新人たち
朝の光が工場に差し込んでいた。
最初に入ってきたのはセナだった。
扉を開けた瞬間、足が止まった。
白く薄く氷が張った床。
壁に広がる結晶。
中央に、全身を氷に閉じ込められたキャブラ。
その傍らに、レイの膝の上で目を閉じたフユ。
「……何が、あった。」
セナの声はいつもの張りがなかった。
続いてカナンが入ってきた。コウが入ってきた。
シリアが入ってきた。ロイドが入ってきた。
全員が黙った。
しばらくして——
「北口から来たぞ。」
シュルトが入ってきて、部屋を見渡した。
「……俺は何を見ている。」
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「レイ。腕が。」
ロイドが真っ先に駆け寄る。
「封印された。時間が経てば解ける。」
「痛みは。」
「ない。感覚がないだけだ。」
カナンがフユの傍にしゃがみ込んだ。
体温を確かめる。「冷たい……自分で凍やしたのか。」
「……そういうことになる。」レイが短く答えた。
「何の能力だ。」シリアが問う。
「わからない。」
それ以上、レイは何も言わなかった。
セナが氷に閉じ込められたキャブラの前に立った。
溶けかけているが、まだ動けない。目だけが動いていた。
「生きてるな。」セナが安堵の息をついた。
「確保。」
コウが縄を取り出し、溶けていく氷の隙間からキャブラの腕を縛る。
テアルと他の構成員が次々と連れてこられ、全員を工場の外に並べた。
夜明けのナーガスラムに、アルバトロスの面々が縛られて座らされている。
キャブラは何も言わなかった。
ただ一度だけ、担架で運ばれるフユを目で追った。
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連行が終わり、各団が解散する前に。
レイはフユの担架の傍に立っていた。
「フユ。聞こえるか。」
フユの目がうっすら開いた。焦点が合っていない。
「……レイ、か。」
「ああ。任務は終わった。アルバトロスは全員確保した。」
「……そうか。」
「お前が使ったのは何だ。」
レイの声は静かだった。冷たくはない。だが温かくもない。
「……わからない。俺も知らなかった。」
「知らずに使ったのか。」
「使ったんじゃない。漏れた。」
レイはしばらく黙っていた。
「魔障石のときの...冥級のあれか....次にそれが出た時、お前は自分を保てるか。」
フユは答えられなかった。それが答えだった。
レイはフユから目を逸らし、担架を引き渡した。
「……休め。」
それだけ言って、ナイツバードの列に戻った。
カナンがフユの傍に来て、小声で言う。
「あいつ、お前のこと心配してるんだよ。ああいう言い方になるだけで。」
「……そうかな。」
「そうだよ。」
フユは空を見た。朝の光が目に刺さった。
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数日後。
「中級任務儀礼について説明する。」
ムサシが淡々と告げた。
「各団から新人を一名ずつ選出し、合同で中級の任務に当たる。これはバークエンの神栄団が古くから行ってきた慣例で、新人の実力確認と団横断の連携を目的としている。」
「俺が行くんですか!?」
「お前しかいない。」
フユはまだ体のあちこちが痛かった。だが動けないほどではない。
「他の団の新人と顔を合わせることになる。礼儀は守れ。」
「わかりました。」
「以上だ。」
ムサシは書類に視線を戻した。
「フユ。」
「はい。」
「先日のことは、聞いた。それがお前が背負った使命だ。肝に銘じておけ」
フユは一度頷いた。「はい。」
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集合場所はリンドウェル中央広場に近い詰所だった。
扉を開けると、すでに数人の気配があった。
「やあ!」
フラットが小さく手を上げた。選考会以来だ。
あの時握手した。それだけの間柄だが、悪い印象はない。
「フラット。久しぶりだな。」
「なんとか入れたよ。フユも入れてよかった。」
壁際には小柄な少女が立っていた。
眼鏡をかけ、分厚い書類に目を落としている。こちらをちらりと見て、また視線を戻した。
「……リザ=クロムウェル。ブレイン。」
短く名乗った。それだけだった。
「フユ=エバーノート。よろしく。」
リザは小さく頷いた。もう書類を見ていた。
そして——
「遅れてないな。今日は。」
聞き覚えのある声だった。
フユは振り返った。
バン=ドラール。
ホワイトウォーカーの新人。
選考会の日、フユに言い放った男だ。
——時間ギリギリにくるなんて意識が足りないんじゃないか。
——田舎者か。
——この時点で君の落選は決定してる様なものだよ。
「……。」
フユは何も言わなかった。
バンはフユを一瞥して、それだけ言った。
覚えているのか、覚えていないのか、表情からは読めない。
ただ态度はあの日と何も変わっていなかった。
「足引っ張るなよ。」
フユは笑顔を作った。
「ああ、よろしく。」
腹の中に何かが落ちたような感覚があった。
落ちて、沈んで、そこに留まった。
今じゃない。今じゃない。
扉が開いた。
「……元気か。」
レイだった。
フユを見て、一瞬だけ目を止め、それから窓の方に視線を逃がした。
「ああ。」フユが返す。
「……気まずいね、君ら。」
フラットが率直に言う。
5人が揃った。
アギト、ナイツバード、ホワイトウォーカー、ブレイン、トップ。
5つの団の新人たち。
フユはそれぞれの顔を見渡した。
レイとは気まずい。
バンとは——まだ何か残っている。
フラットは悪くない。
リザはよくわからない。
これが中級任務を共にする面々か。
「よろしく。」フユは言った。




