさも。

「よく気が付いたね、アマネちゃん」

「あなたたちは、嘘をついているんじゃないですか」

それまでずっと笑みをたたえていた卯月の顔から、表情が消える。

「……へえ、どうしてそう思ったのかな」

「話を聞く限り、あなたたちの所属しているらしい魂リサイクルセンターってところは、人を救う組織なんですよね」

「……そうだよ」

「……こっくりさんって、集団ヒステリーとかを起こして危ないって聞いたことがあります。遊び半分でしてはいけないって。そんな危険なことを、沢山の人に真似させるなんて、人を救うことを目的としている組織の人がするんですか」

きっぱりと言い切った雨音に、卯月は唇を意地悪に吊り上げる。

「へえ、察しがいいね。でもお嬢さん、馬鹿のふりをするのも時には大事なんだよ」

卯月の圧のせいだろうか、俺と繋いでいる雨音の手がぎゅっと握られた。そうだ、怖がってばかりじゃだめだ。さっきから戸惑うことしかできない俺に代わって、ずっと雨音は矢面に立ってくれている。俺はズレっぱなしだった眼鏡を指でかけ直した。

「馬鹿のふりをしていても、あんたらにいいように使われるだけだろ」

それまでロクに話さなかった俺が声を発したことに、卯月は目を瞬く。

「俺たちは、目的があって、こっくりさんをした。あんたらも目的があって、あのこっくりさんを俺たちにさせたっていうのなら、お互いに嘘を付かずに腹割って話すのが、一番効率的なんじゃないのか」

またトタン小屋がシーンと静かになった。俺は余計なことを言ったのだろうか。雨音の足を引っ張ってしまった?

「その少年の言うとおりだ卯月。協力を頼む側が嘘を付いてばかりはいけない」

宇佐美が卯月の肩をたたく。

「そうだね、すまない。アマネちゃんと青年。俺たちが魂リサイクルセンターの人員だというのは本当だ。だが、俺たちがアマネという名前の人物を探していたのは、人類の輪廻転生だとか、そんな大層な目的のためじゃない」

相違って卯月は宇佐美に目配せをした。宇佐美は、口を開いたが、結局何も言わずに口を閉じた。

「俺たちはね、壊れてしまった魂を、直したいんだ」

「壊れた、魂?」

「そう。人の魂は基本的に、死んだ後、魂リサイクルセンターの者が回収し、輪廻転生をする。しかし、全ての魂が輪廻転生できるわけじゃない」

「例えば生前苦しい思いをして心を壊してしまった人、あるいは、邪鬼と呼ばれる存在に襲われた人。そういった人々の魂は、壊れてしまっているんだ」

真剣にそう話す卯月の目は、先ほどまではなかった誠実さを持っている気がした。雨音はそんな卯月に尋ねる。

「壊れた魂はどうなるんですか?輪廻転生は出来ないの?」

「輪廻転生すること自体は出来る。だが、……」

宇佐美が苦しそうな顔で雨音の問いに答えた。

「だが、そのままでは転生できない。そのため、壊れた魂のかけら同士をつなぎ合わせ、新しい魂を作り、転生させる。たとえそれが、他人同士の魂であっても」

「え……、それって、どうなんだ?そんなの、キメラみたいだ」

「はは、キメラか。確かにそうかもしれない。まあ他人同士の魂を繋ぎ合わせたものであっても、ちゃんとくっつくし転生自体は出来るみたいだ。だけれど、本当なら、壊れてしまった魂を無理やりくっつけるのではなくて、元の形に戻せるように同じ魂の欠片を探してくっつけてあげるべきだと、俺たちは考えている。まあ、これがセンターのやり方と合わないんだけれどね」

「センターは人手不足だからか、効率を重視している。壊れた魂の欠けたパズルの相手を探す時間などないのだろう。だから、俺たちから君たちへのこの願いは、私情だ」

「でも、あんたたちの言っていることが事実なら、別に私情だとしても正しいことなんじゃないのか?それに雨音に何の関係があるんだ?」

焦る俺に卯月は自虐的な笑みを浮かべた。

「私情だよ。俺たちもセンターの言い分は分かる。全ての壊れた魂の欠片を正しく組み直すなんて、たとえ何億年あっても無理だ。途方もない時間がかかる。だから、俺と宇佐美は、自分たちの家族の魂を復元したいだけなんだ」

「ああ、それには君のアマネの力が必要不可欠だ。俺たちの話は以上だ、君たちの話も聞かせてくれ」

俺と雨音は顔を見合わせる。だけれど、人生で初めて雨音が何を考えているのか分からなかった。何か考え込んでいるのは分かるのに、何を言いたいのかどんな気持ちなのかが全く読めなかった。俺は雨音とつないでいない方の手を、ぐっと握り込む。

「あんたらは、あんたらの家族の魂は壊れてしまっていて、それを復元するのに雨音の力が必要ってことだよな」

無言で頷く卯月たちから漂う悲しさは、とても偽物だとは思えなかった。俺も家族が、雨音が危険な目に合うのが耐えられなくて、解決策を見つけたくて、今ここに居る。他人事だとは思えない。

ふと雨音を見る。相変わらず今の雨音の考えは分からないけれど、何か覚悟を決めた目をしていた。

「私たちは、あることで困っていて、その原因を探るために、最近流行っているというこのラジオを聞いていました」

「その眼鏡とこの化け物のことかな?」

卯月は俺の眼鏡を指さした後、卯月の背後を指さした。そこには、昨日のひとつ目で四足歩行の化け物がお座りしている。

「ギャー――!!!」

「トオルン、声大きいよ。びっくりするじゃん」

「ほう、青年の名前はトオルンというのか。これからは青年ではなく、トオルンと呼ばせてもらおう」

卯月はいたずらが成功したというように笑い、雨音は眉をひそめながら俺を見て、宇佐美は顎に手を当てながら頷いている。これは俺がおかしいのか、なんでだれも驚かないんだ。

「はは!ごめん青ね、いや、トオルン。これは大丈夫だよ」

「トオルン、よおく見てみて」

雨音の声に従ってもう一度化け物に目を向けると、化け物の頭には大きなリボンが付いている。

「リボン??」

「昨日君たちの学園の校舎にいた化け物なら、この通り俺が調伏して使い魔にしたから安心してくれ」

「なんでリボン??」

「身内にカワイイ至上主義の奴が居てね。かわいくないと許してくれないんだ。その眼鏡、何故か形状は変わってしまっているけれど、その調伏の際に俺たちが落とした仕事道具の鏡さ」

「鏡?眼鏡じゃん」

卯月が呆れたように、ため息をつく。

「だから、なぜか形が変わっているけれどって言っただろう?俺たちにも分からないよ。それは真十鏡まそかがみ、魂の本質を映す澄んだ鏡と言われている」

卯月は楽しそうに言葉を続ける。

「大丈夫、返せなんて言わないよ!今回の俺たちの願い事を聞いてもらうことの報酬として、君にあげる。雨音ちゃんには、あとで別のものをあげよう」

「でも、これは俺の眼鏡のはずだ。眼鏡を落として拾ったら、なぜか変なものが見えるようになっていただけで」

「引き寄せ合ったんだろう。真十鏡は、鏡やガラス、水などに同化しやすいと聞く。この馬鹿はそのことを忘れて呑気に落としたようだが」

宇佐美はそういうと、卯月の頭にげんこつを落とした。

「トオルン「てか、さっきから気になってたんですけど、その呼び方やめて!透です」失礼、透くん、見えるようになったのはあのような化け物だけか?」

宇佐美のその発言で俺は思い出す。怖かったのは化け物だけじゃない。雨音が、靄がかっていた。それも真っ黒に、悍ましいほどに。でも何故だろう。彼ら二人を悪人だとは思わなくなっても、何故かこのことを話すのは憚られた。

「……、いいやそれだけ。俺が急に変なものが見えるようになったことと、学校に化け物が現れたことが、俺たちが解決したかったことだから」

そう話して顔を上げたると、卯月はなぜか雨音を見ていた。俺の目線に気づくと、にこりと笑って誤魔化す。

「そう?なら今、二つとも解決したよね。眼鏡は俺の落とし物を吸収したせいで、化け物は今はもう居なくなった」

ね、と俺に向かってほほ笑む卯月を、雨音はじっと見ていた。

「あと一つだけ聞いてもいいですか」

「何だい?」

「どうして、学園の化け物に気づいたんですか。あの個体、昨日初めて見ました。あなたたちにとっては、化け物を退治することも仕事なのかもしれないけれど、こんなにすぐ化け物を見つけて、鏡も落として、しかも今日私たちと出会うのは……、」

「偶然にしては出来過ぎだって?マッチポンプを疑われているのかな」

卯月は静かに答える。

「本当に君たちがあの学園の生徒だとは知らなかった。知っていたらもっと早く出会えていたかもしれない。……あの学園はハナダ学園は俺たちの母校、そして、家族が死んだ場所なんだ」

雨音が目を見開いたのが目に入った。

「だからあの学園に俺たちが居たことは偶然じゃない。毎晩、家族の魂の欠片を探していたんだ」

「さあ、質問には答えたよ、アマネちゃん。報酬の前払いはその透くんの眼鏡だ、俺たちのお願いもちろん聞いてくれるよね」


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