古の森へ
病室の外。
廊下に出た3人——セルドア、エリック、フユ——は、しばらく誰も口を開かなかった。
エリックは壁に手をついていた。
大きな体が、少し小さく見えた。
「……あの子は強い。」セルドアが静かに言った。
「だから生きている。普通の人間なら因子に飲まれて終わっていた。」
「……それで、どうすればいい。」エリックが顔を上げた。
「フラット君が意識の中で悪魔に打ち勝てば、因子を自分のものにできる。器になれる。」
「勝てるか。」
「それはフラット君にしかわからない。」
エリックは目を閉じた。
「だが、外から手伝えることがある。」
セルドアはフユを見た。
フユは背筋が伸びた。
あの龍王が——自分を見ている。
「君にも手伝ってもらわないといけないな。」
「……俺が、ですか。」
「そうだ。」セルドアはあっさりと言った。
「エリック。ナイツバードのシリアを呼んでくれ。君たち3人でリンドウェルの外れ——古の森へ向かってほしい。」
エリックが眉を寄せる。「古の森……そこで何が。」
「そこで待つものに全て伝えてある。」
「待つもの、とは。」
「行けばわかる。」
それだけ言って——セルドアは廊下を歩き始めた。
振り返らなかった。
フユはその背中を見た。
理由はまだわからない。
だが——行くしかない。
「フユ。」
エリックが隣に立っていた。
「シリアを呼んでくる。待ってろ。」
「はい。」
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シリアはエリックの説明を聞いて、一言だけ言った。
「行きますよ。」
3人はリンドウェルの外れへ向かった。
街の喧噪が遠くなる。石畳が土の道になる。
木々が密になった。光が届きにくくなる。
「古の森、か。」フユが呟く。「行ったことないな。」
「僕もない。」シリアが短く返す。
木々の隙間から光が差し込み、地面に模様を作っている。
禍々しい気配はない。異様なほど静かだ。
フユは自分の胸の奥を確かめた。
因子が——静かだった。共鳴しない。揺れない。
まるで眠っているような穏やかさがある。
「……不思議な場所だ。」
「来たなあ。」
声がした。
3人が足を止めた。
大きな木の根元。
銀髪の男が、木にもたれて立っていた。
「待っとったでぇ。」
関西弁だった。
年は30前後か。銀髪をぼさっとさせた男。
黒装束。腰に剣。
だがその気配は——3人が今まで感じたものとは明らかに違う。
重い。静かに、圧倒的に重い。
「……誰だ。」エリックが前に出る。




