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STAR RAIN  作者: bagswife
17/30

セイレンの実力

北区の森。


木々の間を縫いながら、3人は進んでいた。


バンが先頭を歩く。リザがその後ろ。

カミルは一番後ろをふらふらと歩いていた。


「気配は東側だ。」バンが低く言う。

「確認済み。足跡の密度からして単体。」リザが静かに返す。


茂みが揺れた。


バンが一歩前に出た瞬間、ノールが飛び出してきた。


バンは右腕を前に出した。

鉄の能力——腕が鋼鉄に変わる。

ノールの爪が直撃した。火花が散った。バンは動かなかった。


「弱点は核だ。左肩の発光部位——リザ。」

「わかってる。」


リザが動いた。

見た目からは想像できない速さ。身体強化、スピード特化。

ノールの死角に回り込み、左肩へ剣を打ち込む。


核が砕けた。ノールが霧になって消えた。


「次だ。」バンが歩き出した。


====================


それから2体。バンが受けてリザが核を砕く。

流れるように、無駄なく。


後ろでカミルがあくびをした。


「……はぁ〜。」


バンが振り返る。「お前、ずっとそこで突っ立ってるだけか。」

「いや〜、だって2人で全部やってるじゃないですか。俺が入る隙間ないですよ。」

「隙間がないんじゃない。お前が動く気がないだけだろ。」

「まあそれもそうですね。」


バンの眉がぴくりと動く。


「ふざけるな。これは任務だ。各団の代表として来てる自覚があるのか。お前みたいなやつがいると全体の士気が——」


「あー。」


カミルが短く言った。


「うるさいな。」


バンが「何?」と言いかけた瞬間。


カミルの手が動いた。


バンの腹に、拳が入った。


「っ——!!」


鋼鉄化する暇もなかった。

バンは吹き飛び、木の幹に背中から叩きつけられた。

そのまま崩れ落ちる。体が言うことを聞かない。


リザが即座に動いた。

スピード特化の身体強化——最速で距離を取ろうとした。


カミルはすでにリザの前にいた。


「速いですね。」


にこっと笑いながら、リザの肩を軽く押した。


それだけで、リザは地面に膝をついた。

足に力が入らない。能力が発動しない。体の内側から何かが封じられている感覚だ。


「な——何を、したの。」


リザが絞り出すように問う。


カミルは2人を交互に見た。

いつもと同じ飄々とした顔だった。

目も変わっていない。笑ったままだ。


だからこそ、怖かった。


怒りでも、敵意でもない。

ただ——何もない目だった。


「耳障りだからかな。」


カミルは首を傾げた。


「よくわからないけど耐えられなかったのかな?」


本当に不思議そうだった。

自分の行動の理由を、自分で探しているような——そんな顔だった。


「……正気か。」バンが壁に手をついて立ち上がろうとする。膝が震えている。

「俺たちは同じ任務の——」


「あ、やばい。」


カミルの視線が後ろに向いた。


重い気配。

森の奥から、ゆっくりと近づいてくる。


デズノールだった。

体表の亀裂が深く、紫の光が強い。ノール(さっきのもの)より明らかに格が上だ。


バンは立ち上がれない。

リザは動けない。


「……カミル!!」


バンが叫んだ。


「まぁ…君らが死んだってなんでもないんだけど。」


カミルはあくびを一つして、腰の剣に手をかけた。


抜いた。


一太刀。


デズノールが真っ二つに割れ、霧になって消えた。


森に静寂が戻る。


2人の体の感覚が、すっと戻ってきた。


しばらく誰も何も言わなかった。


カミルは剣を鞘に収め、何事もなかったように2人を見た。


「立てますか?」


バンは答えなかった。

リザも答えなかった。


2人とも、カミルを見ていた。

さっきと同じ顔だった。同じ笑顔だった。

なのに——さっきとは別の人間を見ているような感覚が消えない。


「……なんで攻撃した。」バンが低く問う。


「うーん。」カミルは少し考えるような顔をした。

「なんでだろうね。うるさかったから?かな。」


「……それだけか。」


「それだけです。」あっさりと言った。「ごめんなさいね、2人とも。」


謝罪の言葉があった。

だがその顔には、反省の色はなかった。


「任務は終わりましたね。帰りましょう。」


カミルはふらりと歩き始めた。


バンは立ち上がりながら、その背中を見た。

強い。それは確かだ。一太刀でデズノールを消した。

拘束の能力も、その威力も、未知数だ。


だがそれより——


あの目が頭から離れなかった。


何もない目。


「……リザ。」

「わかってる。」リザが静かに答えた。「書いておく。」


2人は顔を見合わせ、カミルの後を追った。


森の木々の間から、東の空が見えた。


カミルがふと立ち止まり、東の方角を見た。


「……東区の子たち、大丈夫かな。」


独り言のように呟いた。

そこだけは——少しだけ、普通の心配をする人間の声だった。



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