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STAR RAIN  作者: bagswife
11/30

正義の話をしよう

工場の最奥。


キャブラが鎖を振る。


フユが跳んでかわす。着地と同時に前へ出る。

剣を構えて間合いを詰める——


鎖が横から走った。

フユは剣で押し返そうとして、ムサシの声を思い出し引いた。


「触れたら終わりだ、わかってる。」


だがかわした隙に、キャブラが踏み込んでいた。


「遅い。」


拳がフユの腹に入った。

鎖を使わない、素の一撃。それだけで壁まで吹き飛んだ。


「フユ!!」


レイが手を広げる。工場内の配管の滲み、壁の染み——あらゆる水分を引き寄せて水の槍を作る。


鋭く飛ぶ。キャブラに向けて。


「いい能力だ。」


キャブラは鎖を一振りした。

水の槍が鎖に触れた瞬間——はじけ飛ぶ。


封印。液体でも触れれば封じられる。


「……!!」


レイの水の槍が消える。

キャブラは次の動作でレイの右手首に鎖を巻き付けた。


「っ……!!!」

右腕が動かない。能力が使えない。


レイが膝をつく。


「レイ!!」


フユが壁から体を起こし走る。

キャブラが振り返る。鎖が払われる。


フユは止まれなかった。

鎖の側面——刃のない部分をギリギリで腕で弾いた。


腕が痺れる。しかし封印されていない。


「……弾いたか。」キャブラが少し目を細める。


「……強い。」

フユは正直に思った。声に出ていた。


「当たり前だ。」キャブラが答える。

「俺はお前らと同じ神栄団、ホークアイの副団長だった。潜り抜けた数が違う」


====================


3人の間に、奇妙な静寂が生まれた。


キャブラは追撃しなかった。

フユとレイが立て直すのを待った。


「……なんで止まるんだ。」フユが問う。

「まだ動けるだろう、お前ら。話がある。」


レイが右腕を左手で抑えながら立ち上がった。チェーンが巻き付き封印された右腕は感覚がない。


キャブラはゆっくりと話し始めた。


「ホークアイって名前、聞いたことあるか。」


フユは頷く。「かつての神栄団の一つだ。」

「ナーガスラム管轄だった。レオポルドという男が率いていた。」


レオポルド。リヒトが言っていた名前だ。鎖の元の持ち主。レイは思いだす


「レオポルドさんはナーガスラムから利益を取らなかった。ホークアイが得た収益は全部ナーガスラムに還元された。食い物、薬、建材——全部だ。

だからナーガスラムは貧しいなりに、回っていた。」


フユは黙って聞いた。


「アズール帝国との小競り合いがあった。バークエンと今も拮抗してる大国だ。

その皇帝——デュランダルと、レオポルドさんが直接戦った。その後レオポルドさんは姿をくらませた。

ホークアイは事実上解散した。」


「……死んだのか。」


「わからない。俺も知らない。」キャブラの声が少し低くなる。

「だが神栄団は何もしなかった。ホークアイの跡を継ぐ団を立てなかった。

ナーガスラムへの還元も止まった。お前たちの言う国家の正義は——その程度のもんだ。」


工場の外で、夜明けの風が吹いている音がした。


「だから俺がアルバトロスを作った。ギャングでいい。国に認められなくていい。

ナーガスラムを守るのは俺たちだと決めた。」


キャブラはフユとレイを交互に見た。


「お前たちは神栄団の人間だ。聞くぞ。お前たちが信ずるものに正義はあるのか。

国が見捨てた街を守ることが悪で、お前たちが俺たちを捕まえることが正義なのか。」


重い問いだった。

答えが出ない問いだった。


レイが先に口を開いた。


「関係ねえよ。」


キャブラが視線を向ける。


「正義があるかどうかは今日の話じゃない。

お前たちがナイツバードを7人やった。それへの対応として俺は来た。それだけだ。」


レイは封印された右腕を庇いながら、真っ直ぐにキャブラを見た。


「正義の話がしたいなら捕まってからしろ。」


キャブラは少し笑った。それからフユを見た。


フユは剣を構え直しながら言った。


「俺が龍王になる。それは変わらない。

今のバークエンがそうなのか、お前の言う通りなのか——それは俺にはまだわからない。

だけど、俺たちの手で変える。俺たちの手でナーガスラムも変える。捕まってから見てろ。」


静寂。


キャブラはしばらく2人を見ていた。

それからゆっくりと立ち上がり、鎖を構えた。


「……ならやってみろ。」


フユは踏み込んだ。



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