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STAR RAIN  作者: bagswife
14/30

新人たち

朝の光が工場に差し込んでいた。


最初に入ってきたのはセナだった。


扉を開けた瞬間、足が止まった。


白く薄く氷が張った床。

壁に広がる結晶。

中央に、全身を氷に閉じ込められたキャブラ。

その傍らに、レイの膝の上で目を閉じたフユ。


「……何が、あった。」


セナの声はいつもの張りがなかった。


続いてカナンが入ってきた。コウが入ってきた。

シリアが入ってきた。ロイドが入ってきた。


全員が黙った。


しばらくして——


「北口から来たぞ。」


シュルトが入ってきて、部屋を見渡した。

「……俺は何を見ている。」


====================


「レイ。腕が。」

ロイドが真っ先に駆け寄る。

「封印された。時間が経てば解ける。」

「痛みは。」

「ない。感覚がないだけだ。」


カナンがフユの傍にしゃがみ込んだ。

体温を確かめる。「冷たい……自分で凍やしたのか。」

「……そういうことになる。」レイが短く答えた。


「何の能力だ。」シリアが問う。

「わからない。」


それ以上、レイは何も言わなかった。


セナが氷に閉じ込められたキャブラの前に立った。

溶けかけているが、まだ動けない。目だけが動いていた。

「生きてるな。」セナが安堵の息をついた。

「確保。」


コウが縄を取り出し、溶けていく氷の隙間からキャブラの腕を縛る。


テアルと他の構成員が次々と連れてこられ、全員を工場の外に並べた。

夜明けのナーガスラムに、アルバトロスの面々が縛られて座らされている。


キャブラは何も言わなかった。

ただ一度だけ、担架で運ばれるフユを目で追った。


====================


連行が終わり、各団が解散する前に。


レイはフユの担架の傍に立っていた。


「フユ。聞こえるか。」


フユの目がうっすら開いた。焦点が合っていない。


「……レイ、か。」

「ああ。任務は終わった。アルバトロスは全員確保した。」

「……そうか。」


「お前が使ったのは何だ。」


レイの声は静かだった。冷たくはない。だが温かくもない。


「……わからない。俺も知らなかった。」

「知らずに使ったのか。」

「使ったんじゃない。漏れた。」


レイはしばらく黙っていた。

「魔障石のときの...冥級のあれか....次にそれが出た時、お前は自分を保てるか。」


フユは答えられなかった。それが答えだった。


レイはフユから目を逸らし、担架を引き渡した。

「……休め。」


それだけ言って、ナイツバードの列に戻った。


カナンがフユの傍に来て、小声で言う。

「あいつ、お前のこと心配してるんだよ。ああいう言い方になるだけで。」

「……そうかな。」

「そうだよ。」


フユは空を見た。朝の光が目に刺さった。


====================


数日後。


「中級任務儀礼について説明する。」


ムサシが淡々と告げた。


「各団から新人を一名ずつ選出し、合同で中級の任務に当たる。これはバークエンの神栄団が古くから行ってきた慣例で、新人の実力確認と団横断の連携を目的としている。」


「俺が行くんですか!?」

「お前しかいない。」


フユはまだ体のあちこちが痛かった。だが動けないほどではない。


「他の団の新人と顔を合わせることになる。礼儀は守れ。」

「わかりました。」

「以上だ。」


ムサシは書類に視線を戻した。

「フユ。」

「はい。」

「先日のことは、聞いた。それがお前が背負った使命カルマだ。肝に銘じておけ」


フユは一度頷いた。「はい。」


====================


集合場所はリンドウェル中央広場に近い詰所だった。


扉を開けると、すでに数人の気配があった。


「やあ!」


フラットが小さく手を上げた。選考会以来だ。

あの時握手した。それだけの間柄だが、悪い印象はない。


「フラット。久しぶりだな。」

「なんとか入れたよ。フユも入れてよかった。」


壁際には小柄な少女が立っていた。

眼鏡をかけ、分厚い書類に目を落としている。こちらをちらりと見て、また視線を戻した。


「……リザ=クロムウェル。ブレイン。」

短く名乗った。それだけだった。


「フユ=エバーノート。よろしく。」

リザは小さく頷いた。もう書類を見ていた。


そして——


「遅れてないな。今日は。」


聞き覚えのある声だった。


フユは振り返った。


バン=ドラール。

ホワイトウォーカーの新人。

選考会の日、フユに言い放った男だ。


——時間ギリギリにくるなんて意識が足りないんじゃないか。

——田舎者か。

——この時点で君の落選は決定してる様なものだよ。


「……。」


フユは何も言わなかった。


バンはフユを一瞥して、それだけ言った。

覚えているのか、覚えていないのか、表情からは読めない。


ただ态度はあの日と何も変わっていなかった。


「足引っ張るなよ。」


フユは笑顔を作った。

「ああ、よろしく。」


腹の中に何かが落ちたような感覚があった。

落ちて、沈んで、そこに留まった。


今じゃない。今じゃない。


扉が開いた。


「……元気か。」


レイだった。

フユを見て、一瞬だけ目を止め、それから窓の方に視線を逃がした。


「ああ。」フユが返す。


「……気まずいね、君ら。」

フラットが率直に言う。


5人が揃った。


アギト、ナイツバード、ホワイトウォーカー、ブレイン、トップ。

5つの団の新人たち。


フユはそれぞれの顔を見渡した。


レイとは気まずい。

バンとは——まだ何か残っている。

フラットは悪くない。

リザはよくわからない。


これが中級任務を共にする面々か。


「よろしく。」フユは言った。



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