ラビットさんのオカルトラジオ 5
「やって参りました、ドキドキ放課後肝試しー!」
「いや、こっくりさんって肝試しか?」
「細かいことはまあいいじゃん!ラビットさんのオカルトラジオって奴、ラジオって名前だけれど、配信プラットフォーム上に上がっている動画のことなんだって」
「へえ」
「まあ、動画って言っても静止画で音声だけなんだけどね」
「ふーん」
「元々は、めちゃくちゃイケボの動画配信者がいる、っていうので話題になったみたい!しかもオカルトだもんね、皆一回はこういうジャンル通るものなのかな」
「ほー」
「もう!トオルンてば聞いてる?」
「キイテルヨ」
「……そんなに怖いなら私だけでやろうか?トオルン帰ってもいいよ、無理はしないで。こっくりさんって危ないって話も聞くし」
「帰らない、雨音だけ危険な目に合うかもしれないっていうのにそんなことできるわけないだろ」
あの後、真面目に授業を受けた俺たちは、放課後にこっくりさんのうわさを試すべくオカルト研究会を訪れていた。雨音がこっくりさんのやり方などを隠先輩に聞いていたけれど、正直ビビりすぎて俺の頭には少しも入ってこなかった。そんな隠先輩は、自分は巻き込まれたくないからと部室のカギを俺たちに渡して早々に帰ってしまった。オカルト好きだからオカルト研究会なんてしているんじゃないのか?いや、詳しいからこそ、もしかしたら事のヤバさに勘づいて、逃げたのかもしれない。そんなことをぐるぐる考えていたら、雨音が心配そうな顔をしてこちらを見つめているのが目に入った。いけない、雨音だって不安かもしれないんだ。俺もしっかりしなくては。
「大丈夫だよ、雨音。さっさとやろう、案外何も起こらなくて空振りってこともあるかもしれない」
「トオルンがそういうならいいけどさ」
「じゃあ再生するね」
雨音がスマホの画面を操作し、動画を途中まで進める。隠先輩の話では、動画を始まりから終わりまで聞く必要はないようだ、「ラビットさんのオカルトラジオNO.11」の3分13秒からこっくりさんの話が始まるらしく、そこを聞きさえすればいいらしい。
3分13秒、そこで雨音は再生ボタンを押した。
動画内で説明されるこっくりさんのやり方はいたってスタンダード。はいといいえ、そして赤い鳥居、その下にはひらがなで五十音が書かれた紙を用意する。それと大切なのが、十円玉を用意すること。こんなの、動画をみなくても、当然の知識なのではないだろうか。用意した十円玉に雨音と共に手を添えた。
ラジオからは陽気な声が聞こえてくる。
「あ、注意点なんだけど、一人ではやらないでねー。ぼっちの君は諦めたまえ!」
いくら声がいいからって、こんな怪しい内容で、こんな性格悪いやつがなんで人気なんだ?
「諸々用意ができたら、ここで呪文を唱える。知ってるよー、『こっくりさん、こっくりさんってやつでしょ』と思ったソコのアナタ!違います!人の話は最後まで聞こうね!お兄さんとの約束」
だんだん、恐怖心にイライラが勝ってきた。これなら大丈夫かも。向かいに座る雨音の顔を見る。ラジオを聞き逃さないように静かにしながらも、俺の顔を心配そうに見つめていた。俺は、心配するなという気持ちを込めて頷く。くすりと雨音は微笑んだ。
「どんな呪文かって?それは
『ラビットさん、ラビットさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら「はい」へお進みください』
ってね」
すると、俺と雨音は何も口にしていないのに、ひとりでに十円玉が動き始めた。「はい」の上でその動きが止まる。ビビッて手を引っ込めそうになった俺を雨音がしかった。
「絶対に手を離さないで」
頷いた俺の耳に入ってきたのは、ムカつくラジオの続きだった。
「まあ、今俺が唱えたから、君たちが唱えるまでもなく、十円玉が動き出したはずだよ」
「そしたら、『まずは、一人目の前世の名前を教えてください』って感じかな。もうわかってると思うけれど、このラジオさえ聞いていれば、君たちは何も話す必要はないよー」
十円玉は再び動き始める。十円玉はすぐに動きを止めた。
「いいえ……?どういうことだろ?」
雨音の呟きが聞こえる。
「さー、そろそろ、十円玉が動ききったかな。今十円玉が動いたトコロにあった五十音のひらがなが指すものが、君の前世の名前だ!」
俺と雨音は顔を見合わせる。名前なんて、十円玉は示さなかった。今この時も、十円玉はピクリとも動かず、「いいえ」の上にある。
「じゃあ次に、二人目の名前も行っちゃおうか!『二人目の前世の名前を教えてください』」
俺たちの戸惑いをよそに、十円玉は再び動きだした。今度は、五十音表に向けて、動いている。もう恐怖が一周回って、十円玉から目を離すことなどできなかった。
十円玉は指し示す。
『あ』
『ま』
『ね』
俺と雨音が顔を見合わせた瞬間に、十円玉がバキりとはじけ飛んだ。




