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STAR RAIN  作者: bagswife
16/30

廃墟の底

東区の外れ。


廃墟が見えてきた時、3人は自然と足を止めた。


かつて何かの工場だったらしい。骨組みだけが残った建物が複数並び、

その奥に、より大きな廃屋がある。


「……感じるね。」フラットが呟く。

「ああ。」フユが答える。


空気が違う。

ノールの時とも違う。あれより重い。淀んでいる。

建物の影から、見えない圧力が滲み出てくるような感覚だ。


「行くぞ。」レイが先に歩いた。


====================


廃墟の内部は薄暗かった。

天井の一部が抜け、差し込む光が帯のように床を照らしている。


足元にはかつての機材の残骸。

錆びた鉄。砕けた石。


3人は散開しながら進んだ。


最初の気配は——上からだった。


天井の梁の上で何かが動く。

黒い。でかい。

ノールよりひと回り大きく、体の亀裂から漏れる紫の光が鋭い。


「デズノール。」


レイが即座に水を展開した。

廃墟の壁の染み、床の溜まり水——引き寄せ、硬質化させ、槍の形に成形する。

3本の水槍が宙に浮いた。


「行く。」


水槍がデズノールに向かって飛ぶ。


直撃した。


だが——デズノールは怯まなかった。

命中箇所が瞬時に再生していく。黒い体表が盛り上がり、ひびが塞がる。


『…再生速度が速い。』レイが眉を寄せる。


「リザが言ってた。核が深部にある。表面を削っても無駄だよ。」フラットが言う。

「わかってる。だが核の位置が見えない。」


デズノールが梁から飛び降りた。

着地の衝撃だけで床が陥没する。


「でかっ……!!」フラットが後退する。


デズノールの腕が横に薙ぎ払われる。

フユは跳んでかわした。フラットも転がった。


レイだけが動かなかった。


「——レイ!!」


水の盾を展開して受けた。

硬質化した水の壁。衝撃が走り、レイの足が後ずさる。


「……っ。重い。」


レイは等級で言えばレイはデズノールより上だ。

聖上級。デズノールは中級。

数字の上では圧倒できるはずだった。


だが実戦は違う。

セナがかつて言っていた言葉をフユは思い出した。

——剣筋は悪くない。当て方が全部力任せなだけで。


等級は力の大きさだ。使い方じゃない。


「レイ、無理に受けるな!!」

「わかってる……」


デズノールが再び腕を振り上げる。


「フラット!!」


フユが叫んだ。


フラットが両手を前に出した。

剣に炎を纏わせ、横から斬り込む。


炎の斬撃がデズノールの体表を焦がした。


「あ——焦げた箇所が再生しない!!」


黒い体表に焼け跡が残っている。


「火が有効か。」レイが素早く状況を読む。

「フラット、動きを止めろ。俺が核を探す。」

「わかった!!」


フラットが剣を連続で振るい、デズノールの注意を引き付ける。

炎の軌跡がデズノールの体に次々と焦げを作っていく。


その間、レイは目を細めた。

体表が焦げて薄くなった箇所から、内部の光が透けて見える。

ノールの時と同じ——紫の因子の集中部位。


「——胸の中央、少し左。」


「フラット、退け!!」


フラットが横に飛ぶ。


レイの水槍が4本同時に射出された。

今度は表面ではなく、焦げで薄くなった箇所を狙って角度を作った1本が——深く、刺さった。


デズノールが初めて動きを止めた。


「今だ!!」


フユが走った。

剣を構え、水槍が刺さった箇所へ真っ直ぐ踏み込む。

力任せではなく、正確に——核の位置へ向けて。


剣が深く入った。


デズノールが崩れた。黒い霧が散っていく。


3人が荒い息を整えた。


「……倒した。」フラットが膝に手を当てながら言う。

「ああ。」フユが答えた。


レイは何も言わなかった。

自分の水槍を見ていた。

等格下の相手にここまで手こずった事実を、静かに受け止めているようだった。


「レイ。」フユが声をかけた。

「……わかってる。実戦が足りない。」


先に言われた。フユは黙った。


「でも最後の水槍、角度よかったよ。」フラットが言う。

「そうか。」レイは短く答えた。


3人が息を整えながら廃墟の出口へ向かおうとした——


その時。


「……気配が消えてない。」


フユが立ち止まった。


胸の奥のざわめきがある。

ノールの時と同じ。あの、引き寄せられるような共鳴が。


1体じゃなかった。


廃墟の奥、暗がりの中で複数の紫の光が揺れている。


「……何体いる。」フラットが声を落とす。


フユは目を凝らした。

1つ、2つ、3つ——


「三体いる。」


沈黙が落ちた。


レイが水を再び引き寄せ始めた。

フラットが剣を構え直した。


「さっきの方法が通じるなら、やれる。」フユが言った。


「やるしかないよね。」フラットが苦笑いした。


レイは何も言わなかった。

ただ前を向いた。


暗がりから、紫の光が3つ、ゆっくりと近づいてきた。



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