ラビットさんのオカルトラジオ 3
次の日の朝、俺は寮の入り口で雨音を待ち伏せることにした。あいつは真面目だからいつも誰よりも早く寮を出る。昨日はあんなことがあってなかなか寝付けなかったというのに、このために早起きした俺は、あくびを噛み殺しながらその時を待っていた。
「あれ、トオルン早いね!おはよう!」
「わあ!」
「昨日からトオルン驚いてばっかり」
くすくすと笑う雨音に突っかかる。
「お前、昨日は逃げたくせに」
「うん、ごめんね。昨日あの後考えて正直に話そうって思ったんだ。……ちょっと歩こう」
学園までの道を雨音と歩く。昨日の薄気味悪さはどこへ行ったのか、そこにはさわやかな朝があるだけであった。
「私、小さい頃から時々、あの化け物みたいな奴が見えるんだ。襲われたことはないんだけど」
「はあ?お前そんなこと一度も」
「ただでさえこの見た目だよ?皆には見えないものが見えるなんて言ったら、ますますいじめられちゃう」
悲しげに目を伏せた雨音を見やる。雨音をいじめたり揶揄う奴らを片っ端からのしたっけ。おかげで俺は喧嘩が上手くなった。雨音をかばう俺を冷やかす奴も多かった。好きなんだろとかなんとか。そんなんじゃない。ただ、生まれた頃から同じ施設で育って、同じ年齢で。そんな雨音は俺にとって、大切な家族であり相棒なのだ。だから嘘をつかれたなんて、今までずっと黙っていたなんて、とても悲しくて、何だか悔しい。
「なんで俺にまで黙ってたんだよ!」
「トオルン怖がりでしょ、だから」
「はあ?そんだけで、」
「小さい頃、夜トイレに行けないって泣いたのは?」
「うっ」
「プラネタリウムのクジラが怖いって泣いたのは?音を出して動くサルのおもちゃも怖がってたっけ?」
「あーーー!!!思い出すな!」
「あはは!」
思わぬ攻撃を喰らい赤面する俺を、雨音はからかうような口調とは裏腹に、優しい目でみている。
「だからだよ。怖がりなトオルンが、怖がりなのに私を守るために喧嘩しちゃうトオルンが、これ以上頑張らないように黙ってたんだ」
雨音は厳しい顔をした。
「でも、昨日はトオルン見えちゃったんだよね。あれ」
「ああ」
「そっか。……私もあれが何かは知らないの。それに学校で見たのなんて、しかも襲ってきたのなんて初めて」
「なんで急にこんなことになったんだろうな」
「こういうことは、その筋の人に聞くのが一番じゃないかな」
「その筋って?」
「ズバリ、オカルト研究会!」




