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STAR RAIN  作者: bagswife
21/30

心優しい戦士

バークエン郊外。


トップの先行行動隊が森に入ったのは朝だった。


ノール5体、デズノール2体の討伐任務。

先行行動隊としては標準的な内容だ。


フラットは隊の後方を担当していた。

先輩団員3人が前衛、フラットが後衛で異常を察知する役割だ。


「ノール確認、東側3体。」先輩の一人が言う。

「デズノールは奥に2体。先にノールを片付けます。」


淡々と進んだ。

ノールはすでに慣れていた。フラットの炎が核を焼き、3体を片付けた。


「上出来だ、フラット。」先輩が言う。

「ありがとうございます。」


デズノールに向かって森を進んだ。


その時。


「……なんだ、この気配。」


先輩の一人が立ち止まった。


フラットも感じた。

デズノールではない。

ノールでもない。


重い。

深い。

黒い。


木々の間から、それが現れた。


====================


オークだった。


だが普通のオークではなかった。


体躯は3メートルを超えている。

皮膚の下から紫の亀裂が走り、悪魔因子が全身に滲んでいる。

目が4つある。全て黒く、光がない。


ノールが悪魔因子で出来た存在なら——

これは悪魔因子に完全に侵された生き物だ。


「……特級。」先輩が呟いた。声が固まっていた。


「逃げます。」もう一人が即座に言う。

「今すぐ。」


だが遅かった。


オークが一歩踏み出した。

その一歩だけで地面が揺れ、木が傾いた。


先輩の一人が能力を展開した。

オークの腕に直撃した。


腕が少し揺れた。それだけだった。


「効かない——!!」


オークの拳が薙ぎ払われた。

先輩3人が同時に吹き飛んだ。木に激突し、動かなくなった。


フラットだけが残った。


「……っ。」


剣を構える手が震えた。

目の前に立つ存在の格が、自分とは根本的に違う。

これは戦う相手ではない。生き物としての格が違う。


だが先輩たちは動かない。


オークがフラットを見た。

4つの黒い目が、フラットだけを捉えた。


逃げろ。

体がそう言っていた。


だが足が動かなかった。


先輩たちの方を見た。

息はある。生きている。だが意識がない。

このまま放置すれば——


「逃げてください!!」


フラットは叫びながら前に出た。


炎を剣に纏わせ、オークに向かって全力で走る。

当たらなくていい。注意を引ければいい。


オークの目がフラットに向いた。


「こっちだ——!!」


炎の斬撃がオークの体表を焦がした。

大きくは傷つかない。だがオークが振り返った。


先輩たちからフラットへ——標的が変わった。


「逃げて——!!」


フラットの叫びを聞いて、意識を取り戻しかけていた先輩の一人が状況を理解した。


「フラット!!お前も——」


「早く!!僕のことは——」


オークの拳がフラットを直撃した。


====================


どれくらい時間が経ったのかわからなかった。


先輩の声がした。遠くから聞こえる。


「フラット!!フラット、聞こえるか!!」


目が開かなかった。体が動かなかった。


地面に倒れている。背中が濡れている。

血だと、頭の隅でわかった。


「生きてる……!!生きてるぞ!!」


よかった。


先輩たちが生きている。

逃げられた。


フラットはそれだけを思いながら、意識を手放した。


====================


緊急の報告がアギト本部に入ったのは夕方だった。


「トップの新人、フラット=ワンブラッドが重傷。郊外の森で特級相当の敵と接触。現在搬送中。」


フユはその報告を聞いた瞬間、立ち上がっていた。


「どこ…フラットはどこへ!!」


「医療棟だ。落ち着け。」セナが言う。


「落ち着けって——」


「今お前が飛び出しても何もできない。」


フユは拳を握った。


フラット。

選考会で握手した。「お互い受かるといいね」と言った。

心優しい好青年。


「……重傷ってどのくらいですか。」


ムサシは少し間を置いた。


「生死を彷徨ってる。」


フユは何も言えなかった。


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