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STAR RAIN  作者: bagswife
29/30

猛進

「まとめてこいよ。」


その一言が終わる前に——4人が動いた。


ラフィットが右から銃を連射。

フウカが左から掌底の連打。

ミロクが正面から斬り込む。

セゴウが背後へ回り込む。


完璧な包囲。


「ん〜。」


赤髪の男は欠伸でもするような顔で——全部をさばいた。


ラフィットの弾を剣で弾き、フウカの掌底を半歩で避け、ミロクの斬り込みを剣一本で受け流し、セゴウの回り込みを踏み込みで潰す。


一連の動作に、無駄が一切なかった。


「……化け物やん。」ミロクが呟く。


「さっきフウカも同じこと言ったぞ。」ラフィットが答える。


赤髪の男が剣を振った。

たった一振り。


ラフィットとフウカが同時に吹き飛ぶ。

壁に激突し、そのまま崩れ落ちた。


「ラフィット!フウカ!」


「……生きてる。」ラフィットが呻く。


「肋骨、2〜3本いったかも。」フウカが床に伏せたまま言う。


「動くな。」セゴウが短く言った。


2対1になった。


「ん〜……やっと面白くなってきたなあ。」


赤髪の男は剣を肩に担ぎ直し、ミロクとセゴウを交互に見る。


「どっちから先にいく?纏めてでもいいぜ。俺ぁよ」


セゴウが手を合わせた。


「鳳凰三堂——改」


天から黄金の光が降り注ぐ。だが今度は攻撃ではない。光がヴォルカの足元を封じようとする。


その瞬間ミロクが踏み込んだ。


弥勒千靭ミクセンジン——」


黒い闘気を纏った太刀筋が赤髪の男へ届く。


赤髪の男は封じられた足元を力で引き剥がし、ミロクの太刀を左腕一本で受けた。


鍔迫り合い。


「……お前ら、本当に強いな。」ヴォルカが言う。


「褒め言葉として受け取っとくわ。」


ミロクが押し込む。セゴウが追撃する。


赤髪の男は弾き返し、踏み込み、斬り返す。

3人の攻防が続く。


拮抗していた。

だが——崩れない。


赤髪の男は笑っていた。

本当に、楽しそうに。


====================


精神世界。


フユは膝をついていた。


右腕は凍りつき、左腕は焦げていた。

全身が限界を訴えている。


悪魔が目の前に立つ。

氷の尾と炎の尾。金色の眼。


「……お前は、俺が怖いのか。」


フユは顔を上げた。


悪魔は答えない。

ただ——見ている。


「俺は怖かった。」フユは続ける。「お前のことじゃない。お前を受け入れれない自分が怖かった。」


悪魔の金色の眼が、わずかに揺れた。


「でも——」


フユは立ち上がった。


「お前が俺の中にいる限り、俺はお前と生きていくしかない。」


「だから——名前を教えてくれ。」


静寂。


悪魔が、ゆっくりと頭を下げた。


声が、骨の内側から響いた。


『我が名はアグニ。始祖の血統、氷炎の悪魔。』

『汝が器となることを——認める。』


フユの背から、五本の尾が広がる。

今度は暴走ではなく——静かに、意志を持って。


「……アグニ。」


フユは初めてその名を呼んだ。


アグニは咆哮した。

拒絶ではなく——応答として。


精神世界が、白く弾けた。


====================


白い世界で、シリアは一人立ち続けていた。


床は半分崩れていた。

亀裂が光の球へ迫っている。

セゴウはいない。


それでも——光の球は消えていない。


「……消えさせない。」


シリアはバーサーカーを纏い直した。

爆発させるのではなく、灯すように。


光の球の明滅がシリアの鼓動と重なっていく。

守るのではなく——繋がっている感覚。


「フラット。」


シリアは光の球に向かって言った。


「お前が試練に挑む場所へ——送り出す。」


バーサーカーの光が、光の球を包んだ。

静かに。暖かく。


光の球が——深淵へと向かう道を、開いた。


精神世界が、音を立てて閉じていく。


====================


根城の地下室。


フユが跳ね起きた。


「……っ!」


続いてシリアが静かに目を開ける。


2人は一瞬で室内の状況を把握した。


壁に崩れるラフィットとフウカ。

ミロクとセゴウがヴォルカと拮抗している。


「フユ!」ラフィットが叫ぶ。「戦えるか!」


フユは右手に氷をまとう

暴走したりしない、自身の能力として


「……やれる。」


「僕も。」シリアが立ち上がる。


6対1。


赤髪の男は——笑った。


「ん〜……増えたなあ。」


剣を構え直す。

金色の目が、6人を順番に見渡す。


「楽しいなぁ、これ。」


「楽しんでる場合じゃないで。」


ミロクが刀を鞘に収めた。


全員が動きを止めた。


「……ミロク」セゴウが言う。


「終わらせる。」


ミロクの全身から、黒い闘気が滲み出た。

じわりと。じわりと。


根城の壁にひびが入る。

床が震える。


「これが……」フユが息を飲む。


「フェーズ2や。」


闘気が爆発した。


純粋な黒。

光を飲み込む黒。

それがミロクを包み、膨れ上がり——部屋全体を満たした。


ベルゼブブの力が、ミロクの全身に降り注ぐ。


「昇天——」


ミロクは刀を抜いた。

黒い闘気を纏った刀身が天を向く。


「冥匣——」


「——解放。」


一太刀。


ただの一太刀。


黒い斬撃が室内を走った。

砂埃が舞い上がり、壁が抉れ、天井に亀裂が走る。


誰も動けなかった。


砂埃が晴れた時——


赤髪の男は、いなかった。


「……逃げた?」フウカが呟く。


「……逃げられたな。」ミロクは刀を収め、荒く息を吐く。「当てたかどうかも、わからん。」


静寂が戻った。


しばらく誰も喋らなかった。


「……フユ。」


ミロクがフユを振り返る。


「悪魔の名前は聞けたんか。」


フユは頷いた。


「……名前、聞けた。」


ミロクは一瞬だけ目を細め——それからいつもの気怠い顔に戻った。


「そか。」


それだけだった。



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