ラビットさんのオカルトラジオ 2
あの後、走って寮まで帰った。本当なら住んでいるところがばれないように遠回りするとかなにかやり様があったのかもしれないが、怖さでそんなことは頭に浮かびもしなかった。家に帰ると、雨音の顔がいつものようにはっきりとみえた。白い髪の毛に赤い瞳、化け物のようだといじめられている雨音をよくかばっていたっけ。
「トオルン、大丈夫?」
そう言って雨音は俺の顔を覗き込んだ。白い三つ編みが揺れるのが、眼鏡越しに目に入る。昨日の靄は、なぜ消えたのだろうか。
「お前、犬ってなんだよ。そんなかわいいもんじゃねえだろあれ」
「えー、歯をむき出しにした、わんちゃんじゃなかった?」
とぼける雨音に違和感を感じた。こいつは天然な所もあるけれど決して馬鹿な奴ではない。
「本当に?本当にお前には犬に見えたのか?」
「……トオルンには何に見えた?」
「俺には、一つ目の化け物に見えた」
雨音は顔をこわばらせた後、俯いてぽつりと呟いた。
「私にも、本当はそう見えた。嘘をついてごめんね」
「お前が意味のない嘘なんてつくと思えない。なんで誤魔化したんだ」
「それは……」
そこに明るい声が大きく響いた。
「おかえりー!透くんに雨音ちゃん!遅くまで勉強お疲れ様―、晩御飯出来てるよ!」
「はい!チエさん!遅くまで待ってもらってすみません、すぐいただきますね!」
寮母のチエさんにそう答え、雨音は階段を駆け上がった。
「おい、待てよ雨音!」
「あら、透くんたち喧嘩?でも男の子は二階上がっちゃだめよ」
女子寮である二階は男子禁制だ。これ幸いと雨音に逃げられた。雨音に隠し事をされたのなんて初めてかもしれない。
「明日絶対、捕まえて吐かせる……」
沈んだ気持ちを振り払うように、制服のネクタイを引き抜いた。




