33話 助けて
次の日から、これといった事は無かった。
弟とも話をしたけど、結局気のせいで結論付けたのだ。それが一番楽な方法だったからである。
学校生活も支障が無い。
そうすればいつの間にか、気にしなくもなる。
僕はすっかり忘れていたのだ。
生徒会の仕事が忙しく、かなり疲れた。
肉体的な仕事と、精神的な仕事の両方でだ。
生徒会のメンバーは、僕を除けば全員女の子。たから、余計に気を使う。壊れモノを扱う様に、僕は慎重にならざるを得ない。
燐火が居てくれて助かる。
僕の失敗をサポートしてくれるからだ。時々、キツイ発言でショックを受ける事があるらしい。それを燐火が上手く解決してくれるのだ。
それとなくありがとうと伝えると、にししと笑う。
「まぁ、奏介の彼女ですから!」
改めて言われると、ドキっとしてしまうのだ。
あれから僕と燐火は付き合っている。彼氏彼女の関係だ。まだキスまでしか進んでいないが、焦っても仕方がない。ゆっくりと進んでいけばいいと思う。
「寺師羽根君、少しいいかしら?」
伊集院さんに呼び止められた。
生徒会室で、話をする。
「最近、何か変わった事はない?」
「うーん。特には」
あっ、と思う。
この間の事を思い出したからだ。でも、もう何も無いから大丈夫。そう考え直した。
「そう」
「何か僕に憑いてますか?」
少し気になるので、聞いてみる。
「何も………特に他意は無いわ」
「そうですか」
部屋を出て、僕は考える。
何かあれば、伊集院さんを頼ろう。そう思った。
燐火と一緒に下校し、分岐で別れる。
まだ明るいけど、もう19時と遅い。日の長さが長くなっている。もう夏なんだと実感するのだ。
7月。
梅雨はまだ明けておらず、バイオ全線がどーとかとアナウンサーが言う。雨雲レーダーは本当に便利だ。天気予報よりも使える。スマホで確認し、明日の天気を考えた。明日は晴れだな。
スマホに充電をコンセントを差し込み、僕は寝る。
フワッ。フワッとする。
体を揺すられている気分だ。そして、それは一気に来た!
「ふぐ!?」
お腹に乗られ、首を絞められる!
肩に両手を置かれ、身動きが取れない!
心臓は握られている!
血液が遅延し、脳へと供給が不足した。
苦しい。息が出来ない!
「……………助けて…………………助けて」
情けない千切れた声を出す。
僕にはこれが精一杯だった。
殺される。
僕は必死に助けてとお願いするのだ。が、手は緩まらない!どんどん締め付けが強くなる!
「…………………………助けて」
人は死ぬ間際、助けをこう。
いつ死んでもいいと、口では言っていた。でも、こう追い詰められると、本当の自分が望んだ声が出る。助けて、と。
死にたくない!
僕はそう願っているからだ。
怖い!目を開けるのが。
でも、開けねば僕を襲っている相手も分からない。このまま死ぬのはゴメンだ。
恐怖を克服し、僕は目を開けた。
そこはいつもの部屋に間違いはない。
でも、この違和感は何だ?部屋には影が無かった。豆電球がついているから、光と影は必ず出来る。
なのに、この部屋には影が無かった。
そして、誰も居ない。
僕は安堵して、そのまま気絶したのだ。
眠ってしまったが、正しいかもしれない。




