セイレンと二つの討伐
「全員揃ったな。」
ライオットヴァルドが詰所の扉を開けて入ってきた。
選考会で見た顔だ。進行役を務めた大男。
大噴火の英雄が、こんな場所に顔を出す。それだけでこの儀礼の格がわかった。
「今日は中級任務儀礼の説明に来た。始める前に——」
ライオットヴァルドは5人を見渡し、それから扉の方へ目をやった。
「もう一人来る。待て。」
5人が顔を見合わせる。
もう一人?各団から一人ずつのはずだ。5団で5人。それで全員のはずだが。
扉が開いた。
「遅くなりましたあ。すんません、道で猫と遊んでたら遅れました。」
飄々とした声。軽い足取り。
薄い茶色の髪をぼさっとさせた青年が、悪びれもせずに入ってきた。
「カミル=スペランツァ。よろしく〜。」
「……どこの団だ。」
バンが問う。
「セイレン。」
静寂。
「……セイレン?」フラットが首を傾げる。「聞いたことない。」
「そりゃそうですよ。表には出てないんで。」
カミルは壁に背を預け、あっさりと言った。
「神栄団には表立って募集をかける5団の他に、推薦でしか入れない部隊があるんですよ。それがセイレン。選考会もないし、表の名簿にも載らない。ライオットさん、説明あってます?」
「あっている。」ライオットヴァルドが頷く。
「セイレンは特殊任務専門の部隊だ。存在は非公開。今日は儀礼の関係で同席させた。」
フユはカミルを見た。
推薦でしか入れない部隊。
選考会もなく、表にも出ない。
それがどういう意味を持つのか、まだよくわからなかった。
「まあ難しく考えなくていいですよ。今日は一緒に仕事するだけですし。」
カミルはフユと目が合うとひょいと肩をすくめた。
「ライオットヴァルドさん。任務の説明を。」
リザが書類から顔を上げて言った。
「ああ。始める。」
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ライオットヴァルドが地図を広げた。
「今日の任務はデズノールの討伐だ。」
デズノール。
「ノールの強化体です。」
リザが即座に補足する。手元の書類をめくりながら淡々と説明した。
「通常のノールと異なり、悪魔因子の密度が3倍以上。再生速度が高く、中級以上の戦力でないと有効打が入らない。弱点は核の集中部位だが、通常のノールより深部にある。」
「詳しいな。」ライオットヴァルドが感心したように言う。
「調べてきましたので。」リザは再び書類に目を落とした。
「出没は2ヶ所。東区廃墟と北区森林の中。それぞれ1体ずつ確認されている。」
ライオットヴァルドは地図上の2点を指す。
「6人を2チームに分ける。」
チーム分けが告げられた。
東区廃墟——フユ、レイ、フラット。
北区森林——バン、カミル、リザ。
フユはチームを確認した。
レイとは気まずいままだ。
だがフラットがいる。まだやれる。
「任務の目的はデズノールの討伐。捕縛ではなく完全な消滅だ。
いいか——デズノールは通常のノールより凶悪で人間の闘気に強く反応する。」
ライオットヴァルドはそこで一瞬だけフユを見た。
それだけだった。続きを話した。
「各チームは独立して動く。援護は期待するな。自分たちで判断して完遂しろ。」
「質問。」バンが手を挙げる。
「制限時間は。」
「日没まで。」
「了解しました。」
「以上だ。行け。」
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詰所を出て、2チームが別々の方向へ歩き始める。
「じゃあまたあとで〜。」
カミルが片手を上げながらバン、リザと共に北へ向かう。
フユはその背中を少し見ていた。
セイレン。推薦制。
あの軽さの裏に何があるのか、まだ読めない。
「行くぞ。」
レイが先に歩き出した。
フユはその後を追った。
フラットが横に並ぶ。
「ねえ、デズノールって実際どのくらい強いんだろうね。」フラットが問う。
「リザの説明通りだと、ノールより厄介なのは確かだな..」フユが答える。
「そうだよね。中級の任務だもんね。」フラットは少し緊張した顔をした。
「君たちはノールをすでに倒してるんでしょ?」
「僕はまだだからさ。」フラットが正直に言う。
「でも頑張るよ」
「頑張ろうな」
フユはフラットの肩をしっかりとつかむ。
そうしながらフユは
東区廃墟へ向かう路地を歩きながら、
遠く北の方角でカミルたちが向かう森林を見た。
今日で何かが変わる気がした。
それが何なのかは、まだわからない。
3人は廃墟の入口へと歩き続けた。




